表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染みの恋愛模様  作者: あおあん
双子の思惑

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/59

第15話 Scene:光「あのね、あのね……」

「お前さ、酒強くないんだから、気を付けろよ」

「はい」

「俺が居なかったら、何されてたか分かんないんだぞ」

「はい」


 うるさいな、なんて言ったら殴られそう。


「いつも近くに居られるとは限らないんだから、ちゃんと自分で気を付けろよ」

「はい」

「本当に、分かってんのか?」

「はい」


 もう、何時間も同じこと言われてる。

 いい加減、私だって分かってるから、早く終わって欲しい。


「それじゃ、車出すぞ」

「はい、お願いします」


 テレビドラマともなると、さすがに関わるスタッフさんの数がケタ違いだ。


「月岡光さん入られまーす」


 大きな声で紹介され、拍手で迎えられた。

 もちろん主役なんかじゃない。

 ヒロインの妹役で、セリフは少しあるけど、そんなに出番は多くない。


「よろしくお願いします」


 一礼して控室に行く。


「それじゃ、ここから撮りますんで、準備の方、お願いします」


 首にいっぱいストラップを下げている人に言われ、確認する。


「え……ここから?」

「だってさ。何か問題?」

「ページ順に撮るんじゃないんだね」


 いきなりキスシーンからとは思ってなくて、面食らう。


「大丈夫か?」

「大丈夫」


 そうは言ったけど、大丈夫じゃなくなってきた。

 さっき挨拶した、見たことあるような無いような俳優さんと、いきなりキス……無理くない?なんだか気分が悪くなってきた。


「翼、悪いんだけど、炭酸水買ってきてくれない?味のないやつ」

「いいよ」


 控室の椅子に座り両手で顔を覆う。

 台本のシーンが頭から離れない。

 今更断れないのは分かってるけど、どうしても嫌だな。


『今、どこにいる?少し会えない?』


 思わず手に取ったスマホで、颯にメッセージを送っていた。

 翼が早めに連れて来てくれたから、まだ時間はある。


『会いに行くよ、どこ?』


 ここと家は車で1時間、電車だと上手くいけば40分。


『俺はちなみに、ショッピングモールに買い物に来てる』


 やった!近いじゃん!


『分かり易いところにいて!私が行く!』


 その方が早いから、急いで靴を履いて走り出す。

 翼には途中でメッセージを送ればいいか。





「颯!」


 走りながら飛びついた。


「光、どうしたんだよ」

「あのね、あのね……」


 キスシーンが嫌になった、だなんて言えない。


「仕事で近くに来てたんだけど」

「翼は?」

「いるよ」

「行かなくていいの?」


 行かなきゃならないんだけど、行きたくないの。どうしたらいい?


「光?」

「どうしよう……私……」

「ちょっと、座ろうか?」


 手を引っ張られて、行き交う人をすり抜けた。

 色とりどりの造花が並ぶ花壇の縁石に腰を下ろす。


「行きたくないの?」


 黙ってうなずいた。


「じゃ、行くなよ」


 心が揺らぐよ。

 翼から電話が来た。


「出たくないの?」


 頷く。


「じゃ、出るなよ」


 どうしよう。どうしよう。


「気にすんなって、ちょっとこっち」


 颯が手を引っ張って、コーヒーショップに連れて行ってくれる。


「何にする?カフェラテでいい?」


 頷く。


「いいのかな……」

「光が行かないと、誰か死ぬの?」

「え?死なないよ」

「じゃ、いいんだよ」

「そう、か、な?」

「そうだよ」

「翼が困るかも」

「困るだけだろ?あいつなら何とかするよ」


 ごめん、翼、この償いはいつか必ず……


「ほら、行こうよ」


 颯が手を出す。私がその手を取ると、颯は大きく手を振って歩いた。


「すごい荷物だね」

「フラれてヤケになって、爆買いしてストレス発散してたんだ」

「ごめん」

「いいよ。今日ここにいたから、光に会えた気がする」

「ありがと」

「そもそもフラれなければ、こんな買い物しなくて済んだのか……あれ?俺って幸せなの?不幸なの?」


 そんなこと真面目な顔で聞かないでよ。


「ふふ、どっちなんだろうね、私にも分かんないよ」

「だよな。だけど、これからは幸せでいいんだよな?光、戻ってきてくれたんだろ?」

「違う。颯とは付き合えない……」

「なんでっ?!」


 一度、離してしまった颯の手を、私は後悔していた。

 今再び、こうして図々しく戻った私に、颯は手を差し伸べてくれている。


「まだ、心の整理がついてないし……望に償わないといけない」

「よく分かんないけど、俺って、今、光のなに?」

「好きな人」

「でも、彼氏じゃない」

「うん。彼氏じゃない」


 握った手を、更にぎゅっと握られる。


「分かった、また光の彼氏にしてくれるまで待つ」

「本当?」


 颯にキスしたい。


「本当。約束する」


 真っ直ぐ前を見たまま言った颯から覚悟を感じた。

 キスしたいなんて思ってしまった自分が恥ずかしくなった。


「ありがとう」

「もう一度、確認するけど、光は俺のことが好きなんだよな?」

「うん。大好きだよ」

「また彼氏になれるんだよな?」

「うん。いつかは言えないけど、その時、まだ颯が私のことを好きでいてくれたら、私も颯と付き合いたい」

「約束な」

「うん、約束」


 望には本当に申し訳ないと思ってる。

 だけど、もう颯と離れたくない。


 約束する。今度こそ、望が気持ちを伝えるまで、私は抜け駆けしない。

 今はこれ以上の幸せは求めないから、颯の近くにいることをどうか許してくれないかな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ