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幼馴染みの恋愛模様  作者: あおあん
カップルとして

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45/59

第45話 Scene:颯「振り返らないっ!」

 ガチガチに緊張している。寒いからじゃない。

 望はガチガチ歯を鳴らしているが、こいつは単純に寒いからだと思う。

 一刻も早くチョコを返却しようと言うことになり、俺たち4人は、俺が春から勤める会社にやって来た。翼と光が少し離れたところで、車から見ている。


「お呼び立てしてすみません」


 林下先輩がやって来た。嬉しそうに手を振って小走りで近付いてきたが、望を見て顔色が変わった。


「何のご用?」

「これ、返しに来ましたー」


 望がそう言って、皺が寄った小さな紙袋を差し出す。


「なんであなたが?彼女でもないでしょ?」


 先輩は受け取らない。


「はいー。ただの親友ですけどぉ、颯が迷惑がっててぇ、可哀想だから助けに来ましたー」


 望が先輩に殴られることを想定して、少し身構える。


「風間君にあげたの」

「いらないって、言ってますー」


 望はしゃがんで、ちょこんと紙袋を道路に置いた。


「行こー!」


 俺の手を取って歩き出す望。後ろから刺されるんじゃないかと心配になる。


「振り返らないっ!」


 望がいつになく低い声で言って、俺の手をぐっと握った。小さい手だから、余計に強く、痛いほどに感じた。


「ほら、走るよっ!」


 望は走っているつもりらしいが、俺の早歩きで充分対応できた。

 翼の車の前に来たところで、光が後部座席のドアを開けてくれた。


「お疲れさま」

「ああ。全部、望がやってくれたんだけど」

「うん。見えてた」


 前を見たら、望は運転席の翼の上に座っている。

 こっちをちらりとも見ないで、翼に抱き付いたまま一心不乱に何かしゃべっている。


「あんな風に甘えることが出来たら、私も違ってたのかもしれない」

「あんな風に甘えられない光が、俺はたまらなく好きななんだけど」


 精一杯、肯定したつもりだ。光は今のままでいい、光は変わる必要はないし、俺も変えようとはしない。だから、また、そのままの光と付き合いたい。


「ねぇ?!」


 望の声が飛んできて、我に返る。


「ごめん、なんつった?」

「由香先輩、こーんな顔してたよね?」


 両手で目尻をグイーンと吊り上げている。そっくりで、笑ってしまう。


「そうそう、そっくり」

「ひーかーりー、もう大丈夫だよ。悪い虫は、望が追っ払ってきたからー」

「うん。どうもありがとうね」


 翼がひょいと、望を助手席に座らせ、車を出す。


「なんか食ってくか?」

「ファミレスー?」

「いや、久しぶりに俺んち来いよ。一緒に焼きそばでも作らないか?」


 光の方を見る。頼む、断わらないでくれ。


「そうしよっか」


 笑顔で言ってくれて、ホッとする。

 きっと大丈夫だ。俺は光を嫌いになれないし、光の心の整理がつけばまた元に戻れる。





 焼きそばを食い終わって、うだうだしてたら、翼がコートを着て、望にもコートを羽織らせた。


「じゃ、俺たち行くわ」

「えー?どこにー?」

「お前が決めろ、昨日の埋め合わせをさせてやる」

「あっ!恋人たちの日ー!」


 望がいそいそと靴を履いて、先に出て行った翼の後を追う。


「見送りくらいさせろっつんだよ」

「ほんと。なにあれ……ふふ」

「翼ってさ、あんなに望にデレデレなの?」

「そりゃ、もう、すごいよ。ずっと好きだったのは知ってたけど、まさか、あんななっちゃうとは思いもよらなかった」


 笑いながら話す光、久しぶりだな、この感じ。


「ずっとって、どんくらい?」

「えっと、たしか、小学2年生からだって言ってた」

「え。そんな?知らなかったな」

「颯は鈍感だからね」

「望だって気付いてなかったんだろ?」

「望も鈍感だからね」


 光が手慣れた手つきで、コーヒーをドリップしてくれた。


「バイト先、どうなの?田中さんだっけ、光の仕事評価してくれそうなの?」

「うん。最初はついて回るだけだったんだけど、この前、一人で納品先に伺ってね、先方さん、私のことCMで見たって覚えててくださってね、新商品の紹介をしたら、追加で店頭に置いてもいいって言ってくださって、それを田中さんが『すごい』って褒めてくれてね、社内にいた他の社員さんにも……って、あ、興奮してしまった……」


 赤い顔をして俯く光。俺、ちゃんと光の話聞いたの初めてかも、と改めて反省。


「いいよ、もっと聞きたい」

「そう?それでね、なんかリストみたいな紙を渡されてね、それ納品先の会社と住所がビッシリ書いてあるんだけど、上から順に全部回って、新商品を置いてもらえないか営業することになったの。結構な数があるんだけど、田中さんと手分けしたら2週間で回り切れるんじゃないかって、ただ行くだけじゃ駄目だから、新商品を置いてもらえることが目的だからさ、頑張ろうって思ってるの」


 こんなにしゃべる光を見たことが無い気がする。そんなに楽しいんだな。輝いて見える。




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