憎悪
東の国、城内
地下牢獄
「入ってろ!!」
ガシャァァァン!!
牢に放り込まれるオキナ
(…すぐに出るか?いや、様子を見るか)
「すぐに出るに一票アルよ」
「その声は…!!」
隣の牢獄に、黒髭の眼鏡の中年男性が入っている
「ガムナさん!!」
「久しぶりアルね」
「私の前で考え事なんて、する物じゃないアルよ」
「どうしてここに?」
「…炎鬼国王に口添えしただけアルね」
「「ヤグモの討伐に協力すべきだ」と」
「…誰から要請があった?」
「西の国王、ラジン様からアルね」
「「ヤグモは、必ず4国の敵になる」と」
「最も平和的な奴だからな」
「どうして、ガムナさんはココに居るんだ?」
「ガムナさんなら、すぐに出られるだろ?」
「…無駄アルね」
「国王は、すでにヤグモと通じてるアル」
「…紋章も、もう渡したのか」
「恐らく…、アルけどね」
「五神最強の名は、伊達じゃないアル」
「出れば、無事じゃ済まない…、か」
「そうアルね」
「大人しくしているのが良いアルよ」
「…そう言うわけにはいかない」
「炎鬼には、味方について貰わないと」
「…月神は、復活させるとやばいアルか?」
「地獄の門も、メタルなら防げるアルよ?」
「…いや、無理だ」
「メタルは、ヤグモに負けてる」
「…それは信じがたいアルね」
「メタルは、昔の大戦でヤグモを倒したはずアルよ?」
「ヤグモは、信じられないぐらい強くなってる」
「紋章の力もあるんだろうが」
「…それは妙アルね」
「紋章は五神と三賢者にしか、適応しないはずアルよ?」
「どうして、ヤグモが使えるアルか?」
「…解らない」
「もしかしたら、空白の賢者の座をヤグモが次いだとか?」
「いや、それはないアルね」
「亜門の後は、誰も次いで無いはずアルね」
「正式な儀式を行うには、五神と三賢者、全員が集まらなければならないアルからね」
「…亜門の事件を引きずってる炎鬼を説得するには、どうすればいい?」
「解らないアルね」
「亜門に、直接、来て貰った方が良いアルかな?」
「…逆に、逆なでしてないか?」
「…かも知れないアルね」
ため息をつく2人
「…ケイジは、ミシロの一件を切り捨てたのに」
「ケイジは精神的にも強いアル」
「ミシロの一件は、仕方がなかったアルね」
「…よし、やるか」
立ち上がるオキナ
「どうする気アルか?オキナ」
「亜門の所に行く」
「炎鬼を説得して貰わないとな」
「…良いアルか?」
「ヘタすれば、死ぬアルよ」
「構わないさ」
「俺にも役目がある」
「…変わったアルな、オキナ」
「昔なら「面倒くさい」って、投げ出したアルのに」
「…学園の生徒は、面白い奴が多くてな」
「アレを守れるのなら、俺は…」
拳を握りしめるオキナ
「…立派な教師になったアルな」
「流石アル」
「…行ってくる」
「これ以上、情報を貰ってバズ-カをぶっ放されても、シャレにならないからな」
「昔、情報の聞き逃げをしたお前達に、バズ-カをよくぶっと放してたアルね」
「懐かしいアル」
「…じゃ、行ってくる」
「ガムナさんも、頑張れ」
「牢獄の中でアルか?」
「無茶言うアルね」
苦笑するガムナ
ガァァァァン!!
オキナが蹴りで牢獄を破る
「…それじゃ」
「国王を頼んだアル」
「おう!!」
そうして、オキナは走っていった
秋雨組、拠点
草の家
「グゥ…」
天鹿和尾凩が造った家の中で眠る秋雨達
「…」
天鹿和が起き上がる
そして、ゆっくり外に出て行く
草の家、外
「…表、起きろ」
「…何だ?裏」
「メタルの言ったこと、どう思う?」
「本当と思うか?」
「…地獄であった少年の名前を覚えてないって事か?」
「嘘だろ」
「…いや、確かにメタルはバカだ」
「そんなバカが、今まで戦ってきた奴の名前はきっちり覚えてる」
「…「俺達だけ忘れるはずがない」と?」
「そうだ」
「シラを切ってるのか?アイツは」
「…その理由はないだろ」
「メタルは強い」
「俺が勝負を挑んでも…」
「負ける、か」
「隙を見て殺すか?」
「それをやっちゃ、メタル以下に成り下がる」
「あくまで流儀は捨てず…、か」
「好きだぜ?俺は、お前のそう言う所」
「そりゃ、どうも」
「で、どうする?」
「…どうしようか?」
「メタルを倒すには…」
「不意打ちしかないぜ」
「天鹿和…、いや輝鈴」
「…スペ-ド」
「久しぶりだな!だぜ」
「何故、お前がメタルの味方をしているんだぜ?」
「…お前に話す理由はない」
「何を言うんだぜ?俺達は、同じハジャ様に拾われた仲だぜ?」
「仲良く…」
ビッ
天鹿和の手鎧が、スペ-ドの首に突きつけられる
「…黙ってろ」
「お前には関係ない」
「…輝鈴、仕方がないことだぜ」
「青龍の事は」
「…お前、知ってるのか?」
「あの事について」
「ああ、知ってるぜ」
「青龍は、ハジャ様の所にメタルが突っ込んでくる前に、命を受けたんだぜ」
「「メタルを殺せ」ってな、だぜ」
「…だが、青龍がメタルを襲ったのは、ハジャ様が死んだ後だ」
「青龍は、戦いには…」
「ハジャ様がそうさせたんだぜ」
「ハジャが?」
「青龍に「メタルを殺すのは、俺が死んだ後だ」って言ったんだぜ」
「青龍自身も、よく分かってなかったみたいだぜ」
「…そうか」
「だが、メタルが青龍を殺しのには違いがない」
「メタルは、青龍を殺して獅師を生き返らせようとしたんだぜ」
「だが、獅師は闇に捕まったから生き返ることが出来なかったんだぜ」
「それじゃぁ…?」
「代わりに、お前が生き返ったんだぜ」
「メタルは、無抵抗の青龍を殺したんだぜ」
「「戦いは終わった、もう戦いたくない」と言った青龍を…、だぜ」
「メタル…!!」
わなわなと震える天鹿和
「…俺が言うことは、以上だぜ」
「俺は寝るぜ」
草の家に入っていくスペ-ド
「…」
森の奥の湖に進んでいく天鹿和
湖
「メタル-----!!」
ガァァァン!!
木を殴り倒す天鹿和
「許さない…!絶対に!!」
「待ってろ!青龍!!」
「お前の元に…!お前を殺した奴を送ってやる!!」
草の家
「…良いのか?メタル、だぜ」
「構わない」
「憎しみは、全て俺に向けて貰わないとな」
「…バカだな、お前、だぜ」
「…誰が「バカ」だ」
草にうずくまるメタル
「天鹿和…、どうするんだぜ?」
「お前は…」
読んでいただきありがとうございました