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侵略者に愛されて……  作者: 尾岐多聞
第2章 美しき侵略者には夢がある

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第26話 影神団、光と闇の宴④

 ストーカー退治の記録映像が消えて僅か数秒後にピピピピピッという電子的警告音が鋭く響き渡ると同時に再び画面に光が灯り、素早く手を伸ばした影神団総帥・阿津間景之がクルリと自分に向けてみると憔悴していることがハッキリと伝わる超空大母艦々長の姿が映し出されていた。


「──おお、どうされましたかシュネビム艦長?このパターンの呼出音から判断しますとかなり好ましからざる事態が起こったようですが……!?」


 盟友である阿津間景之の気遣いながらの問いかけにゆっくりと金色の嘴を(もた)げた“鳥人族の荒武者”は、いつもの威厳に満ちた軍人口調とは対照的な慚愧の滲む沈んだ声色で“いきなりお邪魔して申し訳ありません……実はかなりまずい状況に陥りまして……”と切り出してくる。


「──ほう、ということは時間的なことから判断しますに紺堂関連のことで何か不都合が起きたのですか?」


 この瞬間、亜美紗と晶馬の瞳にも緊張の光が疾り、共に固唾を呑んでいかなるアクシデントに見舞われようとも取り乱した表情を見せたことのない総帥の顔色を窺う。


“……いえ、彼に関しては今のところ問題はないのですが、痛恨にも肝心の白皇星が空中分解してしまいまして……”


 これにはさすがの影神団総帥も驚きを隠せず、幹部二人と困惑の視線を交わし合う。


「──白皇星が空中分解ですって?一体どういうことなのですか……!?」


“はい、まず闘主様が定められました通り紺堂は転移中に白皇星への移籍を決意し、上手く先方を言いくるめることによって受入れ態勢も整ったかに見えたのですが、白雷龍の帰還中に突如として敵幹部の搭乗が確実視される真紅の大型侵襲機が出現しまして……”


「真紅の侵襲機?それは珍しい……しかもその色を使用するということは、搭乗者は界帝に極めて近い者と推測できますね……!」


 このコメントに大きく頷きながら、(つよ)い光が蘇ったシュネビムの碧色の双眸が盟友の黒い瞳をようやく直視する。


“同感です──しかも若年女性と推察される此奴は、あたかも事前に申し合わせていたかのごとく単独発進した()()()()()()()()()()にあるであろう白琅狂真を甘言と色仕掛けによってあっさりと籠絡してのけた模様でして……”


「ほほう、それはサカリのついた野良犬の心理のツボを巧みに衝いた妙手といえますが、恥も外聞もなく渡りに船とばかりに飛びついたあの狂真(ガキ)の心中は遥か以前から裏切りへの衝動で常に疼いていたものとみえますな……」


 目を細め、言葉の端にギラリと剣呑な響きを含ませる三次元人の友に白い鳥人も“全くです”と即応してみせる。


“さて、敵軍幹部と狂真の会話を傍受するに及び、もはや一刻の猶予もならぬと断を下したわたくしは矢萩以下の改脳戦士たちを直ちに蹶起させて現総帥の龍侍と狂真直属部隊の拘束に向かわせ、後者はつつがなく完了したのですが以前より顕著な躁鬱的兆候を示していた前者は突発的な自殺衝動に駆られたものとみえ、完全武装の矢萩らに寝台を盾にした十数発の殲光弾銃によるささやかな抵抗を試みた後、意味不明のたわ言を喚き散らしながら頭部を撃ち抜いたとのことでありました……”


「……!」長年の競争相手の死の報を受けてさすがに感ずるところがあったらしい亜美紗と晶馬が小さく息を吐くが、景之は非情にも僅かに唇の端を吊り上げながら「そうですか、()()()()()()()()天晴れな最期ですな……」と弔辞代わりに痛烈な皮肉を捧げる。


“そうですかね?……まあそれも一つの地上的価値観なのでありましょうが、あたかも自死を是とするかの様な消極的姿勢は鳥人族(われわれ)にとって戦士にあるまじき敗北精神の発露としか認められぬのですが……。

 ま、それはともかく何より痛恨なのは狂真がまんまと敵の奸計に嵌まり、そのまま侵襲機に拉致されてしまったことなのです──もとより我々への見当違いの復讐心の虜となっていたことに加え、訣別の折に叔父が弄した無軌道な殺意を煽り立てるためだけの妄言によって極限まで錯乱した彼奴はそれこそエクルーガからありったけの武力援助を引き出させ、その代償として絶対の忠誠を誓った凶猛な刺客として向かってくるものと思われます──何よりも阿津間一族(あなたがた)をメインターゲットとして……!”


「ふふふ、面白い……望むところですよ。

 お話を聞いているうちに久々に血が滾ってきましたから、あえて裏切り者を直接制裁するためだけに私自ら闘幻境(そちら)に出向くのもアリですな……!」


 こう嘯く総帥に「いや、それは鳳凰陣(われわれ)が責任を持って──」と新遠征長が押し留める。


“そうですとも。それに狂真めが吐いた無礼千万な忘恩的暴言の数々は我ら勇気の翼にとっても到底聞き流せるものではなく、冴木遠征長と連携し断固として誅戮する所存です──仮に敵性技術によって身体的魔改造を施されたならばデータ取得の意味でも、満を持して紺堂を立ち向かわせるのも一興でありましょう……!


 しかも総帥、目下のところ真偽は不明ですがコニア=ユフェルスと名乗るこの女性幹部は“侵略将軍”不知火リョオの実妹であるというのですよ──それによると彼奴の本名はリオルグと申すとか……”


「何と……それは興味深い。

 そして不知火といえば艦長、地上(こちら)においてもいよいよ不気味な蠢動を開始したようです。

 そして仄かながらその手口の一端も垣間見えてきました──第一段階としてまず健康で活動的な若者の小集団に強烈な肉体的快楽と視覚作用を伴うエクルーガ製魔薬を付与してどっぷりと洗脳の泥沼へと沈め、後戻りできぬ依存心を植え付けることで堅固な忠誠心を涵養するという酷烈な手段によって着実に兵士育成を進めている模様です。


 更に許し難く、より危険なのはどうやら人工的に生み出した生物兵器を地上世界にバラ撒くことでこの地球を魔界…即ちエクルーガ化しようするつもりらしいということです。

 むろん現段階では小動物サイズに留まっていますが、これが数メートル・数百匹単位に達するだけで人間社会は忽ち空前のパニック状態に陥ることでしょう……しかし余すところなく行使されたエクルーガの悪魔的な生物工学がその程度のモノで留まるとは到底思われぬ──もはや一刻の猶予もありません、近日中に影神団(われわれ)は総力を挙げて不知火リョオ……いいえリオルグ=ユフェルスを討伐するつもりです……!」



 

 





 

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