第37話 侵略将軍、萌える…!?
「──実に鮮やかな手並みだったな。
特に薄いとはいえマグナム弾に直撃されてもビクともせぬあの堅牢な装甲をあたかもボール紙の様に易々と斬り裂いてのけるとは……!
おそらく奴が装着しているのは他のメンバーが使用するモノと色が異なるだけの同一品のはずだが、その破壊力は文字通り天地の差だ──阿津間景之、やはり只者ではない……このリオルグ=ユフェルスにとっても生涯最大の強敵といえよう……。
う〜む、おっとり刀で駆けつけた鳥人族どもに虎の子の【五極槍】も破壊されたか……しかも肝心の指揮官は自身の過失でピクピク痙攣しながら悶絶している体たらく──とはいえ阿津間の戦いぶりからも元・異空遠征軍の親衛隊員どもを誅戮するつもりはなさそうだから、一旦虜囚となることは免れぬとしても挽回の目が無い訳ではなかろう……ま、あの人後に落ちぬ倨傲な性格のラージェス氏がこのまま朽ち果てるとも思えぬしな、きっと何とかするはずだ……」
だが心酔する異世界戦士の口調に闘志の昂りよりも感嘆の響きが勝っていることが不満らしい火乃崎舜矢はすかさず反論する。
「──せやけど、今の猛毒に冒された彼にそれができまっしゃろか?
僭越ながらワイの勘ではあの御仁のカムバックは極めてムズいと思われるんですが……何せ相手は阿津間を筆頭に手練れのツワモノが四人もいる上にまだまだどんな秘密兵器を繰り出してくるか分かりまへんし、五極槍を無くした親衛隊員なんざハッキリ言わしてもらうと空が飛べるのと馬鹿力だけが取り柄の雑魚キャラに過ぎませんしね……。
実際、物置小屋からあんなバケモノがワラワラと飛び出して来よったのにはさすがに肝を潰しましたわ──アレがまだ何体いよるかも分かりまへんし、残念ながら格闘能力もウチらの手駒より遥かに上……やはり口だけの、見た目からして中途半端な鳥野郎には荷が重すぎたようですな。
顧問、差し出がましいようですけんど今から高知に乗り込まれたらいかがですか?
憚りながら不肖・火乃崎舜矢、微力ですけんど助太刀しまっせ──現地に着くまでにはきっと酔いも覚めてますさかいに……!」
相棒からの思わぬ?提案に苦笑しつつ、不知火リョオは淡々とこう述べる。
「ありがとう、火乃崎代表。
だが諦めるのはまだ早い。
まあ考えてみたまえ、大前提として連中は捕虜を殺せない……されど親衛隊員の方が逆に自害することは大いにあり得るじゃないか?それも大爆発を伴ってね……!
それにキミが半端者と罵るオレンジ色の半人半鳥紳士とて、機会こそ少なかったものの一旦戦場(闘幻境)に出れば我々を瞠目させる鬼神の如き八面六臂の大暴れをやってのけた歴戦の猛者だ……それを“闘主の化身”やエリート鳥人族どもが知らぬはずはない。
であるがゆえに、イザとなれば自らの矜持を死守するために生命を犠牲にすることを厭わぬ性格の主であることも容易に想像できようしな。
しかも屍毒に蝕まれた肉体に見切りをつけたとしたら尚更だ……」
この返答に酔漢の表情がパッと明るくなり、右拳で左掌をパシンと叩いて大きく頷く。
「なるほど、さようでっかッ!
まあ連中のことでっからラージェスはんを含めてボディの隅から隅までスキャンするでしょうが、何も自爆テロは爆弾だけが使われるとは限りませんしなッ!!
例えばその場の全員を狂い死にさせるとんでもない毒ガスが発生するかもしれへんし、或いは世界を終焉さす未知の殺人ウィルスが解き放たれるやもしれん……つまり奴らが妄想をたくましくするほどこっちにチャンスが回ってくる、と──!」
「そういうことだ……されど親衛隊員はそうとしても、ラージェス氏には異なる対応をするんじゃないかな。
つまり、もっと荒っぽいやり方──殆ど拷問に近い手段を行使して訊問するんじゃないかと……」
「あり得ますな……場合によっては息の根を止めても構わへんと思うとるのと違いまっか?」
うむ、と小さく頷いて再び画面に見入った不知火は、天眼鳥に数では及ばぬものの勝るとも劣らぬ高解像度を誇る【飛晶球】(エクルーガのステルス技術の精華ともいうべきピンポン玉ほどのサイズの透明な飛翔カメラで、レーダーでも捕捉不可能)が送信してくる、失神したままの亜美紗をお姫様抱っこした影神団総帥がライフルをスリングで右肩に吊ったリーダー格らしい緑色の鳥人と言葉を交わしている光景を目を細めて凝視するが、火乃崎はその足元でのたうち回る龍拳鬼どもにコバルトブルーと栗色の鳥人たちが腰から引き抜いた〈ショックガン〉に用途を切り替えた殲光弾銃を放って鎮静化させ、必死に起き上がろうとする親衛隊員どもを冷酷に蹴り飛ばした後、凄惨な踏み付けによって亀裂の入ったフェースカバーを割り砕き、ダイヤルを絞ってやや威力を弱めた衝撃波を彼らの顔面にお見舞いするのを歯噛みしながら見つめるのであった。そして……
「とうとう“自称・最強鳥人”のラージェスはんも囚われの身となったか……。
しかも奴ら、親衛隊員を担いで物置小屋に運び込むつもりらしいやおまへんか?
ということは、あそこは単にバケモノどもの格納庫だけやないっちゅうことですかいな……!?」
腹心の呟きに不知火も相槌を打ちながら、
「もちろん〈本命〉である秘密兵器の工場とは厳重に隔てられているのだろうが、物置の地下にも全身スキャンくらいは可能な何らかの施設が構えられているようだな。
しかも予め今回のようなケースを想定し、被験者のみを室内に残して追求者は安全な外部からロボットアームを介して作業するのかもしれん……ふふふッ、果たしてここからいかなる展開を見せるか──さすがの私にも確たる予言はできぬが、事態はどうやら地下秘密工場で動く気がせんでもないな……!」




