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侵略者に愛されて……  作者: 尾岐多聞
第1章 ソウルメイトはインベーダー!?

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第13話 闘幻境フィールドノート⑤

「平良アアアアアァッッッ!!!」  


 無残にも頭部を消失させられてしまった鳳凰陣副長がドシャリと朽木のように崩れ落ちるのを目の当たりにした帯刀匡三郎は、反射的に戦闘機の先端に装備された殲光弾砲の照準を空中のバルメスに合わせる──砲は固定されておらず特殊なベアリング方式で機体に接合されているため、標的が真正面に存在している場合は、上下左右のかなりのレンジを瞬時に射程圏に収め得るのであった。


 報復のため鋼の怪鳥が27.5°下方に死の嘴を傾けるとほぼ同時に摂氏5000℃の青白いプラズマ弾が吐き出され、黒い鎧のエクルーガ軍人は避ける間もなく溶け去ったかに見えたが、匡三郎の戦闘本能はそうではないことを察知していた。


「野郎、かわしやがったッ!()()()()()()()()!?」


 矛盾した物言いであるのは分かっていたが、この異世界人が健在であることだけは確かなのだ!

 そしてそれは数秒後に証明された──岩が砕ける轟音と巻き上げられた砂塵を背景に、およそ20メートルの至近距離からバルメスが右手をこちらに向けていたのである!


「ちいいいいいッッ!!」


 一刻も早く平良の許に辿り着くため戦装衣無しで搭乗している匡三郎は4点式シートベルトの緊急解除ボタンを押して思い切り前方に突っ伏したのだが、厚さ4.6センチのハイポリマー超硬樹脂製のキャノピーを易々と貫いた100本近い殺光矢はパイロットが数秒前まで背中を預けていた特殊軽合金製シートの薄いクッションカバーに命中し、忽ち蜂の巣状態にする!


『──も、もはやこれまでかッ!?』


 両手で頭を抱えたまま戦慄する鳳凰陣リーダーは無念の死を覚悟せざるを得ぬ土壇場に追い込まれたが、その丸めた背に降り注いだのは誇り高き剣士にとってある意味殺光矢よりも過酷な嘲笑であったのだ!


「ふわははははははッ!

 一軍の長ともあろう者が何というブザマな姿なのだッ、全く正視に堪えぬわ──手も足も出ぬとはまさにこのことだなッ!!


 我が名はバルメスッ!人は私を“エクルーガの死神将軍”と呼ぶッ!!


 見ての通り今この場でキサマを仕留めるのは児戯に等しいが、それでは面白くない……既にツォルペと平良を屠ったこともあり、初期の目的は達したことでもあるしなッ!


 いずれ近い時期に再び相見(あいまみ)えることになろうが、今回の仲間の死を教訓にしっかりと準備しておくことだッ、その時こそ私も容赦せん……短期間に果たしてどこまで進化できるものか、地上人の意地と潜在能力をとくと見定めさせてもらうぞッ!

 ──ではそれまでその命預かっておくぞッ、帯刀匡三郎よッッ!!」


 豪快な哄笑を迸らせつつ、天に向けて撃ち上げられた漆黒の矢のごとく凄まじい迅さで上昇したバルメスは、再び分離して勇気の翼と交戦中(内4機は撃墜され、3機は戦闘不能となって帰艦)の黒い侵襲機の片割れに吸い込まれてゆく。


『……この帯刀匡三郎、24年の人生において間違いなく最悪の恥辱を味わったッ!


 ゆっ、赦せんぞッ、バルメスッ……!!』


 幸いにも四人のパイロットたちの負傷は軽微に留まり、いかなる理由でか降下兵による追撃もなかったため、匡月を着陸させた帯刀は歯を食いしばりながらまず第一に戦死者の遺骸を収容し、続いて脱出者たちの救出にあたるのだった。


 敵艦があっさりと撤収したこともあり、およそ1時間後に総員が出席してシャドーロックの甲板にてしめやかな葬儀が執り行われたが、独自の儀礼として鳳凰陣の紋章が刻印された白い棺を18名の地上人と鳥人族が(まる)く取り囲んで長い黙祷を捧げた後、帯刀遠征長が作詞し、阿津間景之総帥が曲を付した〈隊歌〉を鎮魂の手向けとして静かに唄い上げる……。


 そして最後に蓋を開けて一人ずつ故人に最後の別れを告げた後荼毘に付されるのが通例なのだが、亡骸があまりにも(むご)い状態のため、それは見送らざるを得なかった。


 かくて皆で棺を担いで艦の後部に(しつら)えられた火葬炉へと向かい、完了を待つ間に匡三郎はオペレーターの南 典義(のりよし)から総帥一行が闘幻境へ向けて出発したことを報された。


「──うむ、いよいよわが鳳凰陣にも()()が誕生するという訳か……。


 もとより総帥のお眼鏡に叶った面々をあの紺堂氏が鍛え、率いるのであるから頼もしい限りではあるが……本音を言えば敵の更なる増強が明白となった今、あえて二隊に分ける必要があるのか些か疑問を抱かざるを得んな……おそらくムダであろうが、一応意見だけはしておくとしようか……」


           ✦


 超空大母艦々長・シュネビムは全長1157メートル・横幅542メートルの鮮やかなコバルトブルーに彩られた船体の真ん中付近に設けられた【闘主室】において影神団新メンバーの到着を待ち構えていた。


 そこはおよそ10畳ほどのがらんとした殺風景な空間であったが、中央部に安置された物体──直径1メートルほどの妖しき燐光に包まれた金色の球体をぐるりと囲むように6台のストレッチャーに酷似した移動寝台が用意されていた。


「そろそろだな……」


 腕に巻いた銀色のデバイスをちらりと一瞥した端麗な外貌の白い鳥人は、深い知性を感得させる(みどり)色の双眸を再び闘主へと向けた。

 

 よほどこだわりがあるのが、折り畳んだ背中の双翼もローブを彷彿とさせる衣服も清潔な白一色で固めた勇気の翼最高幹部は、胸の高鳴りに合わせるかのように球体の光度が上がり始めたのを見て口元(20センチ近く突き出したクリーム色の嘴の付け根)を微かに綻ばせた。


『聞けば地上世界(あちらがわ)にもこれと同じ形状の“聖なる球体”が存在するということだが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 何はともあれこの球体こそが我らの支配者=闘主であり、同時に多次元空間の入口にして出口でもある時空穴そのものというのであるから絶句せざるを得ない……望むらくは一度でよいからこのシュネビムも勇躍ここに飛び込んで大いなる旅へと身を投じ、神秘そのものの地上世界の各地を見聞してみたいものだ──』





 


      


        





 


 



 

 

 



 



 




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