王と炎の獅師
東の国、王室
「炎鬼…」
「…オキナか」
オキナが炎鬼の前に立つ
「最後に聞きたい」
「仲間に着く気は?」
「…この前も言っただろう」
「無い」
「…残念だ」
「亜門が説得してくれれば、答えは変わったのか?」
炎鬼が静かにオキナを睨む
「…亜門に合ったのか?」
「ああ、お前を説得して貰うように頼んだ」
「無駄だったが」
「…誰であろうと、俺の考えを変えることは出来ない」
「諦めろ」
「…ああ、諦めるさ」
「だから、残された方法は1つだ」
オキナがハンマ-を構える
「お前を殺す」
「…聞き間違いか?」
「オレを殺す、と?」
「ああ、そうだ」
「笑わせるな」
「お前が俺に勝てるとでも…」
「豪炎破槌」
ゴォォォオォン!!
オキナのハンマ-が、炎鬼を吹っ飛ばす
「ぐぅ…!!」
「俺は鬼怒とはワケが違う」
「忘れたか?」
「…確かに、少し舐めていたようだな」
バラバラ…
肩の石のかけらを払い落とす炎鬼
「行くぞ」
ズゥゥゥウゥン…
炎鬼が、紅く発光する
目を大きく見開くオキナ
「お前…!!」
「火の五神の所持する月神の紋章だ」
「効果は知っているだろう?」
「エネルギ-純度、特性の特化…」
「まさに、伝説級の代物だ」
「…そうだ」
「ならば、解るだろう?」
ガン
炎鬼が壁に触れる
「敵わない事ぐらいは」
ゴォォオォォォォォォ!!
壁が激しく燃え出す
「…!!」
「灼熱獄炎…」
「炎葬斬!!」
バギィ…
炎鬼の大剣の中心が割れる
「牢火絶界!!」
ガァン!!
オキナが炎鬼の攻撃を受け止める
「…!?」
少しずつ、オキナのガ-ドを切り裂く炎鬼の大剣
「おぉ…!!」
「うぉぉおおおおおおお!!」
ザァァァァァァン!!
オキナのガ-ドが、完全に切り裂かれる
「ぐぅ…!!」
「どうした?その程度か?」
「炎拳・角撃!!」
炎鬼の拳から、鬼の角のような火柱が立つ
「地獄に逝け!!」
ゴォン!!
オキナの腹部に拳が叩き込まれる
「ゴフッ…」
ボタボタ!!
オキナの足下に、多量の血が落ちる
(…4本ぐらいか)
(完全に折れたな…)
「どうした!?お前は、こんなに弱かったか!?」
「平和ボケか!?それとも、手を抜いているのか!?」
「答えろ!!」
「…軽い」
「あ?」
「軽い拳だ…」
「お前の拳は、こんなに軽かったか?」
「何を言っている!?」
「紋章で強化された、俺の拳が軽いはずが…」
「…昔のお前は、意地でも紋章を使わなかった」
「「自分の力で守れなければ、意味はない」が、お前の口癖だ」
「亜門を守れなかったお前は、その信念すら捨てたか?」
「黙れ!!」
ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」
「黙れ--------------!!」
ゴォン!!
オキナの口から、異常な量の血が溢れ出す
「…軽い」
「軽い拳なんぞ、俺には効かん」
「お前に…!何が解る!!」
「己の信念を貫き通せなかった者の虚しさが解るのか!?」
「…お前の信念は何だ?」
「俺の信念は…!!」
「亜門を守ることだろうが!!」
オキナが叫ぶ
「その信念を自ら壊すか!?」
「お前の言っている事はガキの言い訳だ!!」
「自分のエゴに亜門を使うな!!」
「黙れ…!!」
「そのエゴも、何の為だ!?」
「亜門を守れなかった自分への怒りだろう!!」
「違うか!?」
「違う!絶対に…!!」
「違わない!!」
「お前は!亜門を…」
ゴガァン!!
炎鬼がオキナを殴り飛ばす
「違う!絶対に!!」
「俺は亜門を利用しない!!」
「絶対に、だ!!」
ガラガラ…
瓦礫から出てくるオキナ
「…それだろ」
「お前が戦う理由は」
「…!!」
「亜門を守るためだろうが」
「自分に嘘をつくな」
「…拍子抜けだ」
「バカが解ったような口を利ぇてんじゃねぇよ」
イスに座る炎鬼
「…何が解るってんだ?」
「炎鬼…」
ガチャガチャ!!
王室に、大勢の兵が入ってくる
「炎鬼様!ご無事ですか!?」
「賊を捕らえろ!!」
「チィ…!!」
ガシャァァン!!
ガラスを蹴破るオキナ
「炎鬼!考え直せ!!」
「頼む!!」
「…」
無言の炎鬼
「行け!行け!!」
オキナに迫る兵
「くそ…!!」
ブゥン!!
飛び降りるオキナ
「下だ!行け!!」
次々に下へ降りていく兵達
「…何だ?賑やかだな」
「ま、また賊か!?」
ヤグモが王室に入ってくる
「と、捕らえ…」
「構わん、俺の客人だ」
「下がれ」
「は、はっ!!」
ザザザ…
王室から出て行く兵達
「…何の用だ?」
「解ってるだろう?」
「計画は進んでいる」
「…紋章を渡せ、と?」
「そうだ」
「それと、お前も俺達の基地に来い」
「何故だ?」
「これ以上、ココに居ては面倒だろう?」
ガサッ
紋章を取り出す炎鬼
「…」
紋章を見つめたまま、無言で居る
「どうした?炎鬼」
「…いや」
炎鬼の頭の中を、オキナの言葉が駆け巡る
(「自分に嘘をつくな」)
「…クソが」
小さくため息をつく炎鬼
「…ヤグモ、紋章だ」
紋章を放り投げる炎鬼
「ああ」
紋章をキャッチするヤグモ
「で、どうするんだ?」
「俺達の基地に来るのか?」
「…行くが、その前に用がある」
「構わないか?」
「ああ、別に構わないさ」
「「用」とは何だ?」
「…お前が知る必要は無い」
王室の扉を開け、出て行く炎鬼
「…さて、火の紋章も手に入った」
「残りは、水、雷、風…」
「そして、3賢者の1つの紋章…、か」
火の紋章を見つめるヤグモ
「もう少しだ…」
「もう少しで…、ハジャ様は…!!」
イトウの研究所
「…待っていてください」
「ユウリ様…」
イトウの研究所には、1人の人影があった
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