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侵略者に愛されて……  作者: 尾岐多聞
第2章 美しき侵略者には夢がある

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第18話 双玄魔爪、疾る!

 兄・景之が外出してからおよそ10分後、無地の黒Tシャツと黒スパッツのみを身に着け、右手に30センチ近い、黒い布に包まれた棒状の物体を抱えた阿津間家次男が降りてきて一階和室の襖を開いた。

 

 雨戸を閉め切った八畳ほどの室内奥に安置された金色の巨球=闘主は昨晩と同じ光度で脈動している。


 一礼して入室した景充は、不幸なDR前遠征長よりも後方…つまり神秘の球体からおよそ2メートル半ほど距離を取ると、黒紐が掛けられた包みを前に置いて正座する。


「──よろしくお願い致します」


 深々と上体を倒して叩頭した景充の脳内に直接闘主の音声波動が届けられる。


“よろしい……それでは双玄魔爪(そうげんまそう)を取るがよい”


「はっ」徐ろに躰を起こした美少年が包みを床に置いたまま紐を解いて布を開くと、不吉な黒い輝きを放つ2本の大型ナイフが現れ、景充はまず左手にまとめて持ってから右手で素早く布を畳んでポケットにねじ込む。


「……それでは」改めて両手に魔爪を握った阿津間景充は、正座を解いて胡座(あぐら)をかき、拳を膝に置いて瞑目すると丹田に意識を集中して師・帯刀匡三郎から伝授された独特の〈逆腹式呼吸〉で戦闘態勢に入る。


 鼻孔から深く息を吸いながら腹を凹ませ、大きく息を吐きながら膨らませる内に下腹部の氣の塊が熱を帯びてゆき、そこを起点に下半身を(いわお)のごとくどっしりと安定させると同時に精神を水晶の様に澄み渡らせてゆくが、景充は苛烈な修練の結果、三度ほど繰り返せば丹田を灼熱の坩堝(るつぼ)と化すことができるのであった。


 されど、闘主の攻撃はそれを待ってはくれなかった──呼吸法に入ると殆ど同時に、前夜紺堂武彦を引きずり込んだ“金色の怪腕”が拳を固めて球体中心部からぬっと出現したのだ!


「──てやッ!」電光石火の(はや)さで右手の魔爪を()()()()()()()()()()突き出す景充──かくて金色の鉄拳と漆黒の鋭刃がガキッと鈍い金属音を立てて激突し、両者一歩も譲らぬ気概で押し合う!


 怪腕はこれ以上伸びる気配はなかったが文字通り微動だにせぬばかりか()()()()()()()()()()()()()()()()ため、忽ち右腕に疲労を覚えた景充はジリジリと後退を余儀なくされてしまう。


『く、くそッ……このままではいつものようにあるタイミングで腕を引かれてバランスを崩され、掌底か平手打ちで吹っ飛ばされるのがオチだ……かくなる上は()()()()()()()()()()()が、こちらから手を離して一撃必殺に賭けるしかないッ!!』


 かくて渾身の力を振り絞って前のめりとなっていた阿津間景充はいきなり右手を開いて1本の双玄魔爪を放棄すると、瞬時に左に動いてサッと振り上げた左手のそれに右手を添え、10本の指でしっかりと柄を握りしめると気合一閃、怪腕の真ん中…肘関節付近に思いっきり打ち込む!

 

 鳥人族きっての刀匠・ヤチロフ会心の一振(ひとふ)りとされる双玄魔爪の斬れ味は凄まじく、刃渡り27センチの漆黒の刀身は根元まで埋まり、切先が3センチほど飛び出していた。


「ぬおりゃあああああッッ!!!」


 ここが先途とばかり全力でブレードを手前に引き、怪腕の下半分を豪快に裂いてのけた新生DR隊長は、返す刀でそのまま魔爪を腰だめにして突進すると金色の凶器の付け根を上からメッタ突きにして切断しようと目論む。


 されど恐るべきことに怪腕は死んではおらず、親指〜中指と薬指・小指部分に両断されたのをものともせずに畳の魔爪を拾い上げると、攻撃者の首筋を薙ぎ払おうと唸りを上げて迫る!

 

 魔の一撃を間一髪スウェーバックでかわした景充は、その瞬間を見逃さず闘主の4本の指を寸断してのけたばかりかみごとに漆黒の短刀を奪還していた。


「そりゃあああぁッッ!!」


 雄叫びと共に凄まじい迅さで交互に振り下ろされる双玄魔爪──あたかも大理石の彫像の粉砕を試みるかのような荒っぽい手応えながらも、その名にふさわしい魔性の破壊力を顕現してついに怪腕は球体から切除され、瞬く間に消滅してゆく!


“──よろしい、どうやらそれなりにヤチロフ畢生の傑作を扱えるようになったようだな。

 だがまだまだ熟達には程遠い……よいか、重ねて告げるがその双玄魔爪さえ自在に操れるようになればいかなる敵とも対等に渡り合うことができよう──しかし戦いは技の向上を待ってはくれぬ。

 いやそれどころかエクルーガの動きは想像以上に迅速であり、既にこの地上に幾つもの拠点を築き上げたようだ。


 このまま手を(こまね)いていれば驚くほど短期間で彼奴(きゃつ)らは目的を達するであろう。

 ……さて景之からも告げられておろうが、おまえたち新生ダークネスリングが当面相対せねばならぬのは不知火リョオと自称する【侵略将軍】であるが、私の見立てでは此奴(こやつ)の実力は影神団(おまえたち)が完全討伐まで実に4年を要した死神将軍(バルメス)を明らかに凌駕しておるようだ──とはいえそれほどの長きに渡ってこの者を野放しにすればまず間違いなく、この惑星は狂気の侵略者どもの手に落ちるであろう……。


 よいか景充よ、この闘主に選ばれし血統者の誇りにかけてみごと凶鬼の暴走を阻止してみせよ……!”

 

 






 




 


 



 




 


 




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