悲報
「…そうか」
目を押さえる和風
「ロックが…、死んだか」
「…まず、間違いない情報だ」
「目撃者が何人か居る」
「…そうか」
「スカル達が悲しむだろうな…」
「…そうだろうな」
煙草を吸うノ-ス
「校長…」
「死んじゃったのかな…」
「GL…」
「…秋雨君、クラウンに伝えてくれ」
「「ロックは死んだ」とな」
「…伝えなければいけませんか?」
「いつかは解る事だ」
「早めに話した方が良い」
「…はい」
うつむく秋雨
「…先刻、出来上がったんだが」
和風が小さな瓶を取り出す
「秋雨君、君の能力は、コレで直せる」
「本来の目的はコレだろう?」
「…ありがとうございます」
瓶を見つめる秋雨
「飲むんだ」
「…」
一気に飲み干す秋雨
ヴヴヴヴヴ…
秋雨の両腕が震動する
「…!!」
ヴン…
秋雨の手の震動が収まる
「能力を発動するんだ」
「…はい」
地面に落ちていた葉を掴む秋雨
パァン!
葉が水になる
「…凄いな」
「コレが、コイツの能力か」
ノ-スが感心する
「…元に戻りました」
自分の手を見つめる秋雨
(この能力なら…)
「…言っておくけど、それでロックの魂を呼び戻す事は考えない方が良い」
「解ってるな?」
厳しい表情になる和風
「ロックは愛した女性を呼び戻さなかった」
「呼び戻せば、他の誰かが犠牲になるから、だ」
「…はい」
煙草屋前
「…それでは、帰ります」
「ありがとうございました」
眠っている竜山を背負った秋雨とGL、モッチ-が一礼する
「君達の世界に帰るときは、気を付けろ」
「時間がズレる可能性が有るからな」
「「時間がズレる」?」
「…ロックが異世界に来たのは、何日前だ?」
「確か…、2日か3日ぐらい前です」
「こちらでは一週間、経ってる」
「それが、「時間のズレ」ですか…」
「まぁ、どのくらいズレるかは運次第だが、な」
「そんなにズレる事は無いと思うが…」
「…そうですか」
「それと、もう1つ聞いて良いですか?」
「何だ?」
「柳舞と言う人を知っていますか?」
「…知らないな」
「ノ-スは?」
「知らん」
「聞いたこともない」
「そうですか…」
「ありがとうございました」
「…クラウンによろしく」
「…はい」
「向こうに帰ります」
「…気を付けてね」
「…はい」
そうして、秋雨達はイトウの研究所を目指した
東の山、山道
「う…」
「竜山!!」
竜山が目を覚ます
「ここは…?山?」
「目が覚めたのか!!」
「俺は…、確か、刺されて」
「いや、大丈夫だ」
「実は…」
説明中…
「…そうか」
「そんな事が…」
「…校長の事は、クラウンやスカル教頭に言うしかない」
「柳舞さんも見つからなかったしな…」
「…仕方ないさ」
「俺達が、どうにか出来る事じゃない」
「…そうだな」
イトウの研究所
扉の前に立つ秋雨達
「…何か、帰りにくいな」
「それでも、帰るしかないわ」
「…そうですね」
「行きましょう」
「…ああ」
扉に入る秋雨達
廃校、地下
「…秋雨さん!!」
クラウンが秋雨達に向かって走ってくる
「クラウン…」
「どうでしたか?異世界は」
「能力は、元に戻りましたか?」
「…柳舞さんは見つからなかったけど、能力は元に戻った」
「そうですか!良かったですね!!」
「それで、カンパニ-についての情報は有りましたか?」
「…クラウン、落ち着いて聞いてくれ」
「?」
「校長が死んだ」
「…え?」
「五神三聖がカンパニ-を制圧してたんだ」
「それからカンパニ-を救うために…」
「…笑えませんよ!その冗談」
クラウンが苦笑する
「クラウン…」
「ロックさんは、異世界でもメタルさんに同等、いや、それ以上の強さです!!」
「それが死ぬなんて、冗談でしょう?」
「…本当なんだ」
「人質が、何人か見てる」
「嘘ですよね?」
「この前まで笑ってた人が…」
「僕やスカルさんを雇ってくれた人が…」
「死ぬなんて…」
その場に座り込むクラウン
「嘘ですよね…?」
「…残念だけど」
「嘘だ…、嘘だ…」
「クラウン…」
GLが悲しそうに呟く
「秋雨、お前の能力でも無理なのか?」
竜山が心配そうに呟く
「…」
沈黙すら秋雨
「秋雨さん!魂を!魂を呼び戻せませんか!?」
「アナタの能力なら…」
「無理だ、クラウン」
スカルが歩いてくる
「秋雨君、話は聞かせて貰ったよ」
「ロックさんが死んだんだね?」
「…はい、学園はスカルさんに任せる、と」
「…そうか」
「スカルさん!「無理だ」って…!?」
「体が必要なんだよ」
「入れ物がね」
「ロックさんの体は…」
「…向こう側の世界で無くなった」
「場所も解らないんだ」
「僕が!僕が探しに行きます!!」
「…諦めるんだ、クラウン」
「秋雨君の能力は、死者を蘇らせるための物じゃない」
「お願いします!!」
「スカルさん!!」
「…もし、蘇ったとしても、他の誰かが犠牲になる」
「闇に飲まれて…、ね」
「お願いします!!」
「…駄目だ」
「お願いします…」
クラウンの頬を涙が伝う
「クラウンさん…」
モッチ-がクラウンの肩に手を置き、首を横に振る
「秋雨君、学園に帰ろう」
「柳舞君の捜索隊を編成するからね」
「…解りました」
「クラウン、行くぞ」
「ロックさんの事は諦めろ」
「…何故、スカルさんは簡単に諦められるんですか?」
「ロックさんが…、僕達にとって、どれだけ大切か…」
「…お前は、俺と同じ事を言うんだな」
「俺は、ロックさんに聞いた事が有る」
「「愛した女性…、箒夏を蘇らせようと思ったことは無いのか?」」
「「愛した女性を、どうして、それだけ簡単に切り捨てられる?」とな」
スカルが悲しい目をする
「ロックさんは言った」
「「彼女が、自分以外を犠牲に誰かを呼び戻したいとは思えない」」
「「俺は呼び戻したいが、彼女が望まないのなら、俺は望まない」と」
「俺の答えは、ロックさんと同じだ」
「ロックさんが望まないのなら、俺は望まない」
「…厳しいんですね、スカルさんは」
「本当に…、厳しい…」
「…帰ろう」
「学園で、皆が待ってる」
「…はい」
秋雨達は学園に向かって、歩き出した
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