能力使用禁止
休憩室
「…」
手を膝につき、イスに座っている天鹿和
「隣、良いかしら?」
「…ハ-トか」
ハ-トが天鹿和の隣に座る
「どうしたの?こんな所で」
「AWが目覚めるのを待っている」
「どうして?」
「…謝罪だ」
「表が傷つけてしまったからな」
「する必要は無いんじゃない?」
「敵なんでしょ?」
「…それでも、表のやり方は残酷すぎた」
「謝らねばならない」
「…やっぱり、アナタは裏ね?」
「気付いていたのか?」
「しゃべり方と雰囲気が違うもの」
「アナタと喋るのは何年ぶりかしら?」
「…俺がハジャに組織を追い出される直前だけだったからな」
「覚えてねぇよ」
「…そう」
「表は?」
「…俺の中に居る」
「ウェンによって、封印された」
「大丈夫なの?」
「「封印」って…」
「それが、表にとっても良いのかも知れない」
「表は…、「青龍」と言う名を聞いただけで壊れるからな」
「もう…、過去を切り捨てることは出来ないの?」
「そうすれば…」
「無理だろうな」
「俺が切り捨てても、表は切り捨てない」
「切り捨てるには…、時間が少な過ぎる」
「…仕方ないのね」
「…ああ、仕方ない」
「メタルへの復讐はどうするのかしら?」
「…諦めたい、な」
「だが、表はメタルが殺せるのなら殺すだろう」
「返り討ちに遭うわよ?」
「メタルはハジャ様を倒すほどの男って事、解ってる?」
「俺に言うなよ…」
苦笑する天鹿和
「それでも…、表はメタルに挑むだろう」
「腕が千切れようが、足が切られようが、首が切り裂かれようが…、な」
「メタルを殺すまで、表は死なない」
「…根性論、なんて甘い物じゃないわね」
「表は止められないの?」
「無理だ」
「ウェンの治療によって、俺は完全に表と離れた」
「話も意識の共有も出来ない…」
「まぁ、共有できていたとしても、止められなかっただろうな」
「…解ったわ」
「表を…、頼んだわよ」
ギィ…
席を立つハ-ト
「…ハ-ト、1つ聞いて良いか?」
「何かしら?」
「どうして、ここに来た?」
「…偶然よ」
ガチャン
休憩室から出て行くハ-ト
「「偶然」…か」
休憩室外
「下手な嘘だな」
「下手すぎて、笑えてすら来る」
柱に寄りかかるジョ-カ-
「…盗み聞き?」
「最悪の趣味ね」
「…表を心配しているのがお前だけと思うな」
「裏もそうだが、俺達は仲間だろう」
「…昔の話よ」
「今は関係ない」
「…なら、どうして天鹿和の元に行った?」
「…偶然って、言ってるでしょう?」
「「偶然」…か」
「えらく偶然な偶然だな」
「…偶然だからね」
歩き去るハ-ト
「…だとよ、ダイヤ、スペ-ド」
「…気付いてた?」
物陰から2人が出てくる
「当たり前だ」
「俺が部屋を出てきた時から、着いてきただろう」
「…流石」
「で、ジョ-カ-」
「何だ?スペ-ド」
「輝鈴とハ-ト…、大丈夫かな?」
「…俺が知った事ではない」
「あの2人が決めるさ」
タッタッタッタ…
秋雨が休憩所に走って行く
「あれ?アレ、秋雨じゃないか」
「そうみたいだな」
「お-い!秋さ…」
スペ-ドの口を防ぐジョ-カ-
「ぐむ…!?」
「黙ってろ」
「俺達が輝鈴と秋雨に会う理由はない」
スペ-ドの口から手を離すジョ-カ-
「そりゃ、そうかも知れないけど…」
「解ってるなら、黙っていろ」
「だけどよ!!」
「…スペ-ド、鬱陶しい」
さらりと冷たい言葉を放つダイヤ
「ダイヤ!?」
「よく言った」
休憩室
「天鹿和さん!!」
「ん?秋雨か」
「AWさんが目を覚ましました!!」
「…そうか」
「行くぞ」
ガチャン
休憩室から出て行く秋雨と天鹿和
109号室
「戻ったぞ」
メタルと凩が部屋に戻ってくる
「どうだった?」
「二五チ-ムの圧勝だ」
「話にならない」
「…そうか」
「ん?秋雨と天鹿和は?」
「天鹿和がAWチ-ムに謝罪に行ってな」
「…どうして、行かせた?」
「止めはしたさ」
「無駄だったが」
「…結果は見えてるだろうに」
「それでも、天鹿和は行った」
「アイツなりに思う物が有ったんだろう」
「…そうか」
バタン
部屋に秋雨と天鹿和が入ってくる
「む、戻ってきたか」
「…結果は聞くまでもないか」
天鹿和の表情が暗い
「だから、「行くな」と言ったのに」
「どうだったんだ?秋雨」
「…AWさん、天鹿和さんを見るなり悲鳴を上げちゃって」
「押さえるのが大変でした…」
「仕方ない」
ギィ…
和風が部屋に入ってくる
「和風さん…」
「あれ程の事が有ったんだ」
「発狂しない方がどうかしてる」
「…そうですか」
「落ち着いたら、事情を話すようにSWとDWに頼んである」
「…解った」
「よし、全員揃った時点で3回戦の組み合わせを言っておく」
バサッ…
メタルが紙を広げる
「良いか?3回戦の相手は大したことはない」
「…え?」
「1人に頼って、勝ち抜き制を重視している」
「そいつを倒せば、勝ったも同然だ」
「だが、その1人が強いんだろう?」
「俺から見れば、大したことはない」
「お前から見れば…、な」
ウェンがため息をつく
「相手は「機械師」の異名を持つ」
「異名通り、機械を使った攻撃を仕掛けてくる」
「対処するには?」
「機械を破壊するのと…、本人をぶっ飛ばすことだ」
「簡単だろう?」
「そこまで、サラッと言われても…」
「機械師の奴は近距離戦に弱い」
「その点、1番目は天鹿和だ」
「おう」
「2番目は凩、3番目は秋雨だ」
「解った」
「はい」
「準決勝前に負けるなよ?」
「俺達が出ずに負ければ、意味がないからな」
「解っている」
「…それと、秋雨」
「何ですか?」
「はい、コレ」
メタルがハンドガンを取り出す
「な、懐かしい…」
「前に学園で僕が使っていた銃じゃないですか」
「それを次の試合で使え」
「能力は使うな」
「え!?」
「…良い機会だから、言っておく」
「お前の能力は命を削る」
「!?」
「考えてみろ」
「お前ほどの神を超えた能力だ」
「反動がないわけがない」
「確かに、そうかも知れんな」
凩が頷く
「俺の能力も、かなりエネルギ-を使う上に効果時間は短い」
「凩も、時間を操るという異種の能力だ」
「その分、今言ったようにエネルギ-を使う」
「秋雨は、それをも超えている」
「…命を削ってるんですか?僕の能力は」
「ああ、そうだ」
「極端に削っているわけではないが、少しずつ、少しずつ削れて行っている」
「この世界はエネルギ-濃度が高いから、反動も高い」
「だから、能力を使うな」
「解ったか?」
「…はい」
「さて、明日が3回戦だ」
「準備をしておけ」
「おう」
読んでいただきありがとうございました