戦争阻止
北の城下町
「…完全に、戦闘態勢ですね」
町には大勢の兵が居て、住民の姿はない
「城に行きますよ」
「早く、説得しなければ」
「…そうだな」
北の城前
「失礼します」
「WGカンパニ-のクラウンです」
「国王に面会の許可を」
「申し訳ありませんが!現在は厳重警備のため、面会は…」
「こちらには、コイツが居る」
竜山が気絶しているエリムを見せる
「エ、エリム殿…!!」
「解ったなら、通して貰いたい」
「く…!!」
「隊長に連絡せよ!!」
「…戦う気か?」
「こちらには人質が…」
「我が部下、エリムを舐めるな」
「お前達程度の敵には屈しない」
「隊長!!」
「馬鹿者が」
「不審者は、見つけ次第、捕縛だろう」
「は!申し訳ありません!!」
「まぁ、良い」
「南の者か、カンパニ-の者か解らない以上、処分するわけにも行くまい」
「とりあえず、捕らえろ」
「は!!」
竜山達に、一気に武器が向けられる
「…仕方ないな」
「やるか」
城牙が構える
「待ってください、城牙さん」
「何を言ってる?」
「死にたいのか?」
「抵抗すれば、戦争を早めかねません」
「大人しく捕まりましょう」
「…良いのか?」
「殺されるかも知れないぞ」
「心配要りません」
「あの方は、そこまでバカではありません」
「?」
「隊長!抵抗の意志はないようです!!」
「…牢獄に放り込め」
「俺は、国王の指示を仰ぐ」
「は!!」
北の城、牢獄
ガァァァン!!
4人は牢獄に放り込まれる
それぞれの手に、拘束具が付けられている
「…何か、暗いね」
「それに、ジメジメしてる」
水無月が辺りを見回す
「水無月さん、そろそろ立てますか?」
「あ、うん!大丈夫だよ」
水無月を降ろすクラウン
「…捕まったが、どうするんだ?クラウン」
「このまま、死刑台に運ばれては、話にならんぞ」
「いえ、恐らく、尋問に来るでしょう」
「そのとき、ゆっくり話が出来ます」
「…それなら、良いが」
それから、数時間が過ぎた
「…来ないぞ」
「どういう事だ?」
「…解りません」
「幾ら何でも、そのまま飢え死になんて事はないと思いますが…」
「だが、いくら何でも時間がかかりすぎだ」
「このままでは、柳舞や秋雨達を探せないぞ」
「…仕方ないな」
「クラウン!出るぞ」
竜山が叫ぶ
「何を言ってるんですか?」
「不可能ですよ」
「城牙の体術なら…」
「無理だ」
「え?」
「この拘束具が外せない」
「ロシア支部の牢獄で慣れたつもりだったんだがな…」
「じゃぁ…、脱出できないのか?」
「そうなりますね」
「私の能力、使えないかな…?」
水無月が提案する
「水無月さんの能力?どんな能力ですか?」
「簡単に言うとね、高周波が出せるの」
「それで、相手の能に悪影響を及ぼすんだけど…」
「その応用で、コンクリ-トぐらいなら、割れるけど…」
「…やってみてください」
「高周波でなら、どうにかなるかも知れません」
「皆!耳、防いでね!!」
「え?拘束具で、腕が…」
水無月が、高周波を発生させる
「!!!」
バァン!!
弾け飛ぶ扉
「やった!!」
「…」
うずくまる竜山達
「…あ、大丈夫?」
「ど、どうにか…」
「ナイフが有るよ!!」
「拘束具、斬るね!!」
「お願いします…」
廊下
走る4人
「…?」
竜山が異変に気付く
「兵が…、居ない?」
「何!?」
周りには、1人も兵が居ない
「…王室に行きましょう」
「あの方の冗談に付き合ってる暇はありません」
「?」
王室
バァン!!
城牙が扉を蹴破る
「…!!」
扉を蹴破った先には、巨大な部屋と、それを埋め尽くす兵
「罠か…!!」
「いえ、違います」
「王!ご冗談は程々にしてください!!」
「あ、解るかね」
老人が、奥から出てくる
「久しぶりじゃのう、クラウン」
「お久しぶりです、王」
「しかし、良い歓迎はしてくださらないのですね」
「ふぉふぉふぉふぉ!当たり前じゃ」
「本当に、おぬしかどうか確かめたかったからのう」
老人が杖を振る
「下がれ!エリムとトリマ以外はな」
一気に兵が居なくなる
「手荒い歓迎、許してくれんか」
「脱獄できるかどうかで、判断をしたのじゃ」
「…本当に、無茶をなさる」
「まだまだ、ジョ-クは大好きじゃわい」
「本当に…、アナタは」
「で、何の用じゃ?」
「長らく、おぬしの姿を身とらんかったが…」
「少し、カンパニ-を出ていましたので」
「それより、用というのは…」
「何じゃ?」
「南との戦を、辞めていただきたい」
「戦となれば、僕達の目的も果たしにくくなります」
「おぬし達の目的のために、南との戦を辞めろと?」
「無茶苦茶を言うようになったの」
「…この戦いに意味はありません」
「ふぉふぉふぉふぉ!心配は無用じゃ!!」
「?」
「ワシとて、カンパニ-に戦の仲裁をして貰っておるばかりではない」
「政略結婚…、と言う形で、南とは片を付けよう」
「戦争の理由も、下らんことじゃからな」
「理由とは?」
「南の者が、トリマの暗殺を企んだのじゃ」
「無論、トリマが負けるはずはないがの」
「南が…」
「ワシも、そのとき怒り狂っての…」
「冷静さを失っておった」
「しかし、南は、どうしてトリマ殿の暗殺を?」
「それじゃ」
「ワシも、怒り狂って戦争を申し出たが、よく考えてみると南がトリマを殺す理由が分からん」
「それで、南の王と合ったのじゃ」
「…それで?」
「南も「覚えはない」そうじゃ」
「嘘を言っているかどうかは解らんが、あの若造が暗殺などと言う下らん事を計画するとも思えん」
「そうでしょうね」
「しかし、政略結婚というのは…?」
「うむ、トリマも年頃じゃ」
「父上!俺は結婚するつもりなど…」
「何を言うか!ワシの跡継ぎはどうする!?」
「国王!落ち着いてください!!」
エリムが2人の言い争いを止めようとする
「黙れ!お前も結婚する年頃じゃろうが!!」
「国王護衛軍の副隊長が、独身とは何事じゃ!!」
「私は結婚するつもりなど、毛頭ありません!!」
「騎士としての流儀を…」
「エリム!おぬしをワシの護衛に回したのは間違いじゃった!!」
「騎士道など、言いおって!!」
「国王!お言葉ですが、騎士道を侮辱しないでくださいませ!!」
言い争う3人
「…クラウン、あの人達は?」
「あのご老人が国王です」
「で、先刻、「隊長」と呼ばれていた彼がトリマ殿で、国王の唯一のご子息です」
「エリムさんは国王護衛軍の副隊長だったみたいですね」
「で、お前と国王の関係は?」
「昔、依頼でお会いしただけです」
「国王の趣味で話が合いまして」
「趣味?」
「はい、チェスです」
「チェスって…」
「…とりあえず、あの言い争いは止まるのか?」
「話が進まん」
「そろそろ、国王が疲れ果てますから」
「嫌な止まり方だな…」
それから間もなく、国王の息が切れだした
「とにかく…、ぜぇ…、トリマは…、ぜぇ…、結婚しろ…」
「父上、南の国王の妹殿は良い噂がありません」
「そもそも、結婚もしません」
「トリマ…、ワシの跡継ぎはどうする?」
「もう年なのですから、跡のことはお任せください」
「父上は、さっさと隠居生活でもしたらどうです?」
「この…馬鹿モンが…」
イスに座る国王
「…モミジ殿は、華麗で性格も良い」
「盗賊団とは言え、貧しい人々に優しく、悪い金持ちには厳しいと聞く」
「少しばかり気が強い方が、お前とも合うという物じゃ!!」
「ですが…」
「国王!!」
「何じゃ?クラウン」
「今、仰ったのは…」
「ああ、トリマの結婚相手じゃ」
「南の国王の妹らしいぞ」
「モミジって…」
「秋雨が…、南に!!」
「…秋雨君!!」
「何じゃ?クラウンの目的じゃから、ロクでもない物と思っておったが…」
「単なる人捜しかの?」
「そうです!」
「ならば、丁度良い」
「今度、面会の機会がある」
「一緒に来るかの?」
「はい!是非!!」
「父上!勝手に話を進めないでください!!」
「俺は、お断りです!!」
バタン!
トリマが部屋から出て行く
「全く…、いつまで経っても、ワガママじゃの」
国王がため息をつく
「エリム!トリマを…」
「失礼ながら、国王」
「何じゃ?」
「私は南に和睦の使者として、行かなければなりません」
「む?そうじゃったかのう…」
国王が首をかしげる
「クラウン!悪いが、トリマの説得に行ってくれんか?」
「もう、ワシの言葉を聞こうとせんのだ」
「構いませんが…、僕は説得の類の経験はありません」
「城牙さん!行って貰えますか?」
「俺は、説得の仕方など知らん」
「気を悪くするだけだろう」
「竜山さん…」
「結婚の良さ!教えてやるぜ!!」
「…無理ですね」
「水無月さん、お願いします」
「わ、私!?」
「ダメですか?」
「う-ん…、やってみる」
「では!お願いします!!」
「でも、出来るかどうか解んないよ?」
「説得なんて、滅多にしないし…」
「そこまで堅くなることはない!トリマの愚痴でも聞いてやればよいのじゃ!!」
「そうなんですか…?」
「ふぉふぉふぉふぉ!まだ、トリマも子供じゃからな!!」
「じゃぁ…、行ってきます」
「はい、頑張ってください」
こうして、水無月はトリマの説得に向かった
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