精神崩壊
「…まぁ、メタル達のことを先に話して貰っていいかな?」
「彼達は、西の孤島にあるオアシスに居るそうよ」
「木の枝を咥えた水色の長髪の男と話をしているみたい」
「…そうか」
「で、俺にも聞きたいのか?」
「俺が皆に嘘をついている事について」
「…興味はあるわ」
「でも、あんな速攻の嘘は、すぐにばれるわよ?」
「…死人は蘇る事はない」
「魂が混じるなんて事も…、ね」
「そうね」
「鳥たちからの情報で、人間の言語を理解してはいるけど…」
「その姿は、俺も驚いた」
「人間型に慣れたんだね」
「偶然よ」
「それで、嘘をついている理由は?」
「…学園に侵入するため」
「目的は、メタル達への復讐さ」
「どうして?」
「昔、俺には瓜2つの兄弟が居た」
「青龍って言うんだけどね」
「その子と復讐、何の関係が?」
「殺されたんだよ」
「メタルに」
「どうして?」
「…昔、大戦が有った」
「地球上の全てを焼き尽くす程の戦い…」
「それを始めたのはメタルとハジャだったはずよ」
「…1回目はハジャが勝った」
「でも、その数年後にメタルがハジャに勝った」
「そう、その通りよ」
「メタルはハジャに勝った後、平穏が続くと思っていた」
「しかし、地獄にハジャが逃げ込んだ」
「そこまでは知ってるわ」
「メタルはハジャを追って地獄まで行った」
「その時、俺は初めてメタルに合った」
「…妙な言い方をするわね」
「アナタが死んで、地獄に居た様に聞こえるけど?」
「…そう言ってるんだよ」
「俺は死んでいた」
「なら、どうして生きているのかしら?」
「だから、言っただろう」
「青龍はメタルに殺された」
「…青龍の命と引き替えに、アナタを蘇らせたワケね」
「そうだ」
「地獄から呼び戻された俺を待っていたのは、青龍の死体と血まみれのメタル」
「…青龍が、アナタを復活させるために「殺してくれ」とメタルに懇願したんじゃないの?」
「そんな事、青龍が言うものか」
「オレを殺したのは青龍だったからな」
「…詳しく聞かせて頂戴」
「さらに、興味が沸いてきたわ」
「…悪趣味だな」
ため息をつく天鹿和
「まず、地獄で俺はメタルに合った」
「その頃は、すでに地獄はハジャに占拠されていた」
「それに反抗する勢力、獅師と獅師の手下と俺」
「あら?獅師って、ハジャの手下でしょう?」
「確かにそうだが、負けたくせに、お嬢際の悪いハジャが気に入らず、反抗したそうだ」
「それで、メタルとアナタの関係は?」
「地獄でハジャを倒す作戦を手伝っただけだ」
「そうなんだ」
「それで、どうして青龍はアナタを殺したの?」
「そもそも、青龍がオレを殺したのには理由がある」
「何かしら?」
「…俺と青龍は親に捨てられた」
「それを拾ったのがハジャだ」
「ふ-ん」
「しかし、ハジャは俺達が拾われて、10年が経った時に試練を与えた」
「「どちらか片方を殺せ」」ってな」
「…凄いこと言うわね」
「目的は解らなかった」
「しかし、俺達は殺し合いをするしかなかった」
「それで、アナタは負けたのね?」
「…いや、勝った」
「あら?それで死んだ物かと思ったんだけど」
「勝ちはしたが、とどめを刺せなかった」
「俺は、もうこんな思いはしたくないと精神崩壊を自分に使った」
「そうして、不安定な2重人格になった」
「能力が未熟な状態で使ったからでしょう?」
「恥ずかしい話だがな」
「俺は精神崩壊を使ったことがハジャにばれて、変な所に放り込まれた」
「向こう側の世界…」
「学園の有る世界ね?」
「そうだ」
「そうして、向こう側の世界を彷徨った」
「…アナタが死んだのは、いつ?」
「今の話じゃ、死んでないけど?」
「…向こう側の世界に入ってから、俺は彷徨い続けた」
「過去を忘れようと、毎日、毎日、戦闘に明け暮れた」
「それで?」
「ある時、山にいた俺を襲ってきた奴が居た」
「青龍?」
「…俺は戸惑った」
「違う世界に居るはずの兄弟が目の前に居るんだからな」
「…そこで」
「死んだ」
「見事に殺されたさ」
「どうして、青龍が?」
「…さぁな」
「大方、俺を「殺してこい」とハジャに言われたんだろう」
「…で?」
「地獄に行った」
「それから、しばらくして、メタルが地獄に来て…」
「…戦いの後、メタルに呼び戻されたのね」
「そうだ」
「どうして、メタルが俺を呼び戻したのかは解らなかった」
「誰も言ってくれなかったしな」
「で、どうして復讐するの?」
「自分を蘇らせてくれた恩人に」
「…青龍は、俺を殺して当然だった」
「俺も青龍を殺しかけたんだからな」
「…要するに、「自分を殺した兄弟を殺したから」って事?」
「そうだ」
「少しの間だったが、俺は嬉しかったさ」
「アイツと居れたことが…」
悲しい目をする天鹿和
「身寄りのない、唯一の血縁だったからな」
「…そう」
「メタルが、青龍を殺した理由を俺は知らない」
「だが、殺したのに違いはない」
「…私が口出しできる物じゃないわね」
「聞かせてくれて、ありがとう」
「…俺も、少し気が軽くなった」
「でも、どうして私に話したの?」
「演技をしてくれた時点で、お前がペラペラ喋るバカじゃないと解ったからだ」
「ここに居る口実も作りたかったしな」
「…計算高いのね」
「そりゃ、どうも」
「天鹿和さ-ん!木-!!」
秋雨と凩が帰ってくる
「ナイスタイミングだな」
「まったくね」
「…解ってると思うけど」
「話すわけ無いでしょう?」
「そこまでバカじゃないわ」
「それに、それも計算の内でしょう?」
「…本当、悪趣味だな」
「お褒めの言葉として受け取っておくわ」
「木の実!大量に見つかりました!!」
「おお!凄いね」
「草も見つけた」
「布団代わりには成るだろう」
「ナイス!!」
「さて、野宿の準備をしよう!!」
「はい!!」
そうして、秋雨達は野宿をした
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