第21話 Scene:颯「嫉妬を煽るんだよ?これくらいするよー」
俺と望は、光を嫉妬させるための作戦を決行している。
まずは、教室の席取りだ。
左利きの望はいつも一番左の奥に座る。その隣に光、俺、翼の順で座る。
「ほらー!早くしないと、光たちが来ちゃうよー」
「分かってるよ」
望にせっつかれながら教室に入って、長い机の一番奥から四席を確保する。
望がいつも通りに座って、俺が隣に座る。右の二席に鞄を置いて確保する。
「なんか、意地悪してるみたいじゃね?」
急に気が咎め始めた。
「仕方ないでしょー。もう、見ない方がいーよ」
「そうだな。光の顔は見ないようにしよう」
望とノートにいたずら書きをして過ごす。
昔から好きだったゲームキャラを思いつく限り描いていく。
望の絵が下手過ぎて、普通に面白い。
「「おはよう」」
双子が揃ってやって来た。
「お、おはよう」
きょどる俺。
「おはよー」
いつも通りの望。
「……」
この間、つれぇ!
どけ、って思ってるよな?ここは光の指定席だもんな?
つい、体が動いて、立とうとしてしまった。
「まだ、描き終わってないよー」
そう言って、望に腕を捕まれた。
俺が席を譲ってしまわないように、引き止めてくれたその力が、思いのほか強くて驚いた。
「あ、ああ」
また着席する。なんだか……こえぇ。
「光は、そっちに座ってよー」
知れっと言いのける望……女優やってんな。まじ、すげぇ。
「分かった」
冷たい光の声がして、俺の右隣に座った。
(サンキュー)
口だけで望に伝えたら、望がにっこり笑ってこっち見た。
たぶんだけど……俺、怖くて右側が見れなかったけど、この望の笑顔、光にも見えたよな?
ドキドキドキドキ
ちっとも授業が頭に入ってこない。
右隣が気になって、さっぱりそっち向けないのに、光がどんな顔してるか想像できてしまう……地獄だ。
授業が終わり次第、望を連れ出した。
「なあ。ちょっとやり過ぎじゃねえか?」
「嫉妬を煽るんだよ?これくらいするよー」
「そっか……」
このまま流れるように、作戦パート2に移行する。
「この辺でいっか」
普段は4人で一緒に過ごす授業の合間の時間を、俺たち2人で過ごす。
「どこいるのぉ?って連絡来るかなー?」
「来る……と思うけど」
信じたい。連絡くれるよな?光は、俺と望が消えたの許せないよな?
キーンコーンカーンコーン
俺の願いは虚しく、次の授業が始まる鐘が鳴ってしまった。
急いで教室へ向かう。
目立つ双子だから、どこにいるのかすぐに分かる。
2人が並んで座ってる……さっきと同じように、俺と望が並んで座れるように、予め左側の席が空けられてた。目の前が真っ白になる。
「ほら、行くよー」
望に腕を組まれて連れて行かれる。
座る。
無言で。
耐えられるかな……
この作戦、合ってるのか?上手く行ってるのか?
『このあとどうする?』
望にノートに書いて見せる。
『また家で』
と返ってきた。
チラッと見て、小さく頷く。
今日は、みんなで一緒に帰ろう。
4人で一緒に、翼と話しながら帰りたい。
と、思っていたのに……
「俺たち今日ちょっと行くとこあんだわ」
授業が終わるなり、そう言って、双子はいなくなってしまった。
「思ってたのと違ったねぇー?」
「ああ」
結局、望と二人で帰っている。
コンビニでお菓子を買って、家で作戦を練り直すことにした。
「明日も学校だよねぇ、続けるー?」
「どっちが正解なんだろうな」
「望にも、分かんなーい」
鍵を開けて、望を部屋に入れる。
「今日、帰ったらさぁ、光のこと、よーく観察しとくねー」
「頼むよ」
チャカチャカチャーン
望の携帯から派でなメッセージの着信音がした。
「あー、ダメになったー」
「なにが?」
「今日は、自分ちに帰れって、翼からー」
「そっか」
「ここ、泊ってっていーい?」
「いいわけねえだろ!」
「けちぃー」
「真面目に考えてくれよ!」
「考えてるんだけどぉ……よく分かんないんだもーん」
お菓子をこぼしながら頬張って、本当に考えてくれてるのか?
「翼を味方につける、とかー?」
「これ以上、光を刺激しない方がいい気がする」
「そんな気、望もちょっとするー」
気が変になりそうだ。光が俺のことを好きだって言ってくれてて、今は付き合うのはできないけど、俺、待ってるって言ったのに。こんな……いくら作戦とは言え、光を裏切ったみたいで、とてもじゃないけど耐えられない。
「もう、いいよ」
「なにがー?」
「光の嫉妬煽っても、あいつが可哀想だ」
「作戦、ちゅうーし?」
「そう。作戦、中止だ」
望を帰して、携帯を片手に悩む。
謝ったら、正直に話したら、光は許してくれるだろうか。
いつも光が座っていた窓の近くに、いつも光が抱いてたクッションを抱いて座る。
どうしてだよ……会いたいよ……




