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幼馴染みの恋愛模様  作者: あおあん
踏み込む勇気

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第29話 Scene:翼「お嫁さんになる……」

 最近、望が、近い。特に、授業中。


「お前、何でこっちに座んの?」


 左利きの望が俺の右側に来ると、ノートを取り辛い。


「え?黒板がよく見えないからー?」


 その理屈は、お前が教室の一番左端に座った時には分かる。

 だけど、今日は右半分の並びで、一番右に座ったら、見辛いだろう?これなら左に座った方が中央寄りになって、見やすいんじゃないか?解せない。


「光となんかあった?」

「なんかってー?」

「喧嘩とか」

「してないよー」


 だよな。授業の時、なぜかこっち側に座ること以外は光とは普段通りに見える。


「寒いのか?」

「大丈夫ー」


 そう言えば、最近、少し肌の露出が増えた気もする。


「鳥肌立ってるぞ、上に着るの持ってないのか?」

「持ってるよー」


 なんだそりゃ。ぶるぶるしながらノートに文字を書く望の左手が、俺の右腕に当たる。


「冷たいじゃねえか」


 咄嗟に、腕を握る。細い二の腕。


「羽織れよ」

「持ってなぁーい」

「はあ?」


 よく分からん。


「俺の着るか?」


 さっきまで着てたシャツを渡そうと思ったら……ひったくられた。


「着るーっ!」

「寒いんじゃねえか」


 笑える。こいつの、ちょっと意味不明なところ好きだ。可愛いと思ってしまう。


「お前、前見て書けよ」


 どうやら、先生の書いた黒板じゃなくて、俺のノートを必死で写している。


「大丈夫。翼のノートの方が、スッキリしてて分かり易いからー」

「俺、全部書き写してないから。分かってる部分はわざわざ書く必要ねえし」

「え?そなのー?」

「だから、お前はあっち見て書いた方がいいと思うよ」


 ボールペンで前を指す。


「うーん」


 何を考える必要があるのだろうか。


「翼が分かってるなら、望は分かんなくてもいーから、やっぱりこれでいくー」

「意味が分からん」

「望が分からないところは翼に聞くからぁ、翼が分かんないところは望に聞いてねー?」

「あ、ああ?」


 ほらほら、という風に肘を突っつかれて、黒板を書き写せとせっついてくる。


「真面目にやってー」

「はいはい」


 こうして俺は、これまで書かなかった「分かっている部分」もノートに書くようになりましたとさ。





 授業が終わり、4人で談笑。


「翼に、お買い物に付いて来て欲しいーの」

「俺?光じゃなくて?」

「うん、翼がいいー」


 珍しく、真剣な顔だな。


「何買うの?」

「それはぁ、まだ言えなーい」


 光と颯を見たら、二人が頷いた。


「「いいよ」」


 二人がいいなら、俺は構わない。


「わーい」


 望が腕を組んで俺を引っ張る。


「颯に見られたらマズくないか?」

「颯?なんでー?いーの、いーの」

「いいのか?」


 可愛い雑貨屋のようなところに連れて行かれた。


「どれがいいと思うー?」


 エプロンを手に取り、迷っている。


「料理できないのに、エプロン買うのか?」

「料理ができるようになる為に、エプロンを買うのー」

「なんで?」

「お嫁さんになる……」


 お嫁さん?結婚を意識してんのか?相手は颯か?だから本人には見せたくなかったって事か?軽く眩暈がする。


「……役がくるかも知れないからー」

「ああ、役作りね」


 焦らせるなよ。


「今日は夕食、翼の当番でしょ?私、手伝うからー」

「せっかく買ったエプロンがしたいだけだろ?」

「そうじゃないもん。お料理できるようになりたいもーん」

「熱心だな。役作り、応援するよ」


 ハードルが高いっつってんのに、献立は餃子になった。


「洗うのはできるよな?」

「おうー!」

「念の為言っとくけど、ひき肉は洗わなくていいからな」

「おうー!」


 買ってきたニラと、冷蔵庫にあったキャベツを使うことにした。

 俺がひたすら刻む。洗い終わった望は、見てるだけ。


「これボウルに入れて」

「おうー!」

「ひき肉入れて混ぜるから」

「手でー?」

「そう」

「やだー」

「やだじゃねぇ、やれ」

「翼にやって欲しいー」

「洗う以外もやれるようにならないと、いい役来ないぞ」

「ぶーっ」


 気持ち悪いとわめく望を写真に撮りつつ、最終工程に移る。


「丸い皮を手の平において、真ん中に具を乗せるだろ?そしたら、あとはこうやるんだよ」


 やって見せるしかない。


「こうやるって、どうやるのー?」

「だから、こうだよ。重ねてちょいって摘まむ感じ?」


 上手く言えない。


「できる気がしなーい」

「いや、お前ならできる。なんてたって最高のお嫁さん役になるんだからな」

「おうー!」


 望はおだてると、どこまでも木に登る。


「できたー」


 できてないけどな。


「上手くなってきたー」


 そうは思えないけどな。


「完璧ー!」


 には、ほど遠いけどな……


 こうして俺と光は、包まれていない餃子の皮とあんをバラバラに食べることになりましたとさ。




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