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我が愛しの守護天使様  作者: ハタケ


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「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 俺は飛び起きた。目が覚めるとそこは異世界だった。なんかみんなに注目されてるし。

「タマく~ん、図書館ではお静かに」隣に座っていた愛美が俺に言った。

「ここはどこ?」

「どこって、だから図書館。本読んでたら居眠り始めちゃったんでしょ」

「あー、また変な夢かぁ。これもう俺一生眠らない方がいいな」

「どんな夢見たの?」

「いや、それが、聞くもおぞましい夢だから、言わなくてもいいっすかね……」

「まあ無理には。ところで課題の本は選んだ?」

「選びましたよ」

 俺が選んだのは、学生が読んだらなんか役に立ちそうななんかの本だった。ページ数も内容も薄っぺらいクソみたいな自己啓発本。


 家に帰った後、赤坂にメッセージを送った。

『サボり?』

 するとすぐに返事が。

『サボり』

『何があった?』

『リマちゃんが引退するそうです。だから僕も人生を引退しようと思いました。まる』

 勝手にしてろよ。

 俺が家に帰ったとき、莉茉はすでに部屋にいるようだった。しかしいつもの夕方雑談配信はしていない。SNSも無反応、配信予定もなし。

 何やってんだろ、と思って莉茉の部屋のドアに耳を当ててみると何も音が聞こえてこなかったので、俺はドアを開けて無断で中に入った。

 部屋は真っ暗。俺は手探りで電気をつけた。水色の布団が盛り上がっている。

「不貞寝ですかね」と俺が呟くと、

「どっかの誰かさんのせいですよ」と布団の中からくぐもった声が。

「俺のせいかよ。そんなんじゃ甘いよ。今からすぐに配信始めるべきだゾ。お前が早いとこ復帰しないと、日本の人口がどんどん減っていくと思うんですけど(不穏推理)。赤坂もこれから人生引退するとかほざきだしてるし、世のため人のために仕事して、どうぞ」

「嫌です。お兄さんがまたチャンネル登録してくれるまで、私は復帰しませんから」

「あっそ、はいはい」

 俺は呆れて部屋から出た。こういう、そっけなかった妹が実はブラコン設定みたいなの、ちょっと古くさすぎんよ~。くだらないから勘弁して。

 ここで下手に慰めて仲睦まじくしてしまうと、それこそクソみたいなラノベみたいな展開になりそうだったので、下に下りて夢花と適当にじゃれ合っていた。まあじゃれ合いっていうか、ケツの蹴り合いなんですけどね。

 ピンポーン。そのとき、歴史が動いた(イミフ)。

「誰だよ(例のミーム)」と俺は一人呟きながら玄関に向かった。

「どうも」

 ドアから飛び出たのは天才絵師・和泉夢衣大先生だった。制服姿だった。

「ドーモ=ダイセンセイ。そして帰れ」

 俺はドアを閉めた。

「帰りませんがな」だがいずみんは家主に無断でドアを開けた。「今日はちょっと仕事の打ち合わせに来たんですよね~。だから保護者である珠海先輩も同席しとけよしとけよ~」

「あーめんどくせぇマジで。じゃあアイスティー用意するから、リビングで待ってて」

「ああ~いいっすね~」

 いずみんは大先生であらせられるが故にネット上のあらゆるミームに精通している。アンテナ張って常に最新のエンタメ情報を仕入れるなんてたまげたなぁ(感嘆)。


「おまたせ。豆乳ソーダしかなかったけど、いいかな?」

「(よくは)ないです。でも興味あるんで飲みますね……ヴォエッ」

 和泉大先生が嘔吐状態になられた。まあこんなゲテモノ飲料だし、しょうがないね。

「よくこんなゲロ以下の飲み物見つけてきましたね。お陰で商談を強気姿勢で挑む決意をしました」

「商談? ていうか貴様、わざわざうちまで乗り込んできてなんなんすかね」

「あなたの妹さんの田尾莉茉さんが仕事放棄するとか仰ったんで、こっちは困ってるんです。これからグッズいろいろ作ろうと思ったのに、勝手に活動休止されると損害がでるんです。私がグッズのイラストを一手に引き受けてますからね。んで、昨日莉茉さんが休止宣言したことでホビーメーカーからいろいろ問い合わせが来まして。本当に無期限休止するってなると私が損害賠償払うことになるんですよ」

「なんでお前が? 訴えられるとしたら莉茉では」

「私がグッズの企画を持ち込んだからです。商魂を奮い立たせてね」

「なら勝手に企画持ち込んだお前が悪いんじゃね。素直に賠償金払えば」

「勝手に企画したわけじゃないです。莉茉ちゃんにもグッズ出しませんかって営業した結果ですので」

「口八丁で莉茉を籠絡したって感じですかね」

「それ、ちょっと人聞き悪すぎやしませんかね。人気の個人Vは大抵どこもグッズ出してますよ。需要に答えた結果です」

「そう……(無関心)。でもリマエルは引退でもないし、不祥事起こしてクビになったわけでもないんだから、構わずグッズだけ出せよ。活動は休止してるけどなぜかグッズだけ出続けるVTuberも中にはいるんだろ? 俺はよく知らんが」

「というかあなた、リマエルちゃんが昨日の配信で何やったか、わかってんですかね」といずみんがものすごいジト目で俺を睨む。

「え、なんだっけ」

 俺の記憶は最近ものすごい曖昧だった。例の連続悪夢のせいでね。

「お風呂でなんかいろいろいやらしいことしてましたでしょ。アーカイブを非公開にしたってことは、あれはガチだったんですよね。先輩が莉茉ちゃんのお尻に何かを挟むみたいなことしてたようですけど」

「いや、あれはガチなんかじゃなくて、単なる俺の創作なんだワ。つまりやらせ。というかこの世界自体夢だから、いちいち本気にすんなよ。くだらない」

「なんか哲学的」といずみんは意外にも素直に納得(?)。「まあとにかく、炎上して登録者数が激減したことは確かで、それに伴い人気低下。この状態でグッズなんか出しても売れないとメーカーは今判断してるんですよね~。今まで買ったリマちゃんのグッズを叩き壊す動画をSNSに上げる輩も早速何人か現れましたし。だから先輩、なんとかしろ」

「しらんがな。莉茉に直談判しろよ」

「そんなのとっくにやりましたよ。でも莉茉ちゃんはお兄さんが原因だからお兄さんを説得しろの一点張り。だからどうにかしてくださいよ~頼むよ~」

 そう言っていずみんはポニテを揺らしながら立ち上がってソファの俺の隣に座り俺の手を取っていやらしくマッサージみたいなことをし始めた。要するに色気作戦のつもりらしい。完全におちょくられてますねこれは……。

「じゃあ、ヤらせろ」

「きゃっ」

 ガキが……舐めてると潰すぞ、とムカついた俺はソファの上でいずみんを押し倒した。

「せ、せんぱいっ、も~う、積極的なんだから」

 長年際どいラブコメ作品を渉猟してきたであろういずみんは、アニメで五千回くらい使われたヒロインの反応をそのまんまコピーして演じた。

「しょうがないにゃぁ……じゃあ……ちょっとだけですよ……?(茶さん並感)」

 そう言って制服のブラウスのボタンを外し始める。

「白のスポブラ、いいぞ~これ」

「言わないでくださいよっ、小さいの気にしてるんですからねっ」

「申し訳ないがいずみんみたいなミニマムキャラはまったく好みじゃないからNG。それに若い成功者はもっと好きじゃないから大NG」

 押し倒したのはもちろん単なる脅かしだったので、俺は立ち上がろうとした。

 しかし、

「先輩がNGでも女の子にここまでさせた責任は取らせてもらいますからねっ、えいっ!」

「ぐわっ」

 立ち上がろうとする俺に抱きついてくるいずみん。離れようと思ったが両手両足をしつこく絡めてきたから、ソファの上で揉み合う形に。しかもこいつ、どさくさに紛れて俺の肩や首筋を噛んでくる。

「ホラホラホラホラ、早く後輩を陵辱してくださいよ~、この童貞先輩っ、かぷっ」

「いてっ、やめろバカ」

「ホラホラホラホラ、コンプレックスこじらせて大成功者たる私を犯してくださいよっ、かぷっ」

「いててっ、だからいてぇつってんじゃねぇか、噛むなっ! こんなときにかぷ民救済しなくてもいいから(悲しいなぁ)……ん? って、お前は何を撮ってんの???」

 ソファの上で暴れている最中、なんか莉茉がチラッと見えたぞ。

 本気出していずみんを吹っ飛ばして、「ぎゃふんっ(アイラ並感)」と言わせた後、立ち上がると、ソファの傍でスマホを構えている莉茉がいた。その横には夢花も。

「私の配信を荒らしていた鬼畜リスナーの所業をカメラに収めてたんですよ」と莉茉はニヤリ。

「あーあ、兄ちゃんもこれで晴れてプリズナーかぁ」と夢花。

「動画もう一回見直してみ? 俺がプリズンから脱出するまでもないってことがわかるから。こいつが逆に俺を襲ったんだって」

「じゃあ見てみましょうよっ!」

 いずみんが立ち上がって莉茉の傍に寄る。俺も莉茉のスマホの画面を覗き込む。すると俺がいずみんを「ヤらせろ」と言って押し倒す場面がバッチリ再生された。あ、そういや俺が最初に冗談のつもりで押し倒したんだった。

「うわぁ、しかも先生の控えめなバストを覆うスポブラを見て、ニチャア……って気持ち悪い笑みを浮かべてますよ……このクソお兄様ったら……」と莉茉は普通にドン引き。

「じゃあさじゃあさ」と夢花が余計なことを言う準備を整えた。「この動画を莉茉ちゃんのチャンネルに配信しようよ。そうすれば莉茉ちゃんが休止に追い込まれた原因がこの鬼畜お兄様だってことになるから、万事解決だね♪」

「ちょっと頭悪すぎんよお前……。なんでそれで解決すると思ったんですかね……」

「なりますよ。お兄さんがタイーホされて、この家が平和になったことが証明されれば、私も安心して配信できますしね」と莉茉はニヤリ。

「(本当のプリズナーにはなりたく)ないです」

「なんですかなんですか~、お兄さんキャラやってるくせに、かわいい妹のために厳しい施設に入っていかつい男から何かを掘られる決意一つつかないっていうんですか~?」

 いずみんが手を後ろに組んで俺を見上げるようにして言う。

「わかったわかった。じゃあ以前の状態に戻ろう。つまり俺が今までどおり莉茉の配信で悪口コメントを書きまくるから。要はそのプロレスを続けたいんだろ?」と俺は莉茉に尋ねた。

「そうだよ(肯定便乗)。それを約束してくれるのなら、今日から復帰配信しますよ」

「ちょっと待ってください。せっかくならもっとじらしてからにしましょうよ」とオタク文化に精通しておらっしゃるいずみんが意見した。「今日はSNSで復帰の告知するだけにして、復帰配信は週末にしましょう。そうすれば復帰を楽しみにしていた皆様から大量のスパチャをいただけますからね、じゅるり……」

「死ね」と俺はストレートパンチ。「このペテン野郎」

「何が悪いんですかねぇ?」といずみんがジト目で睨む。「これも商売。決して詐欺ではありません。お金の匂いのしない非収益化の配信がお好き? 結構。でも需要があるのなら、こっちは価値ある標品として有償でそれを提供する義務があると思うんです。というのも、価値あるものを無償でばらまいたりすると市場バランスが崩れますからね。つまり商品全体の価値が下がっちゃって、本物を提供するクリエイターが食えなくなってしまうんです。現に今そうなりつつあります」

「はいはい、単なる僻みでしたよ」と俺は認めた。「とにかく莉茉。なんでもいいから配信続けろよなー頼むよー。この物語から赤坂が退場したら俺が困るんで」


 というわけで守護天使リマエルはSNSで復帰宣言し、週末土曜の昼に復帰配信が決定。

 なお、赤坂は、ひゃっほーーーーーっ! と叫びながら登校し、全校生徒から白い目で見られたんだけどこのクソエピソードはカットでいいですかね……(疲弊)。まあ全てがクソエピソードなんですけどね。

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