戦力収集
西の孤島、オアシス
「…聞こえなかったな」
木の枝を咥えた水色の長髪の男が頭を掻く
「ウェン、もう一度、言うぞ」
「俺達に協力してくれ」
「何故だ?何故、協力しなければならない?」
「…こんな孤島に居るから、情報が廻ってこないんだ」
「ヤグモが、ハジャを復活させようとしている」
「知っている」
「…それを阻止するために、だな」
「お前、バカか?」
「ハジャを復活させるには、地獄への通路が必要だ」
「地獄を開けることが出来るのは…」
「月神だけだ」
「そんな事は解っている」
「その月神を復活させるには、「月の紋章」が必要だ」
「それは、五神と三賢者が持ってる」
「故に、復活することはない」
「…あのヤグモが、何の策も無しにハジャを復活させるとでも?」
「アイツが馬鹿なだけだろう」
「それに、俺は紋章を渡すつもりはない」
「…力尽くで奪われるぞ」
「まさか!奪われるはずが…」
ウェンが言葉を止める
「金田とガルスはどうした?」
「オキナ達も居ないぞ」
「…オキナ達は別行動だが」
「金田とガルスはやられた」
「誰に?」
「…ヤグモに」
「!!」
「解ったか?アイツ達は力を付けてきてる」
「金田とガルスを倒すほどに」
「…お前達が異世界に居すぎたからだ」
「あの世界では、年を取るんだろう?」
「…常人の100分の1で、な」
「俺達が弱くなったんじゃない」
「ヤグモ達が強くなったんだ」
「…それで?戦力として俺に協力を頼んできたのか」
「五神の1人である、お前に協力して欲しい」
「ダメか?」
「…ヤグモ達を殺して良いのか?」
「勿論だ」
「…良いだろう」
「協力はしてやる」
「…すまないな」
「オキナ達は何処だ?」
「アオシとアメ-ルは、ケイジを捜してる」
「オキナと学園の生徒2人は、雷火達を」
「…五神、全員を味方に付けるつもりか?」
「そうだ」
「そうすれば、負けることはない」
「…三賢者は?」
「雷火達が誘いに乗れば、ノ-スは着いてくる」
「問題は…」
「センリだな?」
「そうだ」
「アイツは、月神の復活を望んでいる…」
「しかも、実力は三賢者で最強だろう」
「正直、敵に回すのはキツイな」
「…後1人の賢者は、誰だ?」
「決まってないそうだ」
「紋章はカンパニ-に保管している」
「…そのカンパニ-は五神三聖に占拠されただろう」
「紋章は…」
「センリが奪い去っただろうな」
「五神三聖にも、月神を復活させるかさせないかで意見が割れているらしい」
「だが、五神三聖の最高責任者はセンリ…」
「強制的に、五神三聖の方針は復活させる事になるだろうな」
「…学園の有る世界に、ヴァトラと言う男が居る」
「奴は五神三聖から「紋章を奪還してこい」と言われたそうだが…」
「…妙だな」
「話のつじつまが合わんぞ」
「…調べてみるか」
北の国
洞窟
ピチョ-ン…
洞窟の中に、水が落ちる音がこだまする
「…居るか?ケイジ」
「この声は…、アオシか」
「何か用か?」
「話せば長い」
「姿を見せてくれ」
「…良いだろう」
洞窟の暗闇の中から、ケイジが出てくる
「最近、鏡を見なくてな」
「どうだ?俺の片目は」
ケイジの片目は無い
「…まだ、痛むのか?」
「いや、イトウさんの治療のおかげで幾分、マシになった」
「どうして、完治させなかったの?」
アメ-ルが首をかしげる
「…自分への戒めだな」
「自分の甘さが招いた結果だ」
「…アレは仕方がない」
「仕方がなかった」
「…俺は、ミシロを助けられなかった」
「だからこそ、あの大戦で、お前達に手を貸した」
「…ミシロは、天国に居るんだ」
「安心しろ」
「…そうだな」
「で、何の用だ?」
「ヤグモを倒したい」
「俺に手伝えと?」
「そうだ」
「言うまでもないな」
「OKだ」
「…感謝する」
「しかし、ヤグモの目的は何だ?」
「ハジャを復活させる事だ」
「地獄を開けるために、お前や他の五神を襲って紋章を取り上げるだろう」
「その通りであります!!」
「!?」
洞窟の入り口に、軍服を着た男が立っている
「ケイジ殿!紋章をいただきに参りました!!」
「…誰だ?ヤグモの手下か?」
「私めは、キユ!ヤグモ殿の手下であります!!」
「…俺を殺すつもりか?」
「いえ!紋章を渡していただければ、殺しはしません!!」
「…信用ならんな」
「行くぞ!アオシ!アメ-ル!!」
「お前が仕切るな」
「は-い!!」
東の森、木の穴
「う…」
起きる秋雨
「暗い…」
「当たり前よ」
「ここは木の中なんだから」
「そうだった…」
「アンタが寝てる間に、凩と天鹿和は出て行ったわ」
「木の実を蓄えるんですって」
「ぼ、僕も行かなきゃ!!」
走り出す秋雨
「待って」
その肩を掴む木
「アナタに残って貰ったのは、理由があるわ」
「?」
「私を、このままの状態で保てるようにして欲しいの」
「どうやって?」
「アナタの能力を、私が使うの」
「そんな事が?」
「可能よ」
「ただし、条件をクリアしないと行けないわ」
「「条件」?」
「アナタのエネルギ-細胞を私に頂戴」
「後は、私が、その細胞を飲めばいいわ」
「別に良いけど…」
「どうして?」
「…私は、人でなければならない」
「彼のためにも」
「「彼」?」
「何でもないわ」
「さぁ、早く、エネルギ-細胞を」
「どうやって?」
「こうやって」
ピッ!!
秋雨の腹部を斬る木
「な…!?」
「傷は大したことないはずよ」
「それより…」
秋雨の腹部の血を拭き取る
「コレを飲めば…」
ゴクン
「くぅ…!!」
「だ、大丈夫か!?」
「…ふぅ、大丈夫よ」
「コレで、アナタの細胞が私の中に入ったわ」
「能力が使えるようになるのか?」
「…厳密には、人型を保てるだけよ」
「それ以外は使えないわ」
「そうか…」
「…何をしてる?」
天鹿和と凩が帰ってくる
「あら、早いわね」
「秋雨!大丈夫か!?」
「あ、大丈夫です」
「実は…」
ペチッ
木が秋雨の背中を叩く
「?」
「彼達には言わないで」
「どうして?」
「…どうしても」
「…解った」
「何でもないです」
「そこで、斬ちゃって」
「…そうか」
「傷は治そう」
凩が時計を取り出す
「Reproduction time」
シュゥゥウゥウ…
秋雨の傷が治っていく
「回復系の技が使えるのか?」
「いや、コレは違う」
「時間を戻すだけで、俺の能力が無くなれば、傷も戻る」
「秋雨の能力に比べれば、不便だな」
「余計なお世話だ」
「そうか?」
「さて、もう行くのか?」
木が悲しそうに呟く
「…ああ、柳舞を見つけなくてはな」
「短い間だったが、楽しかったよ」
「…そうだな」
「行くぞ」
「じゃぁな、木」
秋雨達が穴の入り口に立つ
「…天鹿和!!」
「何だ?」
「寂しくなったら、いつでも来い!!」
「…ああ、そうだな」
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