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幼馴染みの恋愛模様  作者: あおあん
永遠のパートナー

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第51話 Scene:光「元気ないな」

 まだ翼と望は寝てるから、静かに身支度を済ませる。動きやすい靴に、明るい色のパンツスーツ、髪は少し巻いてからアップにした。


「行ってきます」


 小さな声で呟いて家を出た。

 学校に行くのとも、カフェにバイトに行ってた時とも少し違う。高揚感がたまらない。


「田中さん、今日もよろしくお願いします」


 5つ年上のかっこいい先輩。

 私がこの会社のCM撮影のモデルをやっていた時に、付き添ってくださっていたマーケティング部の方。


「光ちゃん、こちらこそよろしくね」


 ここのところ、お互いに新商品の紹介で既存の納品先に営業に回っていた。私は50件、田中さんは80件近く訪問した。


「何件くらい受注取れた?」


 新商品をお店に置いてもらうのは簡単じゃない。


「私は38件置いてもらえる事になりました」

「さすが光ちゃんだね。それはすごい数字だよ!私は、44件だから、恥ずかしいけど光ちゃんの方が優秀だね」

「そんなことないです。難しそうな大手を田中さんが引き受けてくださったから……」


 本当だ。私のリストが運が良かっただけ。


「で、この次は、落とした販売店に、二人で訪問!再チャレンジね」

「はい!」


 遣り甲斐ってこういうこと言うんだろうな。

 田中さんと並んで歩くときは背筋が伸びる。私の方が背が高いけど、田中さんの姿勢の良さは遠めでも分かるくらい綺麗。


「光ちゃん、断られた理由ってメモ取ってたりする?」

「はい。お答えいただけたところは控えてあります。でも大半が、やんわりと、何となくって感じでした」

「オッケー。ちゃんとキーパーソン捕まえて話せた?代理とかもいた?」

「どうしてもキーパーソンに合わせてもらえなかった店舗が1店ありましたが、あとはお会いできました」

「優秀、優秀。今日は手始めに、その会えなかった店舗から再訪問始めようか」

「はい!」


 開店直後の店舗にお邪魔する。

 ここの店長は50代の女性だけど、いつも20代の社員さんが対応してくださる。


「おはようございます」

「あ、月岡さん、田中さんも。おはようございます」


 私たちの名前を覚えてくださってて嬉しい。


「店長は、今日も……こっちには来ないと思いますけど」

「お忙しいところ、お邪魔してしまってすみません。次回はいついらっしゃるか分かりますか?」

「えっと……私は、よく分かりません」


 前と同じだ。会えないことははっきりと言ってくれるのに、会える約束をしようとするとはぐらかされてしまう。


「山本さん、弊社の商品ってお手に取ってもらったことってありますか?」


 田中さんが、店頭のサンプル品を指さした。


「はい。以前、ファンデーションとアイブロウペンシルを使っていました」

「以前ってことは、今は他者さんのを使われてるんですよね?よろしければ、なぜ使用を止めたか伺えないでしょうか?」


 こんなに突っ込んだこと聞いていいのか、と、田中さんから学ぶ。


「実は……店長が……」


 私の事をチラッと見る山本さん。背中に冷たいものが走る。


「ここでの事は誰にも言いませんし、私たちは本当の事が聞きたいだけですので、個人的に何を言われても気にしません。どうか正直に言っていただけませんか?」

「はい……実は、店長が月岡さんの事が、あまり……得意じゃないみたい……というか……」

「何があったのかご存じですか?」

「いいえ。知りません。ただ月岡さんが来られても、お通ししないようにと言われてまして。それで、御社の商品も、本来であれば社員割引のような制度があるんですが、対象外にされたので、他の会社の物を使ってみようかな……って、本当に、すみません」


 目を瞑って頭を下げる山本さんを、「そんなことしないで!」と必死に食い止める田中さん。

 それを呆然と眺めているだけの、私……どうしよう。


 店を出て、ファストフード店でコーヒーを飲んだ。


「気にしないでね。もともと100%なんて目指してないし。光ちゃんが嫌われてるのは意外だったけど、光ちゃんが悪いわけじゃないしね」

「でも……」

「切り替えていこう?あそこはもう訪問リストから外すね。大丈夫、まだまだ行くとこあるし、気にしない、気にしない!」

「はい……」


 それから田中さんと再び営業に訪れた先は、新商品のコーナーを新しく設けてくれるところばかりだった。


「上出来だよ!そうそう、光ちゃんの本採用だけどね、前向きに検討してもらえるよう、上には話しているからね。近々、正式に決まると思うから、これからもよろしくね」

「本当ですか!ありがとうございます!」


 嬉しかった。でも、本決まりになるまで皆に言うのは待とうと思った。





 へとへとになって帰ると、望と翼が夕飯を作って待っててくれた。


「お疲れさまー」

「ただいま」

「シチューだよー!温めるから少し待っててねー」

「ありがとう」


 望がキッチンに走って行った。


「元気ないな」


 翼には何でも見透かされる。今日のこと話そうかと一瞬迷う。でも、嫌われててショック受けた、なんていい歳して言えないよ。


「ちょっと疲れただけ」


 ソファに座ってスマホを見る。仕事中、一度も見てなくて、望がくれてたメッセージを今見た。


「ごめんね、シチューって送ってくれてたの気づいてなかった」

「いーよー。送ってから、ネタばれしちゃったこと、後悔してたのー。見てなくてよかったぁ」


 颯からもメッセージがあった。


『今日も、お互い頑張ろうぜ』


 会いたい。

 会って、今日のことを話したい。そう思った。




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