第27話 Scene:光「俺、今日ついてる」
「望、颯と何話してたって?」
「内緒だってさ。私には話してくれなかった」
「なぁ、光、お前の目算あってんのか、俺、心配になってきたんだけど」
「そんなに簡単じゃないと思うよ。時間は必要だと思う」
今日は授業の後、私のCM撮影で、翼がスタジオに連れて来てくれた。
午後の授業に望と颯の二人を残すのは、正直、不安でしかないのだけど、こればっかりは……
「月岡光さん入られまーす」
「よろしくお願いします」
「まだ、お時間ありますので、控室でお待ちください」
そう言われて、翼と引っ込む。
「望は積極的に颯に仕掛けてるように見えるけど、まだ、告白はしてないのか?」
「そうだと思う。颯は鈍いから、望が言っても気づいてない可能性があるけどね」
私は、望との『バンド内恋愛禁止』の約束を破って、こっそり颯と付き合ってきた。
望がバンドの活動が終わると同時に、颯に告白すると言うので、それを待っている。
「仲はいいよな?一緒に帰ってるし、こそこそしてるようなところもあるし」
私の双子の兄、翼は望が大好きだ。しかも、昔っから。
「うん。昨日の感じだと、私に遠慮して、颯に気持ち言えずにいるのかも、とも思うよね」
「だから、ぎゅってするのも俺なのか……」
「そうでしょ。私の前で、颯に抱き付くわけにはいかないもんね」
私たちの溜め息は止まらない。
「俺は恋愛対象外、だよな」
「でしょうね。ずっとそんな距離感じゃん?今更、急に恋人って雰囲気でもなくない?」
「でも、俺さ時々、すげぇ懐かれるんだけど。あれ、なんで?」
「警戒されてないんでしょ?ただ、甘えられてるだけじゃない?」
「あんなの二人の時にやられたら、颯は確実に持ってかれるぞ?」
「嫌な事言わないでよ……」
ペットボトルのお茶を握る手に力が入る。
いくら颯が私のことを好きだと言ってくれても、望の気持ちに気付いたら靡かないとは限らない。
「翼、もっと、頑張んなよ」
「お前が望が颯に告白するまで見守ろうっつったんだろ?」
「そうだけど……」
望のことだから、もっと早く行動に移ると思ってた。
こんなこと口にするのは憚られるけど、望が颯にきちんと振られれば、諦めもつくだろうし、そのタイミングで翼が慰めれば、きっと望の気も変わるだろうって……
「月岡さーん、お時間です」
「はーい!」
「じゃ行ってくるね」そう言って、翼にペットボトルを渡す。
「頑張ってな」そう言って、送り出してくれる。翼はなかなかいい男だよ?と、望に言ってやりたい。
家に帰ると、驚くべきことに望がご飯を作って待っててくれた。
麻婆豆腐とサラダが用意されている。
「一人でやったのか?」
翼ってば……顔がにやけてるよ……
「えっとぉ、ホントのこと言うと、颯に手伝ってもらったー」
「あ、そっか」
がっかりし過ぎだよ。ま、私も同じくらいがっかりしてるけど、ね。
「あのね、見てー。これはね、一人で作ったよー」
ポテトサラダ?
「おぉ!お?ずいぶんとゴロゴロしたジャガイモの……触感を生かして作ってくれたんだな?……これってジャガイモしか入ってないのか?」
「そーそー、ポテトっぽいのが美味しいからー。ねー?光?」
「うん。私も好き」
あまり勘ぐったら、また喧嘩になるかな。でも、聞かずにはいられない。
「どこで作ったの?颯んち?」
「ううん。実はね、ここで、さっきまで……勝手に使って、ごめんね?」
「それは構わないんだけど……颯は、帰ったの?」
「うん。バイトあるって、コンビニ行った。一緒に颯に会いに行くー?」
「私と望が?」
「もー遅いかぁ」
照れくさそうにキッチンに立つ望が腹立たしい。
私のいない間に、二人で料理してたなんて、内心穏やかではいられない。
「私、欲しいものあるから、買ってくる」
「えー今からぁ?」
「暗いから、俺が付いて行くよ」
「じゃぁ、望も行くー」
みんなで行ったら意味ない。ていうか、望に付いて来てほしくない。
「望はお風呂入って待ってて」
「でもぉ……」
「すぐ帰って来るから」
翼に手間かけさせて申し訳ないと思ったけど、一目、颯に会いたかった。
私のいない間に、望とどんな進展があったのか確認しなくちゃ。
「車出すよ」
「ありがと」
表の駐車場に翼を待たせて、颯のいるコンビニに入る。
嫌いな金髪のバイトが、一瞬、こっちを見た。
「光?」
「あ、いた」
「買い物?」
「そう」
……なに言うか考えてなかったな。
「また、オレンジジュース?」
「そう」
「はい」
100%のをくれた。
「もしかして、俺に会いに来てくれたのかもって、期待しちゃった」
目頭が熱くなってきた。
「会いに来た」
「本当か?」
まだ、信じてて大丈夫?望より私の方が好きって言ってくれる?
「本当」
「じゃ、お会計は俺が担当させてもらうよ」
笑いながらレジに行く。
「望のジュースはいいのか?」
「いい。お料理ありがとう、ね」
「ああ、望が手伝えってうるさいから、仕方なく、な。勝手なことして悪かったな」
「大丈夫。楽しかった?」
「え?望とのクッキングが?ないない。ありゃ、楽しいとは言えない、大変なだけだったよ」
「ふふふ」
「光の笑顔、ゲットー。俺、今日ついてる」




