第28話 Scene:光「なに、光、ミスコン出るの?」
「月岡さん、ちょっといいかな?」
「……うん。なに?」
普段あまり話さない同じ学科の子たちに呼び止められた。
「今度、ミスコンあるじゃない?それに出てみないかなって、思って」
「え?私が?」
「そうそう、月岡さん有名だし。ほら、綺麗だし」
「えっと。どうかな」
正直、興味はない。けど、すぐに断るのも感じ悪い気がしてしまう。
「考えてみて?ね?お願い」
そう言われると、断れない。
「うん。ちょっと、考えさせてもらうね」
どうやって断ろうかな……
「ねぇねぇ、光、今なに話してたのー?」
「望、おはよう。ミスコン出ないかって、誘われて……」
「え?すごーい!出なよー!光のステージ見たーい!」
「そんなこと言ったって……」
「俺も見たいかも」
「颯まで……」
ま、結果が残せるとは思わないし、颯が見たいって言うなら、それもありかな。
家に帰って、夕飯の支度をしていたら、望がタブレット持って話しかけてきた。
「これ!見て!去年のミスコン、見っけたー!」
「調べてくれたの?ありがと……って、なに?これ!」
水着で歩いてる。嘘でしょ?
「なに、光、ミスコン出るの?」
「つーばーさー!あのね、光が今日、スカウトされたんだよー」
「断ろうかと思ってるけど」
そんな恥ずかしいの絶対イヤ。
「えー、もったいない、きっと、優勝するよー光なら!」
「優勝はしなくても、思い出作りにいいんじゃない?」
「なに言ってんの翼まで……」
「いろんな審査があるよー!私服チェックだってー!はあー?!」
望が画面を食い入るように見てる。それを見て私も驚く。
「この人の私服、すごいね!下着が見えちゃってるよー?!」
「やり過ぎじゃね?ま、男はこういうの好きだからな」
「そうなのー?ブラジャー見えてるのが好きなのー?」
望がT シャツの首をグイーンと肩まで引っ張って、ブラ紐を出した。
「おい!お前はいいんだよ!」
「男は、こういうのが好きなんでしょー?」
「人に寄るよ!」
翼が動揺してる。面白いから、観察を続ける。
「光が下着で歩いてもいいけど、私のはいらないってゆーのー?」
「え……。まあ、そういう事だよ」
「ちょっと、私、別に下着で歩くわけじゃないし。普通の服着てる人は居ないの?」
「うーん……なんか、みんな……セクシー路線な感じー?」
ホントだ。けっこう過激。
「だろ?こういう格好はセクシー路線の人が向いてるの。お前は……ほら、メルヘン路線で行くんだろ?」
「あ、そうだったー。ブラじゃなくて、パンツ見せるんだったっけー?」
「おい!違うだろ!」
翼ってば、望とこんな話してんの?うけるんだけど。
「やっぱり断るよ。私そんなのやりたくないし」
「颯に聞いてきたらー?さっき、見たいって言ってたよねー?」
「……うん」
「颯んちに行って相談してきなよー。今日はバイトないって言ってたよー」
望も来るのかなって気になったけど、翼とゲームを始めたから、ついて来なさそう。
「じゃ、私、夕飯の前に行って来ようかな。タブレット借りてくね」
「どーぞー」
「行ってら」
いつから颯の家に来るのに、こんなに緊張するようになったんだろう。
心臓がバクバクしてしまう。
チャイムを鳴らす。
一応、チャットでやり取りはしてたけど、鍵も持ったままだけど、勝手に開けていいのか分からなくて……
「よっ」
ドアを開けてくれた。
「急にごめんね、ちょっとミスコンの相談しようかなって」
「どうぞ、どうぞ」
以前と変わらない部屋、颯の匂い。抱き付きたい。
「望が去年の動画を見つけてくれてね、これなんだけど……」
お気に入りのクッションと、私の定位置。隣に颯が座って、顔を近付けてくる。
「はあ?!何これ!やり過ぎだろ!」
「でしょ?思ってたより過激で……」
「ダメだよ!これは絶対ダメ!出ちゃダメだ!」
良かった。反対してくれた。
「うん。やっぱり断ろうと思う」
目が合った。息が止まる。キス……する……?
「望が見つけてくれて良かったじゃねえか」
颯が立ち上がって、キッチンに行った。
「メシ食ってく?」
「ううん、向こうで二人がお腹空かせて待ってるから」
「はは。かあちゃんみたいだな」
「望がいると、ホント、そんな感じ」
自然と距離を取られたことが、地味にショック。
颯は最近、望との時間も多いし、颯が望を好きになってても仕方がない。
「じゃ、帰るね」
「送ってくよ」
大丈夫って思ったけど、もう少し一緒にいたいから「ありがとう」って言った。




