砂漠の国
「おい、起きろ」
水無月の頬を、軽く叩く城牙
「…ん」
「あれ?ここ、何処?」
「先刻の化け物から逃げてきた」
「クラウンと竜山は、食料を探しに行っている」
「この様な所にも、食える物は有るそうだ」
「そうなんだ…」
「だが、生で食うわけにはいかない」
「お前、料理は?」
「う-ん…、微妙」
「「微妙」って…、具体的には、どれくらいまで出来る?」
「パンをレンジでチンするぐらいかな?」
「…聞いた俺がバカだった」
「え-!これでも、爆発させないぐらいに上達したんだよ!!」
「どうやったら、爆発するんだ?」
頭を抱える城牙
(どうしたものか…)
(このままでは、生の食材で食卓を囲むことになる…)
「城牙!朗報だ!!」
「…何だ?竜山」
「町!町が見かった!!」
「コレでメシが食える!!」
「何!?本当か!!」
「ここから、そう遠くない!!」
「行くか!?」
「無論だ!!」
「行くぞ!みな…皆殺し!!」
「水無月です!!」
それから、竜山達は町へ向かった
砂漠の町
「結構、活気のある町なんだな」
「ここは、砂漠の町、ベルミノスです」
「まぁ、「ベルミノス」って名前は、使われず、砂漠の中に有る町なので、そのまま砂漠の町と呼ばれています」
「そうなのか…」
「もし、秋雨君が、あの砂漠にいたら、ここに来たはずよ!!」
「聞き込みをしましょ!!」
グゥウ~
水無月の決意を他所に、水無月の腹の虫が鳴る
「…お腹、減った」
「…食事に行きましょうか」
食事店
「いらっしゃい」
「すいません、食事、4人分」
「へい、ご注文承りました」
厨房に入り、食事の用意をする店主
「料理って、どんな物が出てくるんだろ?」
「地方によって、違いますけど…」
「ここは、主に、野菜が有名ですね」
「野菜?それは妙だな」
城牙が反応する
「水分はどうする?」
「こんな砂漠では、野菜を育てるだけの水分はないだろう」
「それが、アナタ達の居た世界との違いです」
「この砂漠の地下深くには、大きな洞窟があって、そこから水をくみ上げられるんです」
「そうなのか…」
「かなり、深い所ですが、炎で桶をジェット機並の速さにしたりして、水をくみ上げる人も居ます」
「まぁ、能力の便利なところですね」
「そう言えば…」
「クラウンと城牙の能力って…」
「俺の能力は、何の変哲もない「真」の身体能力の上昇」
「大したことはない」
「僕は特殊です」
「簡単に説明すると、魔法で魔中を呼び出す能力…、って所ですね」
「…そうだったのか」
「へい!野菜炒め!!」
「あ、どうも」
店主が野菜炒めを持ってくる
「いただきます」
野菜炒めを食す4人
「辛い…!!」
「野菜炒めって、こんなに辛かったけ!?」
「これが、この店流です」
「「厚い砂漠でのスタミナを、辛さによって付けて行け」…と言う」
「まぁ、悪くはないな」
「結構、おいしいかも…」
黙々と食べ進める4人
「はぁ-!おいしかった!!」
「ごちそうさま」
「はい、会計800円だよ」
「安いですね」
「美味い料理を安く!それが店の常識ですからね」
「あ、俺が払いますよ」
財布を取り出す竜山
「何だか、先輩と後輩の食事の雰囲気ですね」
「へい、毎度…って、お客さん!!」
「はい?」
「何?この紙切れ!!」
「こんな物、ウチじゃ使えないよ!!」
「…え?」
「あ!!」
「どうした?クラウン」
「えっと…、世界が違うと、使うお金も違ってくるので…」
「お札も硬貨も使えません…」
「単位は「円」だけど!?」
「そこまで知りませんよ」
「何、言ってるか知らないが…」
「アンタ達、旅人みたいだから、皿洗いで勘弁してやる」
「すいません…」
ガチャガチャ
厨房で皿洗いをする3人
何故か、水無月だけ接客業である
「はぁ…、こんな事なら、お金持ってくれば良かった」
「え?お金、持ってんの?」
「はい、僕も、こちら側の住人ですから」
「!?」
「ミナモもロ-ブも、トルアもそうですよ」
「校長に聞いてませんか?」
「知らなかった…」
「てっきり、校長からの情報で案内してるのかと…」
「そんな事はありませんよ」
「そこ!ペチャクチャ喋ってないで、作業しろ!!」
「あ、すいません」
「見ろ!あの嬢ちゃんを!!」
テキパキと動く水無月
「あの嬢ちゃんのおかげで、店の売れ行きも好調だ!!」
「アンタ達も、皿洗いを頑張れ!!」
「はい…」
「納得いかんな」
「どうしたんですか?城牙さん」
「どうして、あの水無月だけ、接客なんだ?」
「解ってないな!城牙は…」
竜山が指を横に振る
「?」
「良いか!?あんな美女が、オ-ダ-を取りに来てみろ!!」
「テンションUPだろ!!」
「…解らん」
「何故、解らない!?」
「あの美しさが!!」
「いや…」
「「萌え」という言葉を聞いたことがないのか!?」
「「萌え」…、そう言えば、毀棄梨が、その言葉を書いた本を読んでいたな」
「「萌え萌えBL本」だったか…」
「あの本を読んでいる毀棄梨は、最高に気持ち悪かったぞ」
「人の趣味は人それぞれ!!」
「俺の趣味は女性!!」
「故に、至高にして最高!!」
「…なぁ、クラウンよ」
「何ですか?城牙さん」
「このテンションに、俺は着いて行けるのか?」
「頑張ってください」
「先刻から、うるさいぞ!!」
「この前のガキ共と同じだな!!」
「…え?」
「アンタ達と同じように、食い逃げしようとしてな…」
「ど、どんな奴達でしたか!?」
「さぁな…、声と外見からして、3人組の男女だったな」
「男1人に、女2人だったと思うぞ」
「男はロ-ブで解らなかったが、1人の女は金髪、もう1人はモミジの髪飾りをしていたな」
「モミジ?」
「女2人の名前は忘れたが…」
「男は、名前を、あき…」
「そうそう!秋雨と言っていたな!!」
「!!」
皿と接客を放り出し、店長に食いつく4人
「何処に!何処に居る!?」
「いや、その後、すぐに店を出て行ったから…」
「もっと、詳しく教えろ!!」
「わ、解ったから!!」
「閉店まで、待ってくれ!!」
「…解った」
閉店後…
「さて、聞かせて貰おう」
「ああ、初めは、普通に店に入ってきてな」
「メシを注文した」
「それで?」
「アンタ達と同じだ」
「食い逃げ」
「う…」
「モミジの髪飾りをした女が、金髪の女を背負った男をひっぱて、店を出て行ったが…」
「男が、「流石に食い逃げはマズイ」と女を抑えてな」
「まんまと、捕まえてやったさ」
「へぇ…」
「まぁ、元々、金髪の女は意識が無かったみたいだし、捕まえるのに変わりは無かっただろうな」
「「意識が無かった」?」
「ああ、メシの間も、イスにぐったり寝たまま」
「俺が「どうした?」と聞いたら」
「「何でもないです」と言ってたな」
「そうですか…」
「まぁ、きちんとメシの分は働いていったし…」
「ウチに文句はないがな」
「…解りました」
「それでは、ありがとうございました」
「おい、ちょいと待ちな」
「?」
店主が4人を呼び止める
「アンタ達、どこから来たのか知らないが…」
「金は有るのかい?」
「いえ、無いですよ」
「それなら、WGカンパニ-に行くと良い」
「あそこなら、大抵の物を換金してくれる」
「そうなんですか!」
「ありがとうございました!!」
「例には及ばねぇよ」
笑顔で手を振る店主
「いや-、何だか良い人だったな」
「まぁ、こんな辺境の地だからこそ、皆が助け合ってるんですよ」
「それより、あの店主の情報が気になる」
「秋雨は何処に向かった?」
「さぁ?金髪の女って、たぶんGLだから…」
「モミジの髪飾りの女って、誰だろ?」
「たぶん、この世界の人じゃないかな?」
「何らかの理由で、秋雨君を連れてるんだよ!!」
「なるほど」
「…秋雨も良いが、もう1つの目的も忘れるなよ」
「柳舞の情報も、集めたいからな」
「はい!解ってます!!」
「それなら、良い」
「まぁ、今からWGカンパニ-に行きましょう」
「この世界のお金が欲しいですから」
「…そうだな」
4人はWGカンパニ-に向かっていった
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