第31話 Scene:光「何て言うか……恋してる、じゃない?」
まただ。
望が颯の手を引っ張って連れて行ってしまった。へばりついて、こそこそと話している。
「そんな嫉妬しなくても大丈夫だろ」
翼に励まされる。
「だけど……」
「俺も頑張ってるから、落ち着けよ」
颯を好きだと言った望が、ちゃんと想いを伝えようと頑張っているんだものね。
邪魔しちゃいけない。それは分かっているけど、嫉妬してしまう。この気持ちはどうにも押さえきれない。どうしてもイライラしてしまう。
授業が始まる。
望が離れて席に座るようになったから助かった。隣にいたら、質問攻めにしてしまいそうだもの。
「ひーかーりー、午後さ、お買い物に行かない?」
「いいよ」
「クリスマス会の準備しよーよ」
もうそんな時期か。
「いいね。何か計画してるの?」
「みんなでホームクリパ!今年は颯んちじゃなくて、光んちでやっていーいー?」
「楽しそうだね」
なんだかんだと言い逃れをして、ここ数年、イブは颯と二人で過ごしてきたけど、今年はみんな一緒か。それもありかな。颯と一緒にいられるだけ、まだマシだ。
「俺はコンビニのバイト入ってっから、遅れていくわ」
「分かったー」
望の頭の中は、きっとこういう楽しいイベントのことでいっぱいなんだろうな。
次から次へと、それっぽいアイテムが籠に追加されていく。
「飾りは望が組み立てるからねー」
「オッケー、よろしく。料理はどうするの?」
「ピザ!あとー、チキン!」
「デリバリーは時間読めなさそうだから、3人で取りに行こうか」
「そうしよー!」
順調に決まっていく。
明後日の週末に開催する、小さなクリパ。4人で過ごせる、最後になるかもしれないホームパーティー。私ってば、なにを期待しているの?
家に帰ったら、見慣れないパンプスが玄関に並んでた。
「「ただいま」」
望と大きな袋を抱えて入る。
「お母さん」
「おばちゃーん!」
久しぶりに母を見た。翼とケーキを食べている。
「どうしたの急に?」
「大学病院の研究職の更新に必要な書類がこっちにあってね、取りに来たの。明日には戻るわよ」
「おばちゃーん、望ね、ここんちの子になってるよー」
「ようこそ。望ちゃん、翼から全部聞いてるわよ」
ちゃんと報告してたんだ。私はちっとも連絡とってなかったから、翼の意外な一面に驚いた。
「じゃー、今日は望、自分んちに帰るねー」
「ありがとう。急だけどそうしてくれる?ケーキ食べてから行ってね」
「わーい!」
翼が望を送って行って、お母さんと食器を洗う。
「あなたたちが楽しそうにやってて何よりだわ」
「うん。卒業も近いのに、就職先は決まってないんだけど……楽しくやってる」
「今だけよ。しっかり楽しみなさい。それにしても、望ちゃんは相変わらず可愛いわね」
「そうだね。望はちっとも変わんない」
「そう?相変わらず可愛らしいけど、変わったわよ」
「え?どう?」
どこが変わったの?私にはさっぱり分からないけど。
「何て言うか……恋してる、じゃない?」
「ああ」
颯にね。だけど、それも前から変わってないし。
「翼のことが大好きって顔に書いてあって……本当に、可愛いわよね」
「翼?」
颯の間違いじゃない?
「そうそう。翼もまんざらでもなさそうだし、上手くいくといいわよねぇ」
「お母さん、勘違いしてない?」
翼は昔から望が好きだけど、望は颯が……
「あら、気が付いてないの?あの子は絶対、翼のことが好きよ」
混乱する。そんなはず、なく……ない……?……か……?
思い出がフラッシュバックする。最近の望の言動、態度、そうかも。
「お母さん、ありがとう」
「ケーキ?どういたしまして」
それから翼が帰って来て、3人で一緒にご飯食べて、お父さんの近況とかも聞いたはずだけど、頭の中はずっと望のことでいっぱいだった。
翌日、学校で颯に聞いてみる。
「最近さ、望となに話してるの?」
「別に、大した事じゃないけど……」
「翼のこと?」
「……」
颯が両手で頭をグシャグシャと掻いた。
「バレたか!やっぱり、分かるよなぁ?!露骨に態度に出すなっつってんのに、あいつ……!」
言葉を失う。いつからなの?望ったら、颯に翼のこと相談してたの?
「どうしたらいいと思う?俺さ、望にアドバイスくれって言われて、もっとセクシーにしたらどうかとか、ボディタッチを増やせとか教えてやってるんだけど、翼にはちっとも通用しねえんだよ。望はさ、望なりに頑張ってるんだけどよ……あいつはその辺のポテンシャルが低いっつうか」
「嘘でしょ?!」
「嘘じゃねえよ。いいとこまで行ってると思うんだけど、今一つなんだよ……なにが足らないと思う?助けてよ、光」
ごめん、望、ごめん、本当にごめんね。




