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侵略者に愛されて……  作者: 尾岐多聞
第2章 美しき侵略者には夢がある

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第17話 田園の異空遠征軍

「分かりました、そういうことであれば否応もありません──総帥のお眼鏡に叶う新たな仲間たちが充実するまで、影神団の金看板は我々鳳凰陣が死守してみせますともッ!」


 好漢・冴木晶馬の昂然たる宣言に目を細めた阿津間景之は、〈妻〉が横たわっている()()の謎のカプセル越しに右手を差し伸べて力強く応じた新遠征長とガッチリと握手を交わす。


「ありがとう、今更ながら百万の味方を得た思いだ……だがこの埋め合わせは必ずするからな」


「そんな……水臭いじゃないですか、どうか気になさらんで下さい。

 (室内をぐるりと見回し)

 ──すると、この家が新生DRの〈前線基地〉になるということなのですね?

 でも、敵はこの国のどこで暗躍するか分からん訳ですから1か所に固まるというのは……あっそうかッ、()()()()()()()()()……!?」


「さすがに察しがいいな……その通り、侵略者たちが日本のどこにおいて蠢動するか事前に掴むのは非常に困難な作業だが、基本的には全土に放たれた500羽もの天眼鳥(シーカー)の力を借りることになるだろう──加えて隠し玉として各所に〈協力者〉を複数擁しているため、その助力にもそれなりの期待はできると思う。

 そして一度(ひとたび)異変を察知したなら異空間への遠征と同様、闘主が瞬く間に戦場へ送り届けてくれるという訳だ……!」


 その時古い階段が軋む音が響いて二階から何人かが降りてきたが、間髪入れず久堂亜美紗の凛とした美声が迸る。


「あなたたちッ、阿津間総帥と鳳凰陣の冴木()()()がお見えよッ!

 ランニングに出発する前にご挨拶なさいッ!!」


「──はッ!」


 もとよりそのつもりであろう、忽ち居間に集結した黒Tシャツに短パン姿の松島・吉岡・犀原・三浦と、ただ一人黒パーカーに同色のスパッツに身を包んだ北崎ら【DR五人衆】は、当然ながら全員が4年前より風格と凄みを増していたが、元々緑の短髪の吉岡を除く皆が短くなったとはいえ未だ長髪をキープ(松島は青、北崎は紅に染め、犀原は銀髪で三浦は金髪)し、随一の洒落者の北崎は起き抜けながらうっすらとメイクすら施している……。


 しかし異彩を放つ出で立ちながら、あたかも規律ある軍隊のごとく両腕を後ろに回して1列になったDR古参メンバーは「おはようございますッ!ようこそいらっしゃいましたッ!!」と野太く咆哮した後、深々と一礼する。


 慌てて立ち上がり、「いやこちらこそッ、お久しぶりですッ!」と応じる晶馬を好ましげに見上げつつ「やっとこれで両チームがめでたく雪解けとなった訳ね……」と亜美紗が景之を見上げながら微笑む。


「そうなるな……まあ元々同じ軍団に属していながらいがみ合っていること自体が不自然だった訳で、これからは新リーダーの下、活発に相互交流し健全な形での切磋琢磨が行われることだろう──ま、これは私が立ち上げる“第三勢力”にもいえることだがね……」


「ということは、鳳凰陣(われわれ)が〈地上任務〉にあたるケースもあり得るということですか?」


 晶馬の声音が僅かに弾んでいるのに図らずも微笑した景之と亜美紗は共に頷き、総帥はゆっくりと立ち上がると皆の視線を背中に受けながら黒いカーテンを開け放って朝の光を呼び込む。


「──うむ、時と場合によっては、な。

 

 君も知っての通り、現在闘幻境では同志である鳥人族が非常に()()され、軍備も過去最大級に増強されてエクルーガ本陣への総攻撃に向けて着々と準備に余念がない状態だ。


 従って最低でも1チームは現地に留まってその流れに加わる必要があるが、何分にも我が保有艦は泣いても笑ってもシャドーロック1隻きりであるゆえ、あくまでも敵侵攻軍の動向次第ながら予想外にそれが苛烈である場合は人員を割いてでも地上部隊の支援に回ってもらう必要があろうからな……」


「──はあ、なるほど。

 ですがエクルーガはいかなる作戦方針の下、地上を攻略しようとしてるんでしょうかね……!?」


「それでは、目下私が掴んでいる中で、最も大胆不敵に発現している連中の尖兵をご紹介しようか──お手数だが、スマホの動画サイトを開いてもらえるかね?


 次に、()()()()()()と検索してもらいたい……」


「──まさか、エクルーガはネットを使っての侵略を目論んでいるんですかッ!?」


 画面に現れたのはいかにも女性ウケしそうな20代前半と思しき若いイケメン配信者のチャンネルであり、ショートも含めて30本近い動画が投稿されている。


「コイツが……エクルーガの工作員なんですかッ!?」


呆気にとられた部下の問いかけに、影神団総帥は当然ながら大真面目に応える。


「信じられない話だが、間違いない──尤も私的には彼のポジションは単なる一兵卒ではなく堂々たる指揮官クラスであろうと睨んでいるのだが……!」


「──!?」


 開設されたのがたった2週間前とあって登録者は350人余りだが、その殆どがルックスに惹かれた若い女性たちであろうことは想像に難くない。

 投稿内容に目を走らせると内容はチャオとポンズと名付けた2匹のポメラニアンを連れての散歩が殆どを占めており、自撮りではなく友人と称する撮影者が付き従って所々で軽快な合いの手を入れつつもあくまでも基本は不知火青年の一人語り(内容は犬への愛情表現が殆ど)で進行し、BGMもテロップも控えめという最低限の編集で10分少々の動画が構成されていた。


「……一体、敵の狙いは何なんでしょう?

 コイツを若者のアイドルだかカリスマだかに仕立て上げて、日本社会侵略の足掛かりにでもするつもりなんでしょうか?

 とはいえプロパガンダにしてはあまりにも平和的というか他愛無さすぎる気がしますけど……」


 半ば呆れ気味でスキップ鑑賞する冴木新遠征長に対し、阿津間景之は真剣な表情でこう返答した。


「そうかね?

 私は逆に動画から透けて見える奴らの計画の途方もない邪悪さに総毛立つ思いがしたものだが……。

 とにかくこの人物(キャラクター)を使って3.5次元人の狂った頭でしか思いつかぬとんでもない計画を仕掛けてくることだけはたしかだろう……。

 もとより奴らの意思はそのタイトルに堂々と掲げられているじゃないか──『不知火(しらぬい)リョオのユートピアちゃんねる』とな……!」

 


 


 




 

 

 


 


 




 

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