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はい次の日~、次の日、参ります、黄色い線までお下がりください。クソみたいな物語を運んでくる電車が参りま~す。
「来たっぜ赤坂くんが~♪」
「いかん危ない危ない危ない」
変な歌を歌いながら家主に無断で玄関の扉を開けた赤坂の腹を思いっきり蹴り上げた俺氏。一瞬替え歌かと思って焦りまくったのだが、どうやら奴のクソみたいなオリジナルソングだったらしく一安心。やめてくれよ……(著作権こわいな~、とづまりすとこ)。俺に蹴られてしまった赤坂だったが攻撃力わずか1の俺の蹴りなど当たったとしてもどうということもなく奴は平気そうな顔をして我が生まれつき手に入れし新築一戸建のリビングのテーブルに家主に無断で勉強道具を広げ、そしてソファにふんぞり返ってリビングの60インチモニターで悠々と最新のコンソールゲーム機で遊んでいた夢花様のうなじをさっそくガン見したのであった。つまりロリコンの本性発揮である。夢花様は数日前に配信された(基本無料のゲームなので発売した、とは言わない)ゲームを最新コンソール機にダウンロードし親から許可された課金額である五千円を駆使してガチャを引いて限定Sキャラを引いて狂喜乱舞していたのだが、そのキャラを見た赤坂がこのSキャラってVTuberで似たようなのいなかったっけ、と余計なことを言ったせいで憧れの夢花様から睨まれるという一幕があった。ざまぁ。でもサメのしっぽとかギザ歯とかまんま○○ちゃん(名前自主規制)じゃん、と尚も食い下がる赤坂に色合いも性格も属性も武器も身長も胸の大きさも全然違うからパクリとか言うなバカアホボケカスと夢花様はおキレになった模様。いやパクリとは言ってないんだけど、と赤坂が頭をポリポリ掻いて(フケを落としながら)困っていると愛美女史と我が憧れの対象物たる中野さん参上。家が結構離れてるのにどうして二人同時にやってきたんですかね、と疑問に思った俺は、あ、もしかして愛美が中野さんに、あなた昨日私に無断でタマ君を市中引き回しにしたでしょ? と詰め寄ったのかな、と危険を危惧したのだがそうではなく単に玄関先で偶然会ったらしかった。修羅場は大嫌いなのでもし少しでもその兆候が現れたらこんなクソ物語、即打ち切りにしてやんよ~(惰弱世代並感)。四人全員が揃ったところで、今からここを勉学の場にするから貴様どけいっ! と俺は夢花様に進言したのだが、ゲーム下手クソ勢であらせられる我が頭の足りない妹はパリィがうまくいかなくてイライラしていたのか、知らんがな、とわたくしめの懇願を退けやがったので、ご立腹した我はお下げにして二つに分かれている髪から覗く襟足の地肌部分に「ふっ」と生暖かい「くさいいき」を吐きかけて調子こいていた妹を毒暗闇沈黙バーサク睡眠スロウ石化混乱カーズ状態にしてやろうと思ったのだが残念ながら虫歯もなく胃の調子も頗るいい俺氏がキスティス先生のようなしかるべき秘技を使うことはできず首筋に息を吹きかけられた妹は「ひあっ」という普通のリアクションをするだけに留まったのだった。だが赤坂はもちろん、愛美も中野さんも下手クソながら健気にゲームを頑張っている夢花様を小動物的な存在とでも見なしたのかゲーム音が鳴り響く場でもまったく構わずに勉強をやり始め、俺もしょうがないのですぐ傍でゲーム音声が轟くテーブルで勉強することにし、四人は黙々とそれぞれ自習を始めた。つまり今回の勉強会はわからない所をお互い教え合うのではなく嫌すぎることもみんなで集まってやれば苦痛も和らぐよね、といったコンセプトの元で開かれたのだった。しかし嫌いなことをしていれば自ずとストレス値が漸増していくものでイライラが募るにつれて私語が増えたり飲み物を口にする回数が増えたりゲームに夢中になっている夢花の髪の毛をくんかくんかする回数が増えたり愛美と中野さんの胸をチラチラ見る頻度が増えたり中野さんの短パンからはみ出る健康的な太ももをなめ回すようにしかしさりげなく見る回数が増えてきたりポケットに手を入れる振りをしてしかるべき息子をマッサージして心を落ち着かせる回数が増えたりしたのだが、かといって中野さんが、「昨日タマと二人で遊びに行ったよ♪」と言ってみんなの興味を引いて場の空気を変えることで勉強疲れを一瞬で解消させるなどといった荒技を敢行したりはしなかったので俺は安心していたのだが、いつ中野さんが昨日のことを話題に出すかというビクビクは続いた。二時間ほど頑張って勉強を続けていたらさすがに疲れてきたので休憩ということになったのだが、赤坂はずっと我慢していたのか、夢花ちゃーん! 俺にもやらせてくれよなー頼むよー、と夢花からコントローラーを奪って無理矢理PS版ゼンロスゾーンエリトラ(適当パロタイトル)をプレイし、やっぱり、4K60フレームを、最高やな、と感激しながら夢花なんかより遙かに上手いキャラコンでエンドコンテンツを微課金キャラで悠々とクリアし、散々苦労したのに手も足も出なかった敵キャラをあっさり倒されたことに夢花が悔し涙を流したんだけどエンドコンテンツの豊富な報酬がゲットできたことには喜び、そうして二人がゲームで和気藹々楽しそうにしているのをよそにゲームに興味のない残りの俺と愛美と中野さんが談笑しているときに、そういえばリマエルは今どんな配信してんだろう、と俺は急に思い立ってスマホを取り出したのだが、「あ、スマホは禁止っていう取り決めだったよね? はい、ぼっしゅー」と中野さんに取り上げられてしまったのだった。まあいらないけど、あんなもん。すると愛美が、そういえば莉茉ちゃんは元気? と俺に訊いた。愛美はだいぶ前に何度か莉茉と顔を合わせたことがあって、ちっちゃくてかわいい莉茉をえらく気に入った様子で、こんな妹が欲しい欲しいと一時期は事あるごとに言っていた。じゃあ気分転換がてらに一緒にちょっかい出しに行くか? と俺が愛美に提案すると、ちょっかいは出さないけど挨拶はすると仰られたので我が彼女と共に第二次性徴を迎えた下の妹の体がどれくらい成長したかを確認しに行くことになった。莉茉と面識のない中野さんはリビングで軽くストレッチなんかをやっていた。その際もちろんワイは体を後ろに仰け反らせて屈伸している中野さんの盛り上がる二つの何かをガン見しましたがね。幸い変態赤坂は夢花様とゲームに夢中だったのでワイが中野さんの肉付きのいい肢体に夢中になっていることには気付かなかった模様。というかお前もう夢花と付き合えよ。そうして僕は愛美と共に木の匂い漂う階段をトテトテと上がっていき二階のさいおうの部屋まで赴いた。さいおう派はかしこいなぁ(さいおく派へのマウント)。その最奥のドアの近くまで来ると、部屋の中から、しまきぞくのBGMかっこいいいいいいいいいっ! という、たいして気に入ったわけでもないくせに氷河期世代に媚びるためにさも感動したかのようなわざとらしい営業用リアクションが聞こえてきたので俺はムカつきまくってドアをパァン! と大破させる勢いで蹴ったのだったが思わず裸足でトーキックで蹴ったのでワイの爪は割れ、血が噴き出してしまったのだった。これはバチがあたったようですね……。ちょっ、タマくん? なにやってんの~(カッチャマ並感)と愛美に俺の頭のデキを心配されてしまったが、大丈夫だって安心しろよ、と適当に答えた後、莉茉は今、誰かと遊んでるみたいっすよ、じゃけん俺らは俺らで下で仲間同士イチャイチャしてましょうね、と進言した。お、そうだな、と愛美。僕らは下に下りた。下に下りてまだストレッチやってた中野君を見て俺はふと思った。そういえば中野君は、今日の午前、部活に出たんか? と俺は猛虎的発音で以て尋ねた。
「辞めちゃった」と中野さんは舌をペロッ。
あっ、その舌をペロッと舐めたいナリ~、などと思う前に私は彼女の発言に衝撃を受けた。辞めたぁ? なんだなんだ、だってあなたスポーティな性格でしたよね? さっきも屈伸するとき、スッって感じで立ち上がってたし。それなのになしていきなり辞めるだなんて決断したんですかね……。
「肌に合わなかったから」
はだ……あ、ふーん。
「なんか今変な想像した? 活動方針が受け入れられなかったっていう意味ね」
それはわかってますがな。と言いつつずっと肉体関係だった顧問との肌が合わなかったのかな、という薄い本的想像をついしてしまいましたがね。じゅるり。
でもそうなると夏の大会も放棄ですかね。
「そういうこと。まあ、私も小四から八年以上バスケやってきたし、もういいかなって思って。試合でそれなりに活躍もしたしね。完全燃焼ってやつよ」
なーほーね。やっぱり全力で努力してある程度結果を出した人っていうのは君みたいに清々しく勇退できるもんなんですね。まあでも、ここまで来たら最後の大会に出ればよかったのに。
「無理。だって顧問が心の底から大嫌いだったから。前も言ったじゃん。今時ありえないくらいのパワハラ気質でさ、もう同じ空気吸ってるだけで吐きそうになってくるから、逃げた」
今からでも遅くないよ。ここぞとばかりに例のマンガの名台詞を引用して復帰をお願いしてみたら?
「やーだよ。それに私、例のマンガ読んだことないから、引用する資格もないし」
大丈夫だって安心しろよ。ネットでキャッキャ言いながらスラング使ってる奴らの大半は元ネタ知らないで引用してるんだから。俺もソーナノ。
「もういいじゃん部活の話は。ところでダブルデートの件だけど、タマはどこ行きたい?」
ファ!? ウーン……。と僕は喜びと困惑のあまり一瞬気絶した。ちょっと待って中野さんってダブルデートの話知ってたの? と俺は言った。は? お前ライン見てねーのかよ、と赤坂。うるせぇお前に訊いたんじゃねーと僕はソファに座る赤坂の頭を蹴ろうかと思ったが、それよりもスマホだ。しかし服を探ってもスマホは見当たらぬ。あのー、中野さん、わたくしのスマホはいずこへ……。はい、返すよ。返してもらった。で、ラインを確認。昨日の夜、赤坂からメッセージが来ていた。中野君もダブルデート来るってよ~、お前行きたいところ考えとけよな~、明日みんなで話し合うからな~。我がスマホのメッセージアプリにそのようなバカそうなメッセージが残されていた。しかし内容は私にとって非常に重要なものだった。中野氏を交えた二組のカップルによる小旅行。楽しいことだけ考えていればいい高校生活での最後の夏――二度と帰らぬこの貴重な時期の想い出作りをなんとしてでも成功させたい、と決意した私は、やっぱり僕は、王道を往く、海系を提案しますね、と海沿いの街在住のメリットを最大限活かすことにした。そしてできれば民宿に泊まり、中野さんをイカせたい。最低でも愛美をイカせたい。これが私がダブルデートを提案した最大の目的だったのだ。つまり初体験をどうにかして終わらせたかったのである。そしてその相手は心から好きだと言える相手がふさわしい。故に話してみたらなんとなく気があって、いつのまにか放課後も一緒に行動するようになり、君ら付き合ってるの? と他の人から訊かれて特に否定もしなかったことでカップル認定されるようになった愛美が相手では役不足である(盛大誤用)。故に私は皆に提案した。か、かかか海浜公園の近くにある、み、みみみ民宿に四人でとととととととと泊まるというのはどどどどうですかね? と私は最大震度8の震え声で以て提案した。え? え? え? と三人全員が聞き返した。しかし芸夢を遊戯していた夢花殿にはなぜか伝わったようで、いいなぁ、私も海行ってみんなと泊まりたぁい、と言った。じゃあ夢花ちゃんも一緒に来る? と誰かが提案しようものなら私はそやつの頭部をスイカ割りの如く粉砕してやる所存だった。しかし殊勝なことに四人皆がこのお出かけをダブルデートだとちゃんと心得ているようで、すまん夢花ちゃん、俺ら二組のカップルがデートするっていうのが目的だから、悪いけど君は誘えない、と意外にも赤坂氏が窘めてくれたので私は彼への評価を著しく上げた。え~? 不潔だよぉ、と批難の声を上げた夢花の首を絞めるのは後にするとして、私が提案した海の民宿に泊まってしかるべきにゃんにゃんをするという提案を中野さんが果たして了承してくれるのかどうか異様に気になったので、彼女の口から果たしてどのような意見が飛び出てくるのかを聞き取るために我が聴覚神経を最大限研ぎ澄ませた。
「いいね、それ」
きtらああああああああああああああっ! と叫びそうになるのを堪えつつ私は冷静を保ちつつ皆の賛成意見も集めねばならぬと決意しつつ愛美と赤坂はどどどどどどどう思うかね? と意識を保ちつつ震え声で尋ねた。いいね、それ、いいね、それ、と二人は賛同した。故に私も、いいね、それ、と壊れた機械のように他人の言葉を反復した。さっきからそうであるように精神が非常に不安定が故に私はもはや自分の言葉を忘れていた。
というわけで夏休みにみんなで民宿に泊まることになりました。たのしみです(小並)。




