第29話 影神団、光と闇の宴⑦
その真剣な口調から師が半ば本気でそう信じているらしいことは伝わってきたが、そうであれば尚更、身内の自分にとってすら謎めく阿津間景之という人物に慄然とせざるを得ない景充であった。
“──ところでなミツ(帯刀は景充をこう呼ぶ)、いよいよオマエにも初陣が迫ってきたようだが総帥から話は聞いてるか?”
「ええ、もちろんです。
標的はエクルーガの“侵略将軍”不知火リョオ──実は先程、闘主様からも連中の急所である魂核について詳しくご教授して頂いたところでして……」
“──なるほど。だがオマエが使う双玄魔爪で魂核を抉るのはかなり困難だぞ……周知のようにオレの風牙は三尺七寸(約112センチ)の長剣だが、それでも死神将軍にトドメを刺すには限界まで接近しなきゃならなかった……つまりとんでもなく硬え上に体内を自由に動き回る魂核を砕くのには戦装衣の出力を全開しただけじゃ足りずに至近距離から目にも止まらぬスピードで連撃を食らわせる必要があるんだよ──ならばリスク回避のために銃火器を用いればいいではないかとなるのは当然だが、摩訶不思議なことにそれに成功した者は何と阿津間総帥も含めて一人として存在しないのだからな……!
何故ならば、殲光弾はむろん一般エクルーガ兵に対しては有効だが、生体強化措置を受けた幹部級の場合、銃で魂核を狙った瞬間に100%の確率で弾は逸れるからだッ!
そしてそれは連射モードに切り替えようが変わることはない……つまりいかにしてもそれ以外の方法でしか彼奴らを屠る方法は無いということなのだッッ!!”
「──押忍ッ!承知しておりますッ!!」
左拳を握りしめて応える愛弟子に“うむッ”と頷いた帯刀匡三郎は、チームの足掛け四年にも及ぶバルメスとの抗争の経験を踏まえこう助言する。
“もちろんシャドーロック(戦闘艦)や阿修羅(戦闘機)を駆使した文字通りの総力戦である闘幻境における戦いとは違って、この地上という戦場においては己の躰一つで雌雄を決する肉弾戦が基本になるだろうから決着は大幅に短縮されようが、当然のことながら表面上無関係(侵略者を迎撃するのだからむろん真相は異なる)な一般市民を巻き込むことなく事を運ぶ必要がある──尤もエクルーガの出方次第では我が国の防衛組織である警察や自衛隊が前面に出、総力を挙げて粉砕を図ることになるのだろうが……尤も最悪の場合、影神団の存在そのものが誤解され、攻撃対象になってしまうリスクはあろうが、総帥によるととある有力筋の介入によってその危険性を憂慮するには及ばぬとのことだ──もちろん過信は禁物だがな……”
「──覚悟はしております。
そして、この戦いから逃れる術はないことも……!」
17歳の少年が発した悲壮なる魂の宣言を噛みしめるかのように数秒の間を置いた匡三郎は、
“こんなことは師匠として口にすべきではないと重々承知だが……それでも言わせてくれ、
ミツ……いや景充よ、死ぬ時は一緒だぜ……!”
「押忍ッ、光栄です……!!」
✦
それから30分余り〈襲撃計画〉について大まかな意見交換をしてから通話を了え、景充がベッドに胡座をかいて腕組みしつつ黙想しているとまたもや何者かから着信があった。
「兄貴からか──しかし師匠と打ち合わせでもしてたんかよ、タイミングが良すぎるぜ……」
と独りごちつつ電話に出てみると、兄弟のみならずチームの絶対者でもある景之は珍しく弾んだ声音であった。
“さすがに起きてたか──実はな、藤田に鳳凰陣の冴木遠征長が見えてて今しがた当面の活動方針についてのブリーフィングを了えたところなんだが、親睦を深めるせっかくの機会だから盛大に焼肉パーティーでもやろうと思うんだ。
それでな、こう言っちゃ何だが辛気臭い古民家よりもそっちでやった方が盛り上がるだろうから、これから〈五人衆〉と冴木君に向かってもらう……もちろん鉄板等の調理器具と食材を調達しなきゃならんから、オマエも吉岡君たちの指示に従って準備にかかれ──金?それは五人衆に渡してあるから心配は要らん。
ああ、それから景彦にはこう言っておけ、
手伝いたくなけりゃそれでいいが、その場合明日から3日間メシ抜きで、仮約束してたクリスマスプレゼントも無しだとな……!
うん、それじゃ冴木君は駅からタクシーでここに来てるから一同チーム車でそちらに向かう……でな、オレはシュネビム艦長に久堂君を交えて組織の今後に関する重要な会議があるから、ひょっとしたら顔を出すのは陽が落ちてからになるかもしれんな……。
──ああ、紺堂のバイクか?
あれは富川君(鳳凰陣エンジニア)と肩を並べる影神団の機械部門の権威である犀原君に解体して処分してもらうことにした。
実はついさっき冗談半分で前所有者に劣らぬマニアである北崎君に進呈しようとしたんだが、「よりによってアイツの所有物を引き継ぐなんて、たとえ総帥のご命令でも御免蒙りますッ!」とあっさり拒否られちまったよ……まあ当然っちゃ当然だが、苦楽どころか死線を共に潜り抜けた戦友にこう切って捨てられちゃあ前遠征長も立つ瀬が無いよなぁ……”




