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幼馴染みの恋愛模様  作者: あおあん
カップルとして

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42/59

第42話 Scene:颯「そうやって、尻に敷かれてろ、ご馳走様でした!」

 就職先は決まったし、いつもの仲間とは気まずくなったし、コンビニのバイトで時間を潰す。

 普段は授業のない午後から夜にかけて入ってたけど、深夜とか早朝とか、時間をずらして入れるだけシフトを入れてもらう。


「風間君、ありがとうね」


 店長の奥さんに感謝される。


「ほら、もう一人のバイトの子は……ちょっとお店の雰囲気、変わっちゃうじゃない……?」


 以前、望をナンパした金髪だ。翼を怒らせて以来、大人しくしている。


「いらっしゃいませ……林田先輩……」

「朝から居るなんて、珍しいね」

「はい。もう、授業も消化試合みたいなもんなんで。こんな早くに出社ですか?」


 まだ、6時になってない。


「まあね、私が担当してるのアメリカの製品だから、朝早いの。ヨーロッパ組は夜遅いよ」

「そうなんですね」


 サンドイッチと飲むヨーグルト、先輩の朝ご飯なんだろう。


「じゃ、お仕事頑張ってね」

「ありがとうございます。先輩こそ、お仕事頑張ってください」


 グレーのパンツスーツにヒールの低いパンプスを履いて、コツコツと足音を立てて、先輩は出勤した。


 まさか、コンビニで接客をしたのを「二人で会った」なんて言われないよな?望なら、そういうこと平気で言ってきそうだけど……そもそも、別れたんだから、あの約束も無効といえば無効か?彼氏じゃない俺が、誰といつ会おうが、彼女じゃない光には関係ないもんな。


 朝の品出しは、考え事をするのに、最適な作業だった。





 深夜から早朝のバイトを終え、そのまま学校に行く。

 正直、会いたくないけど、そうもいかない。どんな顔して行けばいいのか分からないから、この疲れMAXで寝不足ハイテンションの方が、思いきれる。


「おはよ」

「はーやーてー、おはよー」

「双子は?」

「就職課行ってる。もうすぐ来ると思うよー」

「ふーん。お前、就職どうすんの?やっぱり、芸能関係?」

「そりゃあ、もちろんやりたいけどさー。就職とかそーいうんじゃないじゃん?業界的に?いつお仕事もらえるか分かんないから、フリーランスぽいって言うのかなー」


 なるほど。こいつなりに考えてるんだな。


「光は何やってんの?」

「自分で聞けばー?」

「じゃぁ、いいよ」


 そう言えば、光が望に話していたのを何となく聞いてただけで、光がどんな仕事をしたいのかちゃんと聞いた事が無かった。俺の話を聞いてもらいたいと思うばかりで、光の話を聞こうとして無かったんだな。また一つ、反省点が増えた。


「あ、おかえりー」

「おはよう、颯」

「ああ、おはよう」


 本当は顔を見るのも辛いけど、俺ばっかり凹んでるのもダサいからやせ我慢する。


「今朝、林下先輩がコンビニに来たけど、別に会ってたわけじゃねぇから」


 腹いせにぶちまける。


「あー、颯ってばぁ、意地悪なこと言ってるー」


 俺から見れば、お前らの方が意地悪なんだよ。


「朝からバイト入れたの?」

「ああ」


 光と一緒に登校しないんだから、別に構わないよな。


「体壊さないように、気を付けてね」

「ああ」

「光ってば、優しー」


 ホントな、光ってば優しい。振った男に優しい言葉をかけてくる、優しくて悪い女だ。

 息苦しい。思ってることと、口から吐く言葉が全くリンクしていない、この感じが、息苦しくてたまらない。早く帰って寝たい。


「授業が終わったら、ちょっと付き合ってくんない?」


 珍しく翼が誘ってきた。


「悪いけど、昨日寝てないから、帰って寝るわ」

「少しだから」





 こんな女子ばっかの人だかり、マジで勘弁してくれよ。


「なんだよ、お前ひとりで来いよ」


 チョコレートの甘ったるい匂いと、St. Valentine's Dayという看板が至るところに掛かってる。こんなピンクと赤の花柄な空間に、俺は耐えられる気がしない。


「俺たちで買わなきゃなんないんだよ」

「はあ?」

「望に頼まれてんだよ」

「勝手にやってろ!」


 翼は俺の腕をしっかりとホールドして離してくれない。


「ぷっ!お、ま!」


 よく見ると、翼の顔は真っ赤で、額から汗を流している。


「恥ずかしいの?」

「当たり前だろ!」

「だからって俺を道連れにすんなよ」


 どうやらお目当ての店があったようで、いろんな店が集まったイベントスペースの、長い行列に並ぶ。周囲の女子たちにジロジロ見られる。


「俺行くわ」

「だから!俺たち、二人で買って来いって言われてんの!」

「望にだろ?そうやって尻に敷かれてろ、ご馳走様でした!」


 くっそ、力強ぇな。振りほどける気がしない。


「光にも」

「え?」

「光からも頼まれてる」

「俺に買えって?」

「そういう事」


 もう逃げないという意思表示で、両手を挙げた。翼の力が抜けた。


「分かってんだろ?光だって、お前の事が嫌いになったわけじゃないんだ。ただ、一人で考える時間が必要だってだけだろ?」

「それが……たぶん、俺、よく分かってないんだ。何で一緒に居たら駄目なんだよ、って光のことが不思議でならないんだ。こんなのって変じゃないか?俺がおかしいのか?」


 翼は困った顔をしただけで、俺の問いには答えてくれなかった。

 それから、スマホの写真とショーケースを見比べながら、間違えないように慎重にお姫様たちが所望するチョコレートを買った。まさか、こんな小さい箱なのに7千円もするなんて。俺らの姫様たちは我儘で贅沢が過ぎるぜ。




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