【報告書ファイル_06】5/8〜5/13
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文書番号:調研議第25-050903号
提出日:2025年5月8日(木)
提出者:レプリカ調査・研究班 統括責任者
宛先:相鉄口地上部事案に関する緊急会議 出席者各位
議題:相鉄口地上部の異常拡大事案と、構造管理班への責任追及
1.事案の概要と問題の所在
2025年5月8日、急遽行われた相鉄口付近の初期調査にて、事前の想定を大幅に上回る構造の拡大および複雑化を確認した。周辺道路からのアクセスが物理的に不可能であったため、当班は急遽、地下街を経由する新規ルートを開拓・確保した。
また、地上部への進出時点で多数のレプリカの密集も確認されている。さらに前日(5月7日)より、同エリアで通信途絶となった「第13作業班(計5名)」は、現在も未だ消息不明のままである。
本件において最も憂慮すべきは、比較的、観測・管理が最も容易なはずの「地上部」でこの事態を招いた点である。これは、当該エリアを所管する構造管理班の日常的なモニタリング体制に、重大な過失があったと言わざるを得ない。
2.本会議における要求事項
本件に対し、当班は以下の3点を強く要求する。
・詳細な経緯の説明:
過去1ヶ月の観測記録、および異常検知時の初動対応に関する詳細な報告。
・管理体制の抜本的見直し:
管理が容易な地上部で事態を悪化させた原因究明と、責任所在の明確化。
・新規ルートへの予算・人員措置:
新たに開拓した「地下街経由ルート」の維持、および今後の本格調査・レプリカ掃討に向けた特別予算の優先割り当て。
被害が他区域へ波及する前に、本会議での厳正なる審議と迅速な決議を求める。
以上。
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日付:2025年5月9日(金)
報告者:ID18018(レプリカ調査・研究班)
業務内容:調査該当地区における合同任務の所感
報告本文:
調査班のID18018だ。
構造管理班からの依頼を受け、本任務は討伐班と我々調査班の合同で行われることとなった。
我々調査・研究班の至上命題は、この迷宮化現象の深淵を解き明かし、人類の知性によって事象を制御することにある。決して、筋肉で無秩序に暴れ回ることではない。本来であれば我々のみで静かに、かつ精緻な観測を行いたいところだが、安全規定の縛りにより、あの血の気の多い連中と歩調を合わせねばならないらしい。実に憂鬱だ。
討伐班の任務は「レプリカからの護衛および調査活動の補助」とされているが、彼らには目につくもの全てを物理的に破壊しようとする悪癖がある。貴重なサンプルや構造物を損なう前に、あの知性の欠片もない蛮行を止めさせてくれ。
それにしても、今回の事象は実に興味深い。管理体制に不備があったとはいえ、地上部にここまで巨大な迷宮空間が展開するのは極めて珍しいケースだ。完全に人類の観測と管理を外れてしまった『新宿駅迷宮』は例外としてだが。
添付資料として、入口付近で撮影した写真データを共有する。
しかしこの入口のアーチ……どうも記憶にあるものとデザインが食い違っているようだ。単なる複製エラーによる形状の崩れか、あるいは構造自体の特異性によるものか。
いずれにせよ、変異の度合いを正しく測定するためには、迷宮化現象が起こる以前の状態を知る者へのヒアリングが必要だろう。
この、『西口五番街』の。
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日付:2025年5月12日(月)
場所:西区避難民仮設住宅地区
記録者:調査・研究班記録係
対象者:仮設住宅居住者(30代男性・作業員)
記録名:西口五番街に関する聞き取り調査(1)
録音書き起こし内容:
『西口五番街っすか? ええ、災害前はよく行きましたよ。まだ学生だったなぁ、あの頃は。週末になるとダチとあのアーチの下で待ち合わせて、安い居酒屋で飲んだり、朝までゲームセンターで遊んだり……。いつ行っても人が多くて、うるさい街だったのを覚えてます。もう10年以上前になるんすね。
え、この写真が今の入口のアーチですか?
……うーん、オレが見てたのとずいぶん違いますね。形は似てるけど、もっと全体的に青くて、ほら、地元のサッカーチームのカラーやロゴが入ったデザインになってたっすよ。この写真のアーチは、なんていうか……サビだらけだし、もっと古臭い、オレが生まれる前の昭和のデザインに見えますね。
あんた、政府のひと? ああ、管理会社のひとか。
どっちでもいいんだけどさ……オレたちも毎日、ガレキの片付けみたいな単純な管理作業をやらされてるからわかるんすよ。迷宮なんて全然縮小してないだろって。
もうこの避難地区に入って10年たつよ。いつになったら、あんたたちの言う「復興」は終わるの?』
補足:
*西区避難民仮設住宅地区
2014年の迷宮災害発生直後に設立されたプレハブ・仮設住宅群。現在も帰還困難となった多数の避難民が居住しており、住人の多くには迷宮関連の復興作業や、単純な労働作業が仕事として割り当てられている。
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日付:2025年5月13日(火)
場所:野毛地区(非合法酒場内)
記録者:調査・研究班記録係
対象者:酒場の客(高齢男性・身元不明)
記録名:西口五番街に関する聞き取り調査(2)
録音書き起こし内容:
『おぉぉ……こりゃ懐かしいねぇ、この看板よ。間違いねぇ、五番街だろ? 文字がヘンなことになってるけどよ。なに、「複製えらー」ってやつかい? フゥン?
これは……そうだな、おれの記憶が確かなら、たしか1980年ごろだな。間違いねぇ、昭和だね。このアーチを抜けると、メインの通りが奥までズドーンと続いてる。
裏手には小さな飲み屋がひしめいて、すれ違うのもやっとだったな。しゃれた純喫茶もあったなぁ。
おれたちが若ぇ頃はな、このアーチの下には日雇いの連中やら、学生やら、夜の商売のネエチャンやら、いろんな奴が集まってたっけなぁ。
通りには焼き鳥の煙と安酒の匂いが充満しててよ。ネオンがぎらっぎらでな、この看板が夜の街を明るく照らしてたんだ。
活気があったよ。生きた人間の熱気ってやつがな。
……ほら、あんたの聞きたいハナシはしてやったぜ。なぁ、もう一杯いいかい?』
補足:
*野毛地区
かつては活気ある飲み屋街として有名であったが、迷宮の拡大に伴い危険区域に指定された。現在は立ち退き命令を無視して居座る非合法な店舗(ヤミの店)が立ち並ぶ。管理機構の目が届きにくく、下層の作業員やならず者が集まり、迷宮から持ち出された非合法な取得物(未検査の多重複製食材や密造酒など)が流通しているとの報告もある。
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