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幼馴染みの恋愛模様  作者: あおあん
双子の思惑

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第16話 Scene:翼「も、いっかい、いい?」

 光が消えた……あいつ!

 仕事に穴開けやがって……!

 急ぎ、望に電話する。


「翼?どぉしたのー?」

「光がばっくれた。テレビドラマ出るか?」

「出る!出るに決まってるー!」


 そうくると思ったよ。二つ返事の望が『らしくて』良いと思った。


「今どこ?」

「コンビニー」

「どこの?」

「学校の近くー」

「オッケ。迎えに行くから、今から送る台本読んどけ。よく読んどけよ!」


 車を走らせる。光の説教は後回しだ。どうせ居るところは分かってる。


「おーい!ここだよー!」


 望がジャンプして手を振ってくれたから、すぐに見つけられた。

 停車するなり、助手席に乗り込んでくる。

 こいつの、こういう積極的なところが好きだ。


「しゅっぱーつ!」

「あいよ」


 携帯で台本を読む望。


「分かってると思うけど、キスシーンだぞ」


 俺は、あえて今日の撮影シーンの台本しか送っていない。


「キスシーンの先もあるねー」

「ああ、体も触られる。大丈夫か?」

「なにがー?」

「いや……何って、初めてじゃないのか?」


 好きな女のファーストキスを目の前で知らない男にくれてやる、俺の気持ちにもなって欲しいよ。


「仕事のキスなんてノーカウントですぅ」

「へいへい」

「それに、初めてじゃないしー」

「そうなのか?」


 信号で止まって望を見た。

 その瞬間、目の前に望の顔がきて……唇が、触れた。よな?


「怒んないでねー」

「……」

「翼にはキスなんて珍しいことじゃないでしょー?その他大勢の一人ってことで、大目に見てぇ」

「いいのか?」

「えー?」

「颯じゃなくてよかったのか?」


 望は、う~ん、と言いながら腕を組んだ。それから、ピンと人差指を立てて、閃きましたのポーズをした。


「だってぇ、颯、ここに居ないしー」

「そうだな」

「それにぃ、颯は光が好きだしー」

「それもそうだな」

「かと言って、初めましての俳優なんて嫌だしぃ……!ここはもう、消去法でー!」

「消去法ね」


 望が俺の顔を覗き込む。


「利用してゴメンねー」


 思わず笑う。


「好きにしろ」





 望を連れて関係者に頭を下げて歩く。


「すみません。月岡が体調を崩して病院に行かせましたので、花里を代役に使っていただけませんか?」

「え?この子?」


 ニコニコと立っている望は、光とは全くイメージの異なる女性だ。


「ま、時間が無いから、今回はしょうがないけど、こんなこと許したって知られると配役の担当として舐められるからさ、他言は無用ね」

「はい。ありがとうございます」


 望と小さくガッツポーズをした。


「ありがとー、翼!優秀なマネージャーだねー」

「おお、サンキュ」


 着替えを済ませ、名前が呼ばれ、ホテルっぽい一室がセットされた撮影スタジオに入る。

 望と、見たことが無い俳優が向き合っている。


 あいつ、あんなに、色っぽかったか?

 さっきまで、隣でぴょんぴょん跳ねてた小動物が、異様に女っぽく見える。


「はーい、カット!オーケーでーす」


 キスシーンからの服に手を突っ込まれるまでのページが一発OKだった。

 何度もやらされなくて良かったと、胸を撫でおろした。


「ねぇねぇ、上手に出来てたー?」

「おぉ、正直、驚いたよ」

「わーい、褒められたぁ」


 今日の出番はこれだけなので、先に失礼させていただく。

 駐車場で車に乗り込み、シートベルをしたところで、望に手を捕まれた。

 一旦、エンジンを切る。


「どうした?」

「も、いっかい、いい?」


 返事を待たずに、望が俺に近づく。

 助手席から身を乗り出し、運転席の俺の上に跨がって座った。足を開いて、向き合ったまま、顔を手で挟まれて、さっきよりずっとキスっぽいキス。


「なんかぁ、さっきの人の気持ち悪いのが残っててー」


 望のTシャツから手を入れた。

 さっき触られたところをなぞっていく。


「塗り替えてくれてありがとー」

「どういたしまして」


 照れくさそうに、俺に抱っこされてる望。コアラみたいだ。


「他に何かして欲しいことは?」

「もうちょっとだけ、こうしてたいー」

「はいはい」


 そう言って、背中をぽんぽんしてやる。

 夢だった仕事とはいえ、好きなことだけ選んで出来るわけじゃないよな。


「こんなこと、お願いして悪かったな」

「そんなことないよ!光のばっくれに、ちょー感謝だよー!」


 ムキになった顔が可愛い。


「私、もっとすごいシーンのオーディションだって受けたことがあるんだよー」


 初耳だ。


「どれも落っこっちゃったけど、覚悟はとっくに出来てたんだよー」

「そっか」


 ぽんぽんを追加してやろう。


「だけど、自分じゃどーしても掴めなかったチャンスを光と翼がくれたー。ありがとね、ちょー感謝だよー!」


 そう言って、望は俺のほっぺにブチュッと唇を押し当てた。




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