第25話 Scene:望「そっか。怖い思いしたね」
もお!翼ってば、今日は実家帰れとか、月岡の家に泊まりに来ていいとか、言うのが急なんだよ。また充電器取りに帰んなくちゃじゃん……でも、あっちに泊まれるの嬉しい。急いで帰ろっと。
「のっぞみちゃーんっ」
「あ」
名前なんだっけ?コンビニの金髪。
「なにしてるの?」
って言いながら、近付いてきて、「お家に帰るの」って言ってる途中に、チュッてされた。
なに、急に、そっちこそ、なに、してんの!?!
「ひゃーっ!やだー!ひゃー!」
「あははは、可愛い反応するなー」
はぁー?なに、笑ってんの?全然、おもしろくないんだけどっ!
「ひどー!やだー!」
嫌がってんのに、私に抱き付こうとしてくる。嫌だってば!ホントに嫌だっ!
そしたら、体がドンッってなって、金髪がこけて、私は翼に抱きとめられてた。
だけど……その手、ちょっと、おっぱいなんだけど……って、ちっちゃいから分かんないかもな。
「なにすんだよっ!」
金髪が怒ってる。怖いから翼に抱き付く。ふぅ、安心。
翼の方が大きいもんねー!強いんだもんねー!べーっ!
「そっちこそ何してんだよ」
げ。こわ。翼なんか、いつもと違うね?ものすごい怖いね。
「翼?」
上見たけど、こっち見てない。私の肩抱くの、めっちゃ力入ってる。
「これ、デビューしたてのうちの新人なんで、訴えますけど」
「はあ?」
「公然わいせつ?ってか暴行罪?」
「なに言ってんだよ、何もしてねーよ」
「携帯よこせ」
「はあ?」
「いいから、携帯出せよ!」
翼、めっちゃ怖い。もう、顔見れないから、ぎゅってしたまま目瞑る。
私をお腹に抱えたまま、翼は携帯いじって返したっぽい。
「もう、こいつと関わらないように」
「うぜぇ」
金髪は行ったのかな……翼が、頭をポンポンしてくれた。
「遅れてごめんな」
「うん……」
手を繋いで来た道を戻る。
「なんで、家に帰ったんだ?」
「ケータイの充電器」
「そっか、悪かったな、買ってやるよ」
「え?いーの?」
わーい!大事にする!翼からのプレゼントだ!わーい!
「そんなに嬉しいの?」
「嬉しくないよぉ……」
「え?」
「さっき、チューされた。ここー」
本当は、もっとほっぺの真ん中の方だったけど、唇の横を指さした。
「翼がもうちょっと早く来てたら、チューされなかったと思うよー」
「ごめん」
「ここー」
指でむぎゅって押した。
「はいはい」
翼がチュッってしてくれた。
「わーい。もう平気だよー」
「それはよかった」
へへー。翼がほっぺにチューしてくれた。嬉しい。
「なに、にやにやしてんだよ」
「べつにー」
充電器を買って、月岡家に帰ったら、光がいた。
「遅かったね」
「翼がチューしてくれた」
「おいっ!話を端折り過ぎなんだよ!」
「翼がおっぱいもんだ」
「も、揉んでねーだろ!手が当たっただけだ!」
なんだ、おっぱいってことは分かってたんだ。
「へえぇ、そんなことになってるのぉ?」
光が嬉しそうに聞いてきた。
「そうなのー。金髪に絡まれたけど、翼がすっごく怒ったんだよ、ほんと、すっごく怖く!」
「えっ、大丈夫だったの?」
急に不安な顔になった。光、そんなに心配しなくてもへーきだよ。
「大丈夫だよぉ。翼がすぐに来てくれたからー」
「そっか。怖い思いしたね」
最初は怖かったけど、後からいい思いもいっぱいしたよ。
「今日の夕飯当番私なんだけど、手伝ってくれない?」
「いーよー!私が当番の日も作るー?」
「「あ、それはいい」」
翼と光が両手をパーにして、バイバイみたいに手を振った。
「揃った。双子だねー」
「「「あははは」」」
颯もいればいいのにな。そしたらみんな揃うのにな。
「なに作るのー?」
光に聞いた。
「言っとくけど、こいつ、なんも出来ないよ」
翼が私に親指を向けて言った。
「うん、大丈夫、知ってる」
光ってば、ひどいぃ……
「お好み焼きを一緒に焼かない?」
「わーい!お好み焼き大好きー!」
「翼、悪いんだけど、ホットプレート出してくれない?」
「おっけ」
それから私がキャベツ洗って、光が刻んで、私は水切って、光が粉の準備して、私が混ぜて、光が卵割って、私はひたすら混ぜて……
「いい匂いがしてきたな」
風呂上がりの翼!いつの間に?……かっこいい!俳優さんみたい!
「食べよっか。なに飲む?」
「オレンジジュースがいいー!」
「ごめん、ないや」
「そっか……じゃさ、颯に言って、買って来てもらおうよー!」
え?私、変なこと言ったかな?どうして賛成してくれないの?
「いいんじゃない?俺、途中で颯と合流するわ」
そう言って、翼が髪の毛ビチョビチョのまま出て行った。
「呼んでもいーよね?みんな揃った方が楽しーよね?」
こんなこと、光に聞くの変だよね。
「いいんじゃない?」
怒ってるの?嬉しくないの?光ってば、ちっとも笑ってない。
「望は颯がいた方がいいんでしょ?」
「う……ん」
だって、みんな一緒の方がいいに決まってるよね?




