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侵略者に愛されて……  作者: 尾岐多聞
第3章 総力戦の果てに待つもの

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第42話 狂獣児 STARTINGOVER⑤

「──ベッ、ベルナ、何ということをッ!」


 副長官が叫んだ時には標的の右頬目がけて美少女の左手が唸りを上げていたが、その遥か手前で狂真の鉄の様な手に手首を掴まれて停止を余儀なくされる。


「──け、穢らわしいッ!は、離せっ、この人殺しッ!!

 ミレジェスを殺しておきながら、エクルーガの一員になろうなんて、そんな都合のいい考えがまかり通ると思ってッ!?

 いくら界帝様やお父様が許しても、あたしだけは絶対に許さないッ!


 (険しい表情で見下ろす狂真を血走った青い瞳で睨み上げながら)


 いいことッ、もし厚顔無恥にも我が軍に居座ることを企んでいるなら、いずれこのあたしの手でオマエを葬ってやるから覚悟しておくことねッ!!」


「ばか者ッ!いい加減にしないかッ!?」


 たまりかねた父が駆け寄ってくる前にベルナ=ルキロスは脱兎のごとく逃亡し、追跡を諦めた天才工学者は打ち沈んだ表情で頬を押さえる三次元人に恐縮しきりの体で謝罪する。


「……ありがとうございます。

 ですがどうぞお気になさらずに──娘さんの反応は、私がその立場であればむしろ当然といえるものなのですから……ところで、先ほど口にされていた人はお嬢さんの恋人なのですか……?」


 重い声音による問いかけに、ルキロスも床に視線を落としながら応じる。


「いいえ、そういう訳ではないのですが……彼は我が家の近くに住む軍人の息子で、娘の幼馴染みなんです──まあ本人は兄の様に慕っていたものらしいですが、ね……。


 とはいえ、闘幻境防衛隊に志願したからには最悪このような結果となることは覚悟の上だったでしょうし、事実彼の親族はむしろエクルーガ軍人の本分を見事全うした息子をこの上なく誇りとしておりますが」


「……」


「貴方ほどの戦士に私から申し上げることもありませんが、どうかお気になさらずに。

 とはいえこの事態が予想できぬこともなかったがゆえに娘には今回の会見どころか貴方が我が軍に加入されたことすら告げてはいなかったのですが、何か虫が知らせでもしたのですかな……」


「…ひょっとしたら、彼がそうだったのかも……」


 記憶をまさぐる狂獣児の脳裡に真っ先に浮上したのは、間違いなく最強の敵であろうと当時痛感した濃紺色の侵襲機群であった

          ✦


 ──遭遇は2年ほど前、閃王(戦闘機)の扱いにもようやく自信らしきものが芽生え、真龍狂撃隊を結成した直後であったが、突如として白雷龍(飛翔戦闘艦)の頭上にミレジェス率いる7機の編隊が出現し、緊急発進(スクランブル)した狂真は、すぐに戦闘のリーダー機と一騎打ちに突入したのだが、電光石火のスピードとアクロバティックな挙動はこれまでにない脅威であった。


「──チキショウ、負けるかよッ!」


 一見乱れ撃ちに見えて、的確に急所を捉えてくる破壊光線の束を必死の思いでかわしつつ、ありったけの殲光弾を叩き込む狂獣児──その1つが幸いにも海星(ヒトデ)型侵襲機の5つある角の1本を砕き、岩山地帯への墜落へと追いやったのである。


「逃さねえ──テメエの首はこの白琅狂真が頂くぜッ!!」


 かくて髑髏を象ったヘルメットが強烈な印象を与える専用戦装衣を纏った白皇星のエースは、まずは歪な岩地に殆ど半直角となって不時着して黒煙を上げる敵機を完全破壊した後、10回を超える改造を施した殲光弾ライフルを構えて飛び出す。


 その瞬間、背後に強烈な衝撃を覚えた彼は、移動の要となるモーターパックが破壊されたことを悟り、直ちに匍匐姿勢となると勢いよく自動放出された強力消火液によって背中に感じていた灼熱感が緩和されるのを覚えつつ、奥歯をギリリと噛み締めた。


『ク、クソッ、やりやがる……狙いの正確さから見てもどうやら負傷はしてねえようだな。

 だがこれでこっちは地面に釘付けにされちまった──とりあえず閃王には防御障幕(シールドスクリーン)を発動させてあるから殲闘機甲(バトルスーツ)から発射された殺光矢程度で破壊(イカ)されることはねえだろうが、長引くようだと燃料消費にゃ殊の外うるせえシュネビムの野郎に格好の攻撃材料を与えちまうことになる……一刻も早く決着(ケリ)をつけねえと!』


 立場こそ違えど敵も同じ考えであったのであろう、岩陰からいきなり飛び上がって空中から両手を揃えた殺光矢の猛射を浴びせてくるが、そこに自分以上の焦りを見出した狂獣児は幸運にも眼前に発見した小さな横穴に全身を這い込ませて即席の塹壕とする。


『さあ、来やがれ……殺光矢じゃ分厚い岩石の天井は砕けねえし、オレを殺るにゃ真横から攻めてくるしかねえ──むろんチャンスが一辺きりなのはお互い様だが、少なくとも全身を晒さねえで済む分こっちが有利だ……』


 1分、2分……脳内でカウントを重ねるが、相手が接近する気配はない──まさか徒歩で逃げやがったのか?

 疑念に駆られて躰を動かそうとしたその時、狂撃隊副官の刈谷から緊迫した呼びかけがあった。

 それによると、リーダーからの救難信号を受けたのであろう敵機がそちらへ向かったというのだ。


“全機撃破の目算は立ちつつありますがもう少しかかりそうですッ!隊長、武運を祈りますッ!!”


“──了解、任せとけッ!”と返しつつも、むろん狂真の心中は穏やかではない……一番の懸念は救援機による愛機への攻撃である。


『いよいよとなったら遠隔操作で応戦するしかねえが、防御障幕を張ってる以上、主力の殲光弾砲は動かせねえし使えるのは360度回転の4門の高射用ミニバルカン砲のみ──しかもまどろっこしいことに1門ずつ発射するしか術がねえ……かといって解除して閃王を動かしたところで、戦装衣のショボいコントロールボックスじゃマトモな操縦は不可能……こりゃマジでヤベえぜッッ!!』


 

 





 





 


 

 



 



 


 

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