風呂場の雑談
125号室、ハ-ト達の部屋
部屋の中には、スペ-ドが寝ている
「…輝鈴、ジョ-カ-から聞いてたけど、本当に居たのね」
「ビックリしたわ」
「…ハ-ト、ダイヤ、まずは謝らせてくれ」
「俺がハジャの所を飛び出したせいで、お前達に迷惑をかけたから…」
「…今となっては、どうでも良い事よ」
「ハジャ様は、孤児だった私達を拾ってくれた」
「…でも、戦闘力の見込みの無かった青龍とアナタを戦わせたのは…、酷いと思う」
「仕方ないさ」
「あの時、誰もハジャに逆らえなかった」
「…輝鈴、私達の所に来て欲しい」
「どうして、ハジャ様を殺した奴に味方するの?」
「…「味方」じゃない」
「復讐のためだ」
「青龍の…、な」
「青龍の?」
「どうして?」
「…お前達、何も知らないのか?」
「青龍は、メタルの自分勝手な理由で殺されたんだ」
「…どういう事?」
「青龍は…」
「はい、スト-ップ!!」
スペ-ドがハ-トの口を防ぐ
「…何すんの?」
「って、言うか、アンタ起きたの?」
「おしゃべりが過ぎるぞ、お前達」
「昔は仲間でも、今は敵なんだから」
「…本選が始まるまでは良いでしょ?」
「昔、私達は…」
「…ハ-ト、黙った方が良いと思う」
「え-!?ダイヤまで!?」
ダダをこねるハ-ト
「…何か、これ以上、居たら邪魔みたいだね」
「帰るよ」
「…仕方ないわね」
「本選で合いましょう!!」
「…ああ、良い勝負をしよう」
バタン…
部屋を出て行く天鹿和
「…何なのよ?スペ-ド」
「別に、大した事じゃないんだけど…」
「何て言うかなぁ…」
言葉に詰まるスペ-ド
「…言いたくないなら、言わなくて良い」
「お!気が利くなぁ!ダイヤは!!」
「…ありがとう」
バタン
部屋にジョ-カ-が入ってくる
「ん?何をしている?」
「…輝鈴と話してたのよ」
「久しぶりに…、ね」
「お前達も、か?」
「あれ?ジョ-カ-も?」
「何だ!皆、話してるんじゃない」
「クロ-バ-を除いて、な」
「…そのクロ-バ-は?」
「風呂だ」
「すぐに戻ってくる」
「…風呂?風呂って言ったら、秋雨とか言う輝鈴と同じチ-ムの子が行くって言ってたわよ」
「…アイツ、妙なことを喋らなければいいが」
「そうね、アイツ、お喋りだから」
「…ハ-ト、人のこと言えない」
「あら?そう?」
「…そう」
風呂場
ガラガラ
風呂場に入る秋雨
「結構、僕達の世界の見た目と変わらないな…」
ザァァァ-ン…
体に湯をかけ、風呂に入る
「ふぅ…」
「お?何だ?お前」
クロ-バ-が風呂に入って、寛いでいる
(先客かな?)
「こんにちわ」
「おう、こんにちわ」
「良い湯だな」
「そうですねぇ…」
ほのぼのとする2人
「で?お前も予選通過者?」
「はい、そうですよ」
「アナタも?」
「おう!俺は、殆ど何もしてないがな」
「仲間が、殆どをやってた」
「僕も、同じような物ですよ」
「お!気が合うな!!」
「名前は?」
「秋雨です、秋雨 紅葉」
「ふ-ん、秋雨ねぇ…」
「俺はクロ-バ-だ」
「よろしくお願いします、クロ-バ-さん」
「まぁ、そう堅くなるなよ」
「見た所、そんなに年も離れてないだろ?」
「アハハ…」
苦笑する秋雨
「ん?待てよ…」
「秋雨って言えば、スペ-ドが世話になったチ-ムじゃねぇか?」
「あ、お仲間だったんですか?」
「おう!世話をかけたな」
「いえいえ!そんな事、無いですよ」
「じゃぁ、ジョ-カ-と話してた、あの手鎧のガキも、お前の仲間か?」
「天鹿和さんですか?」
「ああ、たぶん、そのガキだ」
「手鎧なんざ、ここら辺じゃ見かけないからな」
(天鹿和さん、別のチ-ムの人と、何を話してたんだろ…?)
ガラガラガラ
風呂場の戸が開く
「うわぁ-い!お風呂だ!お風呂だぁ!!」
「静かにせよ、伊弉諾」
「他の客に迷惑であろう」
風呂場に、大男と小さな子供が入ってくる
「あ!お前は…」
「観音!!」
「知り合いですか?クロ-バ-さん」
「む?木の上で叫んでいた男ではないか」
「この様な所で、何をしておる?」
「入浴だよ!入浴!!」
「お前!そのガキは何だ!?」
「我汝の仲間なり」
「名を伊弉諾と言う」
「伊弉諾…、男の子ですか?」
「俺は男だ!小さいけど、男だ!!」
ヤイヤイと喚く伊弉諾
(意地の張り方が、何処となく、水無月さんに似てる気が…)
「さて、入るぞ、伊弉諾」
「かけ湯を忘れるな」
「解ってる、って!いつまでも、子供扱いすんな!!」
ザァァァ-ン!!
「熱っっ!!」
飛び跳ねる伊弉諾
「…世話の焼けるガキだな?観音」
「ふむ、確かにそうだな」
「おぬし達のチ-ムのダイヤという少女と取り替えて欲しい物だ」
「え~!俺が要らないのか!?」
「観音の冷徹野郎~!!」
泣き叫びながら、風呂に飛び込む伊弉諾
「伊弉諾!他の客に迷惑であろう!!」
「知らね-もん!どうせ、俺は必要ないんだからな!!」
風呂の中を泳ぎ回る伊弉諾
「…申し訳ないな、少年」
「秋雨です」
「…秋雨か、良い名だ」
「…どうも」
ブクブクブク…
「おい!観音!このガキ、風呂に沈んだぞ!!」
「心配はない」
「死ぬことは無いからな」
「?」
ザッパァ-ン!!
「あ-!俺、もう知らねぇ!!」
「知らねぇからなぁ!!」
風呂から、15歳前後の青年が出てくる
「え!?」
呆然とする秋雨
「知らねぇって言ったら、知らねぇもんね-!!」
風呂の中で暴れ回る青年
「驚いたな!水族か?」
「ああ、そうだ」
「「水族」って…?」
「何だ?知らないのか?秋雨」
「水族って言うのは、水をエネルギ-の媒体にする、水から生まれた一族だ」
「生き残りは少ない、と聞いていたが…」
「伊弉諾は、水族の孤児でな」
「捨てられた所を、二五が拾ったのだ」
「「二五」?」
「うむ、我汝達の頭である」
「最近の新入りの要望で、この大会に出た次第だ」
「新入りの要望を聞き入れたのか?」
「ずいぶん、お心が広いこったな」
爆笑するスペ-ド
「頭をバカにするな!許さねぇぞ!!」
怒鳴る伊弉諾
「まぁまぁ!皆さん、落ち着いてください」
「今は大会の戦闘場じゃなくて、風呂場なんですから!!」
「…秋雨の言うとおりだ」
「落ち着くのだ、2人とも」
「…」
「…解ったよ」
ため息をつくクロ-バ-
「で?本選は、いつ始まるんだ?」
「暇で仕方がねぇ」
「もうじき、始まるだろう」
「確かに、予選敗退者の回収にしては、遅すぎるが…」
「ふぅ-、良い湯だぁ…」
のんびり風呂に入る伊弉諾
「…空気、読めよ」
「ん?何?」
「まぁ、いいや」
「俺は風呂上がりの牛乳でも飲むかな」
風呂から出るクロ-バ-
「あ!クロ-バ-さん!!」
「何だ?秋雨」
「先刻の話ですけど…」
「天鹿和の事か?」
「大した話じゃねぇよ」
ガラガラガラ
風呂場から出て行くクロ-バ-
(何だったんだろう…?)
読んでいただきありがとうございました