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幼馴染みの恋愛模様  作者: あおあん
カップルとして

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48/59

第48話 Scene:望「その通りですわ、翼さん」

 簿記の再試勉強と、ドラマのセリフを覚えるのを同時にやるけど、あんま上手くいかない。

 ドラマはちょっと過激なシーンがあるけど、まあまあ大きな役で、準主役って言えるんじゃないかなぁ。すらすら覚えられてるし、もう、この子にキャラを乗っ取られそう。


「順調か?」

「役作りはね」

「簿記は?」

「ちっともだよぉ……」


 困ったなって顔して、翼が向かいに座った。


「この役になり切って勉強しろ」

「はー?」


 望がもらった役は、お金持ちだけど複雑な家庭に生まれて、必死な思いで上京してきたのに、親が作っちゃった借金取りに追われて、身売りさせられるみたいな、とんでもなく悲惨な人生を送っている可愛そうな子なのだ。


「この子は上京して、仕事に就いたんだろ?そこは会計事務所ってことにしよう、な?」

「うん」

「雇ってくれた事務所の社長さんの役に立ちたくて、必死で簿記を勉強するんだ。分かったか?」

「うん」

「ほら、分かったらさっさと勉強しろ!」


 なるほど。私はケイコ。苦労はしてるけど、せっかく自由になったのよ。一人で生活をしてゆく為、雇ってくれた社長への恩返しをする為、会計の知識を身につけるのよ!望じゃないの!


「ちょっと、図書館に行ってくるー」

「わざわざ?」

「ここだと、望が出て来ちゃうから、やりにくいー」

「送って行こうか?」

「いいえ、結構ですわ。ご親切にありがとう」


 この子なら、こう言うはずですわ。

 紙袋にテキストとノート、筆箱を入れて出掛けますのよ。


「行ってきますわ」

「行ってらっしゃいませ」


 翼が真面目な顔で設定を合わせてくれた。





 やってることは同じなのに、頭への入り方がまるで違いましたわ。

 この調子でいけば、きっと、試験にも合格できるに違いありませんわ。


「ただいま戻りました」

「お帰り、望、図書館で勉強してたんだって?」

「光さん、私の事はケイコさんと呼んでくださいます?」

「あ、光、わりぃ、話し合わせてやって」


 小さな声で翼さんが助言をしてくださいましたわ。


「ケイコさん、もし分からないところがあれば、聞いてくださいね」

「光さん、感謝申し上げますわ。あの私、今とても腹ペコですの……お夕食は何かしら、翼さん」

「ハンバーグとパスタでございます」


 それは、それは、願ったり叶ったりの大好物でございますわ。


「ケイコさん、手を洗って、テーブルについていただけますか?」

「はい。翼さん」


 光さんが既に座っていらっしゃる。


「ケイコさん、よろしければ、生い立ちをお話しいただけますか?」

「ええ、光さん。私、資産家と呼ばれる裕福な家庭に生まれましたの。ところが、父は女性関係にめっぽうだらしがなく、何人もの後妻さんが私の継母となり、家はしっちゃかめちゃかでしたのよ。先日、ようやく上京して、今は、小さな会計事務所にアシスタントとして働き口が決まったばかりですの」


 ナイフとフォークがきちんと並んでますわ。一体、どれをどう使うのかしら……


「それで、簿記の勉強を頑張っていらっしゃるのですよね」

「その通りですわ、翼さん」


 向かいにいらっしゃる、翼さんと同じように食べましょう。一番遠くのフォークを使うのね。食事って、本当はとても肩がこるのね……いつもの……いいえ、以前の私では考えも及ばなかったほどに、食べにくい食べ物だわ、ハンバーグって。


「ところで、ケイコさん」

「はい、なんでしょう光さん」

「いつ頃、望さんにお戻りになられるの?」

「よくぞ聞いてくださいましたわ。私、実は、もうとっくに限界を越えていますのよ。ただ、戻り方を知らないままなってしまいましたので、どうしたら良いものかと……困りましたわ……」


 翼さんが、「ほら」と両手を広げてこちらを見ていらっしゃいますわ。


「おいで」


 フォークとナイフを放り出して、飛び込む。


 ドン


 あ、勢い強かったかも。


「ごめん、痛かったー?」

「平気だ」

「あ、戻れたー!」

「「「あははは」」」

「なかなか様になってて、驚いちゃった。望には見えなかった、よね?」

「ああ、役に入り込んでたな」


 光がお箸を持ってきてくれた。


「こっちの方が食べやすくない?」

「ありがとー、光、大好きー!」




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