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電車内には向かないお話

神の不在着信

作者: 奏似
掲載日:2026/04/24

12本目

「ええ……?」


アカウント名:神


①見なかったことにする

②折り返す

③晒す

④メッセージを返す


ええと……まぁ④が無難?


『……もしもし?』


うわ、既読ついた。


『はい、こちら神の代理でございます』


『いや、神て』


『ご用件は?』


『ご用件って言われても。あの……』


『はい何でしょう?』


『詐欺ですよね?』


『詐欺? いえいえ』


『じゃあ悪戯とか』


『違います』


『だって神とかいる訳ないし』


『最近は皆さんそう仰いますね。ご安心ください、神は寛容です』


『だって宗教とかヤバいじゃん』


『確かに』


『ほら』


『時にあなた、株で確実に儲かる方法があったらどうします?』


『え? いや、そんな安易なやり口で騙されませんけど』


『例えば、の話です。そもそも、確実に、という話であれば私はそんなこと存じませんし』


『いやまぁ、ホントにそんなのがあるなら儲けたいけど』


『同じことです。手段があるなら、欲望を抑えるのはとても難しい。分かります。

でも、それと神の存在は無関係です。神の喜びとは金銭で得られるものではありませんから』


『そうなんだ』


『それはそれとして』


『え?』


『あなた、騙されやすそうなので気を付けてくださいね?』


『やかましい!』


『ほら、煽り耐性低いですし』


『!!!』


『はい、深呼吸してください』


すーはー、すーはー。


『落ち着きましたか?』


ひっひっふー。


『そのネタは安直過ぎませんか?』


『その返しはひどくない?』


『予想の範囲を出なかったもので』


『もっとひどい。まぁもうどうでも。それより』


『はい』


『神の代理、ってどういうこと? これ神のアカウントだよね?』


『まぁ、ちょっと事情があるといいますか』


『事情? そもそもなんか怪しい着信あったから返信したんだけど』


『ああ、それはとんだお手数を。神に感謝を』


『その神がいないんじゃなくて……?』


『はい、そうなんです困りました』


『……いや、それ隠さなくていいの?』


『何がでしょう?』


『神がいないとか困ってるとか』


『隠し事はろくなことにならないですから、神も人も』


『深いような浅いような……で、何で神がいないの?』


『それはですね……』


『隠し事?』


『いえいえそんな。神はそれはそれは慈悲深い方でございまして』


『いや、そんなこと聞いて』


『その為、救世ノイローゼになってしまいまして』


『急性?』


『救世。あ、いえ』


『よかった誤入力』


『急性救世ノイローゼですね』


『足すな』


『言い得て妙で』


『ドヤ顔やめろ見えてないけど』


『してませんて。それよりあなた』


『あん?』


『着信があったと仰いましたか?』


『仰いましたけど』


『啓示でなく?』


『あったら怖いし』


『神託とかお告げとか聖痕とかでもなく?』


『聖痕だったら訴えるわ』


『……えぇ?』


『お前が引くな』


『いや、神を訴えるとか怖いこと仰るので』


『いきなり人の身体に傷付ける方が怖いだろ』


『それは神のなさることなのでセーフ』


『アウトだろ』


『それはさておき』


『置くな置くな』


『話を進めませんと』


『置き捨てやがったこいつ』


『神が連絡なさるなんて余程見込まれた方とお見受けします』


『いやそんないきなり言われても』


『何か解決方法はご存知ないですか?』


『ないですね!』


『そうですか、そうですよね……』


『いやそんな凹まれても。そもそもなんで急に』


『それはあなた。あなただって、周りの人が誰もあなたを信じてくれなくなったら辛いでしょう?』


『そりゃまぁ。え? いや、だからって急性ってほど急にそんななるもん?』


『はい。ここ数世紀の信仰離れは凄まじいの一言で』


『それ急性ちゃう』


『いえ、地球単位で言っても一瞬ですし』


『スケール……待って、地球単位? まさかもっと上ってこと?』


『まぁ、宇宙そのもの的な?』


『………………念の為聞くけど、どの神なの?』


『どの……と聞かれても』


『あ、やっぱ詐欺的な?』


『いえいえまさか』


『まぁ具体的にどれって言われても困るんだけど』


『そうメタいことを言われてもよく分かりませんが』


『それは分かってる奴の言い方! メタいことなんて何も言ってないし。

で、どれなの?』


『どれと問われましても。総体としての概念的な神ですので、人の解釈で語るのは如何なものかと』


『あっはいもういいです。それで、神様は今どこに?』


『ああ、今更ながら敬う気持ちを持ってくださいましたか』


『うっさい、さすがに気が引けるわ』


『神様はご自身の住まいに閉じこもっておられます』


『引きこもり?』


『はい。困ります』


『そりゃ誰でも困るだろうけど。まぁほら、神様が引きこもったなら、宴会とかでおびき出すって方法』


『その手には乗らない』


『え?』


『え?』


『急に何言い出してるの代理さん』


『いえ、私は何も。あなたの発言では?』


『……まさか、神?』


『いえ、神のスマホはこの通り私の手に。……あぁ、複数端末ログインとはさすが神』


『凄いけどショボいな神様!?』


『言い方に気を付けてください?』


『急に怖いな! いやもうそれなら扉ガンガン叩いて出てくるしかなくすとか』


『それは引きこもりへの配慮とか身の安全とか色々悪手と言わざるを得ませんがそもそも扉なんてないですし』


『ド正論。え、扉ない? どういう住まい?』


『それは、神のおわすところがすなわち住まいですから』


『それはもうホームレス』


『言い方』


『それは謝る。でもそれならさっさとそこに行けば』


『近付くなオーラが凄くてですね』


『やっぱり凄いけどショボい。言い方は謝る』


『……謝罪は受け取りましょう』


『だから怖いって。いや、そこは心を鬼にして』


『なるほど。堕天しろと仰るのですね』


『うん?』


『では、参ります』


『堕天したの? ホントに?』


『あなたの助言のおかげです』


『なんかとんでもないことした気が』


『さて、着きました』


『速いな!』


『神の代理を務めるものですから、それなりに』


『すご……』


『ああ、いえ。堕天したので、元代理、ですね』


『なんかすごくゴメン』


『お気遣いなく』


『それで、神様は?』


『それがどこにも』


『ダメじゃん』


『おや、書き置きが』


『なんて?』


『探さないでください。なるほど、これが神の不在証明』


『それ絶対意味違うからな!?』


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