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壊れ行く者

ブチッ


「…え?」


AWの片腕が地面に落ちる


「い、いやぁぁぁぁぁぁあ!!」


無くなった片腕を押さえるAW


「…殺す」


「ひぃぃいいい!!」


「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す」


ゆらりとAWに近づく天鹿和


「し、審判!ギ…」


ガシャン


天鹿和がAWの口を手鎧で押さえる


「…黙れ」


ヴヴヴヴヴヴ…


激しく、天鹿和の手鎧の先端が振動する


「むぅううう゛う゛うう!!」


グチャグチャグチャグチャグチャグチャ!!


肉片と血が飛び散る音が、会場内に響き渡る


「うわ…」

「酷ぇ…」


静まりかえる会場内


「…完全に壊れたな、輝鈴」


観客席のジョ-カ-が静かに呟く


「ちょっと!止めなくて良いの!?」

「あのままじゃ、輝鈴が…!!」


「落ち着け、ハ-ト」

「俺達が出て行けば、その時点で、このチ-ムは失格だ」


「でも…!!」


「メタルさん!!」


控えている秋雨がメタルに叫ぶ


「…何だ?静かにしてくれ」


「止めなくても良いんですか!?」

「それに、2回、勝ってるんだから、もう負けても…!!」


「いや、確かにそうだが…」

「この3戦目は、単なる見せ物だ」


ウェンが呟く


「「見せ物」!?」


「勝負が、初めの2戦で決まる程の実力差だ」

「負けているチ-ムは、どう足掻こうが勝てはしない」

「ならば、3戦目は見せ物になる」


「そんな…!!」


「勿論、普通の戦いとル-ルは変わらないし、勝敗も変わらない」

「負けたチ-ムと勝ったチ-ム、どちらかが拒否しなければ、試合は行われる」


「じゃぁ!今すぐ拒否しましょうよ!!」


「無駄だな」


「どうしてですか!?メタルさん!!」


「戦いが始まった時点で、止めることは出来ない」

「もし、戦いに乱入しよう物なら、即、失格になる」

「失格になれば、ヤグモは止められないし、紋章も誰かが持って行く」


「じゃぁ、まさか…!!」


「あのAWとか言う女がギブするか、仲間が止めるか、だ」

「ただし、口が、あの状態じゃギブは出来ないし、仲間は怯えちまってる」

「あのヘタレ審判は、止めれば自分に被害が及ぶと思ってんだろ?」

「止めやしない」


煙草を吸うメタル


「軽い気分で見てた観客はどうだ?」

「この命をかけた戦いを甘く見ていた観客は」

「声が出ないだろ?」


「こんな大会…!国家が見逃してるんですか!?」


「ああ、見逃してるよ」

「お前は思わないか?」


「何をですか!?」


「「自分は、すばらしい能力を持ってるのに、世の中は平和」」

「「能力を使いたいなぁ」…ってな」


「思いませんよ!そんな事!!」


「お前はそうでも、あの観客共は思う」

「暇つぶし、ストレス発散、自己満足のために試合を見てる」

「国家も、そんなイカレ野郎共に反逆されるより、イカレ野郎共が殺し合った方が都合が良いんだろう」


「そんな事が…!!」


「…心配しなくても、すぐに勝負はつく」

「天鹿和の勝ちで…、な」


「う゛あ…あああ…」


地面を這いつくばるAW


「…殺す」


「うう゛ぃあ!ぶう゛う゛あう゛あう゛ぁ!!」


何かを必死に叫んでいるが、口が潰れて言葉を発することが出来ない


「こんな弱さだから…、青龍を守れなかったんだ」

「青龍を…、守れなかったんだ」

「青龍を…」


ブツブツと呟く天鹿和


「う゛ぁあっっあ!!」


ゴッ!!


天鹿和がAWの顔面を蹴り飛ばす


「こんな弱さだから…」


ゆらりとAWに近づく天鹿和


「…前言撤回だ、秋雨」

「この勝負、長いぞ」


「ど、どうしてですか!?」


「あのバカ、相手が死なないように加減してやがる」

「相手チ-ムや審判が止めないように、双方にもプレッシャ-を放ちながら…、な」


「天鹿和さん…!!」


「弱いよなぁ…?俺」

「そうだよな?裏ぁ…」


ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!


AWの首を握り、延々と殴り続ける天鹿和


「弱いよなぁ?弱くて、弱くて、弱くて…」

「情けないよなぁ?」

「こんな事だから、青龍を守れないんだよなぁ…?」


「うぶぃぃいいぃ…」


どうにか起き上がり、逃げようとするAW


「…ああ、リングの外に出たら失格だったっけ?」

「じゃぁ、仕方ないよね」


ブツン


AWの片足が、場外に飛ぶ


「う゛ばぁぁぁぁあああああ!!」


「仕方ないよね?仕方ないよね?仕方ないよね?」

「君が逃げるんだから…」


「う゛ぁぁあああ…!!」


這いつくばって、場外に落ちるAW


「あ…、試合終了!!」

「天鹿和選手の勝利です!!」


「仕方ないよね…」


天鹿和がAWに近づく


「「殺す」って、宣言したよね」

「だったら、殺さなきゃ…」


AWの頭を掴む天鹿和


「う゛ぁぁあああ…!!」


「天鹿和さん!やめてください!!」


叫ぶ秋雨


「ダメだよ?秋雨君…」

「殺さなきゃ」


「…そこまでだ」

「天鹿和」


メタルが天鹿和の肩を掴む


「メタル…?」

「元凶だね」


「…青龍のことか」

「お前は、どうしたい?俺を」

「殺したいのか?苦しめたいのか?呪いたいのか?」

「どれでも良い」

「自由にしろ」


「メタルさんまで…!!」


「じゃぁ、殺すのかなぁ?」

「殺したいし」


「…別に良いが、今はダメだ」

「俺を殺せるときに殺せ」


「うん、そうさせて貰うよぉ」

「俺じゃ、敵わないから」


「…そうしろ」

「とりあえず、その女を離せ」


「えぇ?殺すって宣言しちゃったんだよ?」


「宣言なんぞ、知ったことか」

「離せ」


「嫌だなぁ…」

「でも、仕方ないか…」


ドシンッ


地面に落ちるAW


「う゛ぃあ…」


「許すと思った?」


天鹿和がAWに拳を振りかざす


「殺さなくて良いって、言ってんだろ」


ゴスッ!!


メタルが天鹿和の腹部に拳を叩き込む


「うがぁ…!!」


気絶する天鹿和


「…世話の焼けるガキだ」

「おい、AW」


「う゛あ…!?」


「…俺の仲間が迷惑をかけた」

「詫びと言っては何だが…」


メタルが和風を見る


「…ふぅ」


小さくため息をつく和風


「仕方ない、か」


リングに上がる和風


「コレと、コレか」


天鹿和が千切った腕を拾い集める


「コレも、な」


足も拾う


「これで良し…、と」


和風がAWに近づく


「おい、AW」

「コレから、お前の千切られた腕と足を元に戻す」

「口も、な」


「そんな事が出来るの!?」


SWが口を挟む


「ああ、出来るさ」

「お前達は離れてろ」


「は、はい…」


「…和風、後は任せた」

「天鹿和は部屋に戻らせる」


「ああ、頼む」


「解っている」


秋雨達の元に戻ってくるメタル


「メタルさん!天鹿和さんは…!?」


「…「心配ない」って言えば、嘘になるな」

「後始末は、俺と和風がする」

「ウェンと秋雨、凩、は天鹿和を担いで部屋に戻れ」


「お、おう…」


天鹿和を担ぐ凩


「…ウェン、この後は解ってるな?」


「無論だ」

「お前も、後始末を頼む」


「ああ、解っているさ」


「さて、帰るぞ、秋雨、凩」


「…はい」


「ああ」


会場から出て行く秋雨達


「…」


会場は、暗い静かさに包まれていた


読んでいただきありがとうございました

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