第47話 Scene:望「そうだよ。俺は酷い彼氏だ」
「めっちゃ、キラキラしてるっ!」
指で摘まんで見てたら、だんだん柔らかくなって溶けだしてくる。だから急いで翼にも光にも見せてあげる。
「すごーい!綺麗だねぇー!」
「私も同じのここにあるから」
滑って落とす前に、口に入れちゃわないと。
「うぅんっまぁー!」
「「あははは」」
「なんで笑うのー?なにがおかしいのー?」
「いや、別に」
スマホで動画撮ってる翼に、にっこりする。
「ほら、光もー」
顔近付けて、一緒ににっこり。
颯もいたらよかったのになって思うけど、きっとこれは言っちゃダメなやつ。
「食い終わったらシャワー浴びて、俺の部屋に来て」
翼が言った。ひゃぁぁぁ、だ・い・た・ん!
今日の為にセクシーなパジャマなんて用意してないから、いつもので悪いけど……ノック、ノック。
「入って。そこ座って」
「おじゃましまーす」
「何だそれ。望、なんか勘違いしてない?」
おお、なんか大人な雰囲気ですね、翼さん。
「ちょっと、これ見て」
タブレットを渡される。どんなプレイですか?
「これやる?」
翼さんのお好みとあれば、私はどんなプレイでも……
「あ、お仕事?!」
「そうだけど、何だと思ってたの?」
「それは……望の口からは……ちょっと……」
タブレットの文字をさっと見る。それから、詳細を読んでいく。
「これは、さすがに……」
またキスシーンがある。でも、今回のは強引なやつで、無理矢理押し倒されるパターンだ。
翼ならどんなプレイもオッケーだけど、知らない人にこんなんされるの嫌だなぁ。首を横に振った。
「だよな。でも返事は明日でいいから、一晩考えろ」
「どうして?」
「断るのは自由だけど、お前が断れば他の誰かにこの役が渡る。次にいつ、お前に役のオファーが来るのかは分からないし、そもそもオファーが来るという保証は無い」
「そうだね」
「俺と付き合う前の望なら、きっとお前はこの話に飛びついてた、と、俺は思う」
「……」
ほんとだ。翼の言うとーりだ。
「分かった。明日まで考えてみるねぇ」
「おやすみ」
「おやすみー」
眠れない夜って本当にあるんだ。
ずっと同じこと考えてて、何度自分に聞いても、出てくる答えは同じで、どうしていいか分からなくなった。望は次のお仕事したい。でも翼に嫌われたくない。翼は望があの役をやっても、望のこと嫌いになったりしない。でも、あのお仕事はやりたくない……
光や颯に相談するのも違うよな。やりたいか、やりたくないかの二択だ。
自分で決めなくちゃ。望の夢なんだから。
コツコツ
「どーぞ」
翼が入ってきた。
「眠れたか?」
「ぜーんぜん」
「ふっ、そっか」
「笑うなんて、ひどーい」
「そうだよ。俺は酷い彼氏だ」
「うそー、ひどくないよ。ごめーん」
「いや、酷いよ。望にあの仕事の事を言わないって選択肢もあったんだ。『こんなのは止めとけ』って言う事も出来た。望が悩むの分かってて、話したんだ」
「ひどくない。ちゃんと話してくれてありがとー」
「で、どうする?」
急に泣きたくなった。
「やるって言ったらどう思うー?」
「望らしいな、ガンバレって思うよ」
「望のこと嫌いになるかも知れないー?」
「それはないな」
「でも、翼も辛いよねー?」
「少しはな」
「少しだけー?」
「ちゃんと慰めてくれよ。俺も望が気持ちが悪い思いしたら、一生懸命塗り替えてやっから」
「一緒に頑張ってくれるのー?」
「そりゃあそうだよ。望の夢を叶えるのが俺の夢だからな」
我慢できなくて、目から涙がこぼれた。
翼が優しくキスしてくれる。大丈夫。翼と一緒に頑張る。
この前テストも終わって、もう学校に行く日も少なくなってる。
バイトや仕事があったりするし、4人で並んで授業を受けられるのって、あと何回だろう。
「ねえ、あれ望のじゃない?」
先生が黒板に学籍番号を書いている。
「ほんとだー」
「ここに番号を書かれた生徒は、授業後、前に来るように!」
「だって。みんなは書かれてないのー?」
「「「ない」」」
みんなが待っててくれるから、急いで前に行く。
「せんせー、なんですかぁ?」
「はい、君、テスト不合格」
「えー!そつぎょーわー?」
「なので、再試の機会を設けました。来週、ここでテストするから来るように。ちなみに、再試のチャンスは今回のみだから、落とすと卒業出来ないからね、気を引き締めて対策をしてきなさい」
望を含めて、5人の生徒が赤点取った。
「テスト、2点足らなかった」
しょんぼりして報告。
「はあ?何やってんだよ!あんなに勉強したじゃんよ!」
「颯、そんなこと今言っても……再試いつなの?」
「らいしゅー」
「いきなり単位落とさないだけ、いい先生だよな。望、まだ覚えてるだろ?」
簿記の授業は、望はもともと苦手なのに、めっちゃ頑張って、もうこれ以上は無理ってくらい勉強したのに。
「もう、全部忘れちゃったよぉー」
「う、そだろ?」
「望、女優になるから、簿記は出来なくてもいーや」
「駄目だ。簿記は出来ても出来なくてもいいけど、一緒に卒業出来ないのは絶対に駄目だ」
「つーばーさー」
そうだよね。一緒に卒業したい。みんなのいない学校に、一人で簿記の単位取りに大学通うなんて……ゾッとするよぉ。




