第18話 Scene:望「興奮してなかった、と、思う」
「ねぇねぇ、光と仲直りしたのー?」
「どうだろ。仲直りした、のか?」
この前から、颯はずっと、光とやり直したいって言ってる。
「今日ずっと、一緒にいたんでしょー?」
「うん。でも彼氏じゃないって言われた」
「え!なんでぇー?」
「こっちが聞きたいよ」
2個目のアイスを食べよっと。
「でも、好きなんでしょー?」
「俺はもちろん好きだよ。光も俺が好きだって」
「えー、じゃーなにが問題なのぉー?」
「分かんね。俺、光が何考えてるか、さっぱり分かんねえんだわ」
「困ったねー」
颯も2個目のアイスを取った。
「望は?翼のこと好きなの?」
私が好きなのはあんただよ?
「そうじゃないけど。翼ってほら、何しても怒らないってゆーか」
「そうだよな。特にお前には、な」
「つい、甘えてしまったよー」
「じゃ、付き合わねえの?」
「だって、私たち、想像つかなくなーい?」
小さいプラスチックのヘラを咥えて、ん~って上を見る颯。
「翼は、お前のお父さんって言うか」
「おとーさん?!」
「保護者みたいって言うか……」
「ほごしゃ?!」
「飼い主のような……」
「え。私、ペットなのー?」
「そういうとこあるよ」
「ガーン!」
まさか、私ってば、女としてみられてないの?
「颯もそう思ってるのー?」
「ってか、俺が、そう思ってるんだな。ははは」
ちょっと!笑い事じゃないよぉ!
「颯は、いつから光のこと好きなのー?」
「中1くらい」
「そっか。私のことはー?」
「望は……可愛すぎる」
「可愛すぎるのダメなのー?」
ちょっと嬉しいんだけど。
「小動物?子猫みたいな、そんな感じ?」
「な、に?!」
「俺、光みたいな『女』っぽいのが好きだからさ」
「そっかー」
いつ告っても、ムダだったんだ。
光が約束破ったとか、そういう問題じゃない。
「俺さ、光にフラれた時さ、望に隠し通せる気がしないからって言われたんだよ」
「私に?隠す……」
「そもそもお前は鈍感だろ?」
あんたに言われたくないんだけど。
「3年もバレずに来たんだから、これからも問題ないって……俺は思ったんだけど、光がどうしてもって」
「ふーん」
「でさ、今こうして、お前にバレてるのに……やり直そうって言ったら、まだ駄目って言うんだよ」
「光がー?」
「な?何考えてんのか分かんないだろ?」
たぶん私が颯を好きって言ったから、気にしてるんだろうけど。光も颯が好きなら、そう言ってくれればいいだけなのに。
「お前は?なんで翼とキスしたの?」
「知らない俳優なんかと初めてなんて嫌だったんだもーん」
「なるほどな」
「翼にはキスなんてよくありそうだから、私もその他大勢の一人にしてって言ったのー」
「そしたらなんて?」
「好きにしろってぇー」
なんか、急にアイスいらなくなっちゃった。
「でも、いい感じだったんだろ?」
「優しかったけどぉ……」
「ん?」
「ほら、なんて言うのー?」
「ん?」
「興奮してなかった、と、思う。ほら、それ……」
そう言って、颯のアソコを指さした。
「こら」
軽くぶたれた。
「だって、私、ペットなんでしょー?」
「もしかして言い過ぎたか?気にしてる?なんかごめん」
すごい焦ってる。颯って分かり易いところが好き。
「明後日さぁ、授業ないから、映画行かない?この前始まったラブラブ、チュッチュのやつー」
「光も誘っていいか?」
え。やだ。
「嫌そうだな」
「あー、顔に出ちゃったー?」
「そのまんまな。そんなに光のこと許せない?」
「許せないって言うかぁ……」
颯と二人がいいもん。
「俺、実は、光と見ちゃったんだよな、その映画。だから翼と行けよ」
なんで!あんたに翼お勧めされる筋合いないし!
「翼は忙しいって言ってたもーん……」
「んなこと無いって、お前が誘えばぜってー来るよ」
「でもぉ……」
颯と行きたいんだもん。
「な?そうしろよ」
もう!プンプン!颯ってばヒドイんだから!
颯に送ってもらって家に着いた。
「望ちゃん、夕飯は?」
「食べるぅ。先、シャワー浴びるねー」
私、別に、光から颯を奪えるなんて思ってないし。
でもずっと好きだったから、ショックって言うか。ガンバってみたっていーじゃん?
それに本当は……光がこのことを秘密にしてたのが一番ショック。私たち大親友だと思ってたから。
頭ん中、いろんな事でごちゃごちゃだから、いっぱいシャンプーする。
「ああ、いー匂いー」
翼の首の匂いを思い出した。
つん、とした男の香水。いつもあれだ。
「ペット」
颯に言われたこと思い出す。
「ま、いっか」
夢が叶いつつある。
自分で頑張っても出来なかったデビューが、棚ぼたで叶った。ありがとー、光。
「光がばっくれた」
翼の声を思い出す。
撮影後のキスがよかった。
背中ぽんぽんしてくれた。
ご飯食べて、ベッドに飛び込む。
「あー疲れた」
翼からメッセージが来てた。
『次の撮影、明後日、10時に迎えに行く』
どうせ、颯とのデートは出来ない運命だったか。
『よろしくー』って返す。
おかしいな。キスしちゃったからかな。なんか今は翼のことで頭がいっぱい。気になって眠れないかもって思ったけど……そんなこと全然。すぐにぐっすり眠っちゃって、目が覚めたら、もう遅刻寸前の朝だった。




