第44話 Scene:望「いいよ。貸してやる。慰めてもらえ」
どうしたんだろう。なにがあったんだろう。翼の部屋で翼と寝てる。
ちょっと、顔を触ってみる。あ、起きた。とりあえず、朝のちゅー。
「どうして、望、ここにいるのー?」
「覚えてないのか?」
「えっとぉ。乾杯したとこまでは覚えてるー」
「あのなぁ……」
やっぱりなんか変。
「あのさぁ、光はー?」
「いるよ」
「光がいるのにぃ、私たち一緒に寝たのー?」
「まぁな」
こんなこと、今まで無かったのにぃ。
「エッチしたぁ?」
「昨日はしてない」
「えー、恋人たちの日なのにぃー?」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「へへぇ。ごめーん」
翼がぎゅってした。きっと何かお話があるんだな。
「話していーよ」
「一体、どこから……乾杯してから、覚えてないのか?」
「……う……ん」
「おっけ。じゃ、最初っからいくな。昨日、チョコレートケーキを食べた後、颯が由香先輩から、チョコレートをもらったって言い出したんだ」
「えっ!受け取っちゃったのー?」
「そう。受け取っちゃったの」
ひとつ目のガーン!颯の大バカ者!
ふたつ目のガーン!チョコレートケーキ食べたこと覚えてない!
「で、どうなったのー?」
「光が走って出て行った」
「いえで?!」
「ああ。そんで、颯が追って行った」
「ひぇぇぇぇ!ドラマチックだぁー」
「光に追い付いて二人で颯んちに行こうとしたら、由香先輩が家の前で立ってたらしい」
「ひゃぁぁぁ!ホラー!」
「そんで、揃ってここに泊まっているというわけさ、ちゃん、ちゃん」
パチパチパチ!素晴らしい、のかな?でも、拍手!
「ふたりも一緒に寝てるのぉ?」
「いや。光は自分の部屋。颯はいつもお前が寝てる部屋」
望がいつも寝てるのは、ここのおばちゃんとおじちゃんの部屋なのだ。
「仲直りしたのかなぁ?」
「いや、違う気がする。さて、今日はどうなるのかな……」
翼が立ち上がった。
「一緒にシャワー浴びるー?」
「今日は止めとく」
翼が屈んでキスしてくれる。
「もっと一緒にゴロゴロしたぁーい」
「俺もだけど……離れられなくなりそうだから、止めとく」
「ええぇー」
これ以上粘っても今日の翼はつれない感じだから、諦めようっと。
昨日の服のまんま、リビングへ行く。
「颯、起きてたんだねー」
「ああ、お前の寝床取っちゃってごめんな」
「それは大丈夫だけどー。望の方こそ、昨日のこと何にも覚えてなくてごめんねー」
「なんも覚えてないの?」
「乾杯だけー」
へへへ、と笑いながら、颯を観察。思ってたより普通で、何考えてるか分からない。
でも、ここで一人で座ってたんだもん、光と一緒じゃないって事は、そーゆーことだよね。
「なんで由香先輩のチョコ受け取っちゃったのー?」
「受け取ったつうか、レジに置いて行っちゃったんだよ。いらねえっつったのに」
「あ?それじゃ落とし物みたいなー?忘れ物的なー?」
「そう思ってもらいたい」
それじゃぁ、光が走って出て行った意味が分かんない。
「光にちゃんと言ったー?」
「聞いてくれないんだよ」
「そっかー」
光よりも颯の方が可哀想になってきた。背中をとんとんする。元気がないときに、翼が私にやってくれる魔法みたいなもん。
「そのチョコ、今、持ってるー?」
「鞄に入ってる」
颯のリュックをごそごそしたら、ぐちゃって潰れたチョコレートの紙袋が入ってた。
「まさか……!」
「なに?」
「望たちがおねだりしたのより、高いやつー!」
「食っていいよ」
「いらないよー。返しに行こーよ」
ビックリした目でこっちを見てる颯、ハトみたい、おもしろー。
「レジに落ちてましたよ、って返そーよ?」
「望……一緒に来てくれるか?」
「もちろんだよー」
颯が望をぎゅってした。まずいって!翼が見てるかもしれないし!手をバタバタさせて、翼を見た。
「ひゃぁ、颯!翼が見てるからぁ……!」
「いいよ。貸してやる。慰めてもらえ」
あ、そっち?翼がいいなら、望も協力するのは嫌じゃないよ。望じゃ、ちょっと小さいけどね、颯の背中に手を回して、なでなで。
「ありがと……元気出てきた」
「でしょー?頑張ってこー!ねー?」
「よっしゃ。じゃ、颯が元気がマシマシになる朝ご飯を作るぞ」
「望も手伝うー!」
翼のとこへダッシュ。颯といえども、翼が嫉妬しかねないもんね。「大好き!」そう言って、翼にぎゅーっ。
「望のこと貸してくれてありがとな」
「ああ。今回だけな」
翼って太っ腹。そんなところも大好き!




