研究
イトウの研究所
地下研究所
「…Rcw28μ、純系炭129グラム」
カリカリカリ…
紙に次々に文字を書いていくイトウ
「…ほう、エネルギ-純度Bか」
「中々の物だ」
「え-と、イトウさん?」
「何だ?GL」
「何をやっているんですか?」
「見て解らないか?」
イトウの前には、白い布に巻かれ、ベットに縛り付けられたルドネスとキユラ
「研究だよ、研究」
「ヤグモの仕込んだ蜘蛛と、こいつ達の身体情報についてな」
「そうですか…」
「シ-!RCカイミナは何%だ!?」
「68.92%じゃ!!」
「常人の平均値を軽く超えとるわい!!」
「…そうか」
「もう十分だな」
バチン!バチン!!
ルドネスとキユラの拘束具を解くイトウ
「竜山!風華!!」
「は、はい!!」
「この下に、地下牢が有る」
「そこにブチ込んどけ」
「解りました」
「竜山君」
「はい」
ズッ…
ルドネスとキユラを背負う竜山
「…あれ?」
「どうかした?竜山君」
「この人達…、服は?」
「研究においては、邪魔なだけだ」
「コレを後で着せろ」
白いTシャツを放り投げるイトウ
「…解りました」
「俺が着せますね」
「私が着せるわ」
「え?いや、俺が…」
「私が着せるわ」
「解った?」
「え…」
「「OK」?それとも「YES」?」
「選択肢は2つよ」
「…すいませんでした」
地下牢
ガシャァン!!
地下牢の扉が閉められる
「…コレで良いわね」
「先に行ってて、竜山君」
「風華会長は?」
「…聞きたい事が有るの」
「…?」
「じゃぁ、先に行ってますね」
ガチャン
地下から出て行く竜山
「…何かしら?」
「あら、起きてたの?」
キユラが、ゆっくり起き上がる
「「聞きたい事」って言うのは?」
「柳舞…、という男を知っているかしら?」
「いえ、知らないわね」
「嘘はつかない方が良いわよ」
「本当よ」
「組織の情報は、全てヤグモ様が握ってるから」
「このお子様も知らないわよ」
いびきを掻きながら寝ているルドネス
「…本当、敵に捕まったなんて、ヤグモ様に殺されるわ」
「アナタ達、どうしてヤグモに使えているのかしら?」
「自分の部下も平気で殺すような男よ?」
「…ヤグモ様事態に興味はないわ」
「私はハジャ様に興味がある」
「…ヤグモが復活させようとしている男ね」
「そうよ」
「彼は孤児だった私を拾って、育ててくれたわ」
「その恩よ」
「私だけじゃなく、殆どの者がそうよ」
「…そう」
「その子は?」
ルドネスを見る舞桜
「この子は、知らないわ」
「ハジャ様ではなく、ヤグモ様にのみ使えているんだもの」
「…わかったわ」
「ありがとう」
「…どうでも良いのよ」
「どうせ、体内の自爆蜘蛛で死ぬんだから」
「…気付いてないの?」
「何が?」
「その蜘蛛、もう居ないわよ」
「はぁ!?」
仰天するキユラ
「ちょっ…!?本当!?」
「ええ、本当よ」
「もし居たのなら、ヤグモがとっくに殺してるでしょう?」
「そ、それもそうね…」
「でも、どうやって…?」
「それは言えないわ」
「でも、除去できるのは事実よ」
「…そう」
「何て言ったら良いのかしら…」
「?」
「ヤグモに従っていたのはハジャ様を復活させるため」
「でも、本当は従いたくなかった」
「どうして?」
「…嫌いなのよ、あの男」
「何を考えてるか解らないし、気持ち悪いし」
「…どうして従っていたのかしら?」
「これ、よ」
自分の体を指さすキユラ
「自爆蜘蛛を仕込まれたんだもの」
「仕方ないじゃない」
「…他の人達も、それで従ってるの?」
「まぁ、大凡ね」
「でも、この子のように本気で従っている奴も居るわ」
「…解ったわ」
「その人達を、私達なら助けられる」
「…そうみたいね」
「お願いするわ」
「ええ、イトウさんに言っておくわ」
「それじゃ」
ガチャン…
地下から出て行く風華
「…私独自のやり方で、ハジャ様を復活させられる」
「そうすれば…、私の願いは叶う」
地下研究所
「どうでしたか?風華会長」
「…彼達も、無理矢理、手伝わされてるみたいね」
「確信は持てないけど」
「そうですか…」
「竜山!GL!風華!来い!!」
イトウが3人を呼ぶ
「何ですか?」
「お前達、月神について話をしたのを覚えているか?」
「ええ、覚えてますよ」
「依り代を必要とし、生命を自由自在に操る者…、でしたか」
「そうだ」
「その月神なんだが、シ-の協力で解ったことがある」
「何ですか?」
「…月神は人間だ」
「!?」
「異種の能力を持ったため、神とされているだけだな」
「コレがどういう事か解るか?」
「ど、どういう事ですか?」
「魂を永久に封印できる」
「地獄より、さらに下層の地獄…」
「冥獄じゃな?」
「「冥獄」…!?」
「地獄で死んだ者が行く所だ」
「そこでは魂が永久に封印される」
「そして、闇が生まれる場所とも言われている」
「永久に封印されるのなら、生き返ることは…」
「不可能だ」
「地獄も現世も、全てが干渉できない領域だからな」
「そんな所の様子が、どうして分かったんですか?」
「…神の法すら無視するバカが居てな」
「冥獄から抜け出し、闇を破壊し、地獄に戻り、現世に帰って来たバカが居る」
「も、もしかして…」
「…メタルだ」
「地獄で犠牲になった獅師を連れ戻しに、冥獄まで行った」
「あの人、そんなに凄かったんですか…」
「だが、地獄で死んだ者は生き返れない」
「どのみち、魂が封印されたことに変わりはない」
「でも、月神が魂を自在に操作できるのなら、自分の魂も操作できるのでは?」
「どうして、地獄から戻ってこないんですか?」
「…月神は、な」
「生き返りたくないんだよ」
「え?」
「4国大戦の時もハジャが起こした大戦の時も…」
「月神は無理矢理ハジャに従わされていた」
「どうして…」
「それは、のう」
「ワシが原因じゃ」
シ-が遠い目をする
「月神を操作する機械」
「それを作ったのはワシじゃ」
「…まぁ、設計したのは俺だが」
イトウがため息をつく
「ど、どういう…!?」
「4国大戦の時、俺とシ-、和風は東の医兵だった」
「治療は追いつかず、傷ついた兵は次々に運ばれてくる…」
「そんな時だった」
「ハジャがワシたちに協力を呼びかけてきたんじゃ」
「「兵を生き返らせるから、有能な技術者を貸して欲しい」と、な」
「それで俺達はハジャに協力した」
「ハジャは「人を完全に洗脳する機械を作ってくれ」と言ってきた」
「イトウは、それに疑問を持ったようじゃったが…」
「それでも協力した」
「何故ですか?」
「東が負ければ、東の国の人々は奴隷同然の扱いになるじゃろう」
「それを懸念したのじゃ」
「そうだったんですか…」
「俺達は機械を完成させ、それをハジャに渡した」
「ハジャは俺達の前で儀式を行い、そしてミシロに月神を憑依させた」
「「ミシロ」…?」
「ある女性じゃ」
「しかし、ワシ達の機械はミシロの「思い」に敗れ、破壊された」
「それで終われば良かったんじゃが…」
「次の大戦が始まった時、俺と和風はハジャの元を離れ、シ-はハジャの元に着いた」
「シ-は機械を強化した物を作り、月神の依り代となった金田に使用した」
「金田さんが…!?」
「その機械もメタルに破壊されたがのう」
「しかし、ワシは、さらに強力な機械をヤグモに渡してしまった」
「だが、機械の弱点は変わっとらん」
「何ですか?」
「機械の弱点は3つ」
「2つは、機械の耐久性の弱さ、操作の難しさじゃ」
「破壊すれば、それまでじゃが…」
「ヤグモは恐らく外面を強化しとる」
「操作も完全にこなすじゃろう」
「人の思いは…!?」
「…それが、今回の強化した所じゃ」
「人の思想を全て支配するのじゃよ」
「そんな…!!」
「故に、破壊方法は最後の1つ」
「依り代ごと殺すことじゃ」
「「依り代ごと」…」
「その後はワシ達が何とかしよう」
「お主達の使命はそれだけじゃ」
「依り代には、誰が選ばれるんですか?」
「解らん」
「依り代はエネルギ-純度が高く、レベルの高い者が適しとるからのう」
「捜せば、何人でも居るわい」
「そうですか…」
「防ぐ方法は?」
「無い」
「もしかしたら、お主達の仲間が依り代にされるかも知れないし、敵の誰かがなるかも知れん」
「誰かが…」
「まぁ、最終的な目的は解っている」
「ハジャの復活だ」
「止めるには月神の紋章と三賢者の紋章を守り抜くしかない」
「ヤグモを倒せれば、それが最も手っ取り早いがのう」
「それが出来ない」
「奴は紋章で力を強化している」
「現に、メタルも負けた」
「メタルさんが!?」
「心配しなくても、生きている」
「今は何処に居るか知らないが」
「秋雨達は!?」
「秋雨達は何処ですか!?」
「柳舞を捜しているだろう?」
「何処に居るかは知らん」
「そうですか…」
「さて、お前達も本来の目的を果たすと良い」
「ヴァトラを捜せ」
「え?」
「名目は名目だ」
「柳舞と秋雨を捜すついでで構わない」
「俺達は研究に専念する」
「地下牢の2人は任せておけ」
「は、はい」
「この世界の案内はGLと竜山に任せる」
「行ってこい」
「解ったわ」
「行きましょう、2人とも」
「は、はい!!」
バタン
地下研究所から出て行く竜山達
「元気じゃのう」
「若者は」
「お前は年を取るんだったか?シ-」
「そうじゃ」
「死ぬ前に面白い物が見れそうじゃわい」
爆笑するシ-
「…そうだな」
「研究を進めるか」
「うむ、この装置を作らなければならんのう」
カサッ…
設計図を眺めるイトウ
「…本当に、面倒くさい計画を立てやがる」
読んでいただきありがとうございました