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我が愛しの守護天使様  作者: ハタケ


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7

 家に帰ってからは暇すぎて死にそうだった。妹二人のために夕飯を作った後、まったくやることがなくなった。

 夢花はバカの一つ覚えみたいに有名携帯ゲーム機で遊んでいる。俺にも勧めてきたが、俺はそれにはもう飽きていた。

 こういうときこそ脳死状態で画面を眺めるだけで充実しているように錯覚することができるYouTubeの出番だと思われるが、それも食傷気味だった。YouTuberは元々好かないし、一時期ハマったVTuberからの倦怠に対する麻酔効果は以前得られたほどの効果は期待はできなかった。超人気Vは皆生きる力がすさまじいから、たとえたいして興味なくダラダラ見ていてもその活力を分けてもらうことができるが、それも見続けるに従って効果が薄くなってくる。危ない薬同様、同じ刺激を受け続けると徐々に効果が減っていくのだ。

 そんなことを考えながら俺は超人気VTuberの守護天使リマエルのチャット欄にアンチコメを書くことで、危ない薬を服用するのとは違うベクトルで危ない遊びをして精神に無理矢理刺激を加えた。

 今日、リマエルはお得意のレトロゲーム配信で以て仕事に疲れた中年男性の心を癒やしていた。

 俺はそれを茶化した。


『合法パパ活、今日もお疲れ様です』『一生懸命仕事して得た賃金をかすめ取る詐欺行為お疲れ様です』『お前にスパチャするなら税金収めた方が世の中のためになるんだよなぁ』『お前だけ累進課税99割払え』


 しかし今日のリマエルはアンチコメを完全に無視した。俺以外にもアンチコメは多かったし、『その飲み物飲んで泡吹いて死ね』みたいな殺害予告に近いような極めて危険な書き込みもあったが、今日は黙々とゲームをプレイしているだけだった。しかも概要欄に『指示厨大歓迎! レゲー初見なので少しでもイライラしたらお叱りお願いします!』と書いてあるのにまったく指示に従う様子がなく、同じような場所でずっと詰まっていた。これにはさすがに擁護派もイライラしてきたようで、


『だからそのキャラ閃き適正ないからいくら通常攻撃したって無駄だって言ってんだろ』

『一回見切り極意取れよ』

『だから熱耐性なしに挑むと即死するんだって』

『こんなんじゃ配信になんないんだよ』

『は~つっかえ。辞めたら? レゲー配信』


 と辛辣なコメントを寄せるようになった。

 するとリマは一旦ゲームする手を止め、

「は~、今日はなんか疲れたので、今日はもうやめにしますかね。はい、雑談に移りま~す。例の如くスパチャは読みませ~ん」

 さっさと女の子の部屋みたいな背景の画面に移行した。そしていつものようにだらけた感じのトークが始まった。

「今日は別に体調悪いってわけじゃないんですけど~、このアンチの暴言を全面に受け入れて、地獄のような人生を送っている人々の苦しみを少しでも軽くするキャンペーン、そろそろ飽きてきたかなって」


『え、じゃあいよいよ通報祭りに移行するのかな?』

『え、じゃあ今までアンチコメ書いてた人を一斉摘発するのかな?』

『え、もしかして今まで書き込まれたアンチコメ、みんな魚拓とってた?』


 チャット欄がざわついた。

「別に通報なんかしませんけど、なんかマンネリ化してきたんですよね。たいして注目もされなくなりましたし。まとめサイトとかからね。そういうわけで他になんかいいアイディアないですかね……」

 俺はコメントを打った。


『そんなんじゃ甘いよ。お前一度言ったことも守れないのか? 恵まれてる奴が恵まれない人から罵倒されるのは自然の摂理なんだよなぁ。お前が心折れて自殺するまでこの茶番を続けて、どうぞ』


 すると他のリスナー達は、


『この〈リマエルの兄114514号〉って奴が一番やべぇよなぁ』

『キャンペーンした後、まっさきにこいつを通報しようぜ』

『僕もリマエルの兄さんに同意見です。あなたの魅力は他のVが全面禁止してる罵倒コメなんだから、もっと長所を活かして、どうぞ』

『でもそのお陰で世界で一番民度の低いVTuber配信だからな、ここwww』

『そろそろ浄化作戦実行するときだと思われ』

『俺はこの殺伐としてるけどなんか平和で緩い絶妙で唯一無二のふいんき(なぜか変換できない)が好きだからこのままでいて~』

『だな、リマちゃんに似てるVは他にいないからな。ちょっとでも批判するとブロック・削除されるような他のVなんかに今から移行するの無理』

『俺はもう大手箱とかでコメントする勇気ねぇわwwwww』


 チャット欄は現状維持の意見が多かった。

 それに対してリマエルは笑顔を浮かべ、

「貴重な意見どうもです。じゃあそのままってことにしますね。でも言っておきますけど、別にアンチに屈したとかじゃないので誤解しないでください」

 俺はコメントを打った。


『嘘つけ絶対アンチコメが効いてきてるぞ。学校にもまともに行かないでずっと部屋にこもってるから精神耐性弱ってんだよ。だからまず外に出て、どうぞ』


 するとチャット欄がまたざわつき始める。


『先輩、こいつまたリマちゃんの兄自称し始めましたよ、やっぱ妄想癖あるんすね』

『まあでも、ここはリマちゃんの身内を詐称するアカウント名だらけだからwwww』

『とりあえずこいつだけはブロックして、どうぞ』


 俺への風当たりが強いが、他のアカウント名は、『リマちゃんの弟』『リマちゃんのパパ(意味深)』『リマちゃんの保護者』『リマちゃんファンクラブNO1』みたいなふざけた奴ばっかで、俺だけが身内を自称しているわけではない。

「今日はあんまり気分じゃないから、休みますね」とリマエルがいつもより幾分低いテンションで言う。「あ、生理とかそういうのではないノデ」


『え、あ、はい』

『あ、ふーん(察し)。じゃあ妊娠したんですね』

『ちゃんと毎月来てる? 月経不順ならお医者さんに行った方が』

『あ、僕、産婦人科医(大嘘)なんで、リマちゃんを内診してあげますね(ライン越えセクハラ)』


 そういったひどすぎるセクハラコメが流れた後、リマは言った。


「だって私、初潮もまだナノデ」


『え』

『ん?』

『はい?』

『ファッ!?』

『ウーン……』


 チャット欄の流れが今日一番速くなった。

『まだって、じゃあリマちゃんって一体いくつなんですかね……』

『現役JSって設定かと思ったんだけど、リアルJSの可能性が微レ存? ここまできたら年齢公表して、ホラホラ』

『じゃあまず、年齢を教えてくれるかな?』


「十四歳、学生です」とリマは答えた。


『十四歳!? ぼったくりやろ……。せいぜい十代後半かと思ってたゾ』

『その年でそんな稼いでるんだったらもう学校なんかバカらしくて行けないでしょ』

『お、待てい。将来自分が困ることになるから義務教育だけは終えておいた方がいいゾ』

『いつまでもこの人気が維持できるとは思えないしなぁ(半アンチ)』

『いや、女性オタクに支持されてる男性アイドルVと違って、女アイドルVは地道に活動継続していけば人気も維持できるぞ。なぜなら男オタクは簡単に宗旨替えしないから。十年前のアニメキャラをずっと嫁扱いしたりするしなw』


 最後に読んだコメントには確かに同意できた。アニメやVTuberには完全に飽きてしまった俺だが、小学校の時にガチ恋したアニメのヒロインを今でもオカズにしてるんだワ。文句あっか。

 ところがリマの考えは違ったようで、


「でもですね~、この毒が飛び交う殺伐配信もそのうち完全にみんなから飽きられると思いますので、何年かしたら私も箱に所属しようと思うんですよ~」


『えぇ……』

『それは勘弁して』

『あんまりだあぁぁ裏切り者~……』

『箱なんかに所属したらリマちゃんの個性が潰されるから、考え直して、どうぞ(忠告)』

『ていうか、こんなやべー子を取ってくれる箱なんかあるんですかね……』

『あったけーが特徴のあの箱は絶対拒否するだろうなwww書類審査で落選不可避wwww』


 箱移籍……勝手にしろよ、と俺は思った。


 リマは続ける。

「でもそれはずっと先の話ですし、既存の有名の箱なんかにはさすがに入りませんよ~。私なんかと仕事したくないでしょうしね、オーディションで弾かれると思います~。だから新設された箱が声を掛けてくれたときに移籍しようと思いま~す。逆に言えばどこからも声を掛けられなかったら一生リマエルで行きますね」


『えぇ……。いつかリマちゃんが天界に返るってこと? それって勲章じゃないですよ。引退配信の翌日に全国の電車が大幅に遅れることになると思うんですけど(不穏推理)』

『箱に移るならガワを持ち込めるとこに行って~海外のあそことかにさぁ』

『リマちゃんが引退したらもうVは観ないと思う(二度と観ないとは言ってない)』


 俺はコメントした。


『もう一生分稼いだんだから、あと数年したら貯金全額納税して死ねよ。それが世の中のためだ』


 するとチャット欄が激怒した。

『てめぇが自殺しろ』

『しんみりしてたのにふざけんなゴミ。お前だけは通報するわ』

『この流れでなんなんこいつ? 四十代ニートこどおじにしても同情できねぇわ。マジで空気読めねぇな。だから人生失敗したんだろうけどさ』


 チャットの連中からまさかここまで怒られるとは思ってなかったので、さすがの俺もビビったが、謝りはしなかった。その代わり、『俺は四十代ニートなんかじゃないんだよなぁ。現役高校生なので』と打った。


『嘘つけ絶対中年ニートだゾ。お前ずっと前からやたら達観した意見ばっかじゃねぇか。レゲーにも詳しいし。氷河期世代の香りがするんだよ、お前のコメントからな』

『こいつもうブロックしようぜ。さすがにキレちまったよ……』

『中年だろうが高校生だろうがクズはクズ、はっきりわかんだね』


「アホくさ。もういいよ」

 俺はパソコンの電源を切った。リマエルいじめにはもう飽きた。

「寝るか」

 俺は布団に入った。そして私は一時的な死を迎えるだろう(センスゼロのゴミクソポエム)。

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