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第二章 共犯者

人が死ぬと何が変わり何が起こるのだろうか。

-エピローグ-


覚悟とは怖いものだ。あれだけ吐き気がしていた死体にも平然と向き合えている。初めての一人での分解なのに着々と進んでいる。ここ数日一緒に過ごした思い出を思い出しながら。僕は、クラスメイトを分解していた。


Chapter2.1-体育-


僕の運命が変わったあの日から数日が経った。他の人から見たら僕はこれまでと変わらない寂しく退屈な日々を送っている。だが、僕にとっては違う。それが顕著に現れたのは、今日の1限目の体育だ。


「ほら、好きなもん同士でペアを作れー。」


最悪な号令。この呪いの言葉に何度も恐怖を植え付けられてきた。友達のいない僕はいつも必ず余る。そして、そんな僕を見かねた先生とペアを組む。最悪だ。たまにクラスがちょうど偶数になる時がある。実はこの時の方が地獄だ。最後の一人になるまで余った後に、すごく嫌な目で見られながら渋々ペアを組んでもらう。この時僕は申し訳なさと恥ずかしさでいっぱいになる。だから、僕は体育が嫌いだ。運動が嫌いな訳ではないのに。


「リク君、ペアを組もうよ」


「え、良いの?」


「もちろん!俺たちは友達じゃないか」


友達。そう、これまでの僕と今日の僕は一味違う。友達ができたからだ。松井君とペアを組むことで僕は余ることがなくなり、代わりに余るやつが先生とペアを組んでいる。やっとこちら側の人間になれた。僕はこれから体育を好きになるかもしれない。それぐらい友達は、松井君は偉大なのだ。


「それでさ、ちょっと相談があるから放課後一緒に帰ろうよ」


「相談?、うん、良いよ、友達だからね」


松井君が僕に相談をしてくれるらしい。信頼してくれている証拠なのだろうか。僕たちは、特別なつながりを持っているからなのだろうか?


Chapter2.2-標的-


放課後になり、いつもの帰路に着くわけではなく、松井君と共に道を歩いている。目的地は聞いていないが、構わない。友達と放課後過ごすなんて夢が叶った気分だ。


「ここら辺でいいかな。座ろっか」


松井君は立ち止まってそう言うと、目の前の廃墟の中へ入って行った。こんなところがあったなんて僕は全く知らなかった。松井君と共に廃墟の中に転がる車のタイヤ止め?のようなものに腰をかけた。


「それで、相談なんだけどさ」


少し思い当たる節はあるのだが、松井君に合わせて話を伺う。


「なに、相談って?」


「俺、そろそろまた人を殺そうと思うんだ。」


やはりきた。ここ数日はおとなしくしていた松井君だが、我慢の限界が来てしまったようだ。


「僕は分解をすればいいってことだよね?」


「そうそう、流石話が早いね」


僕は殺人鬼松井君の協力関係にある。松井君が殺した人を僕が分解するのだ。僕にとってこの役は誰にも渡せない特別なものだ。だから、松井君がどれだけ殺そうと僕はただ分解するだけだ。


「それで殺す人なんだけどさ、」


そうだ、今から誰かの命が奪われるのだ。人生が終わるのだ。それも松井君の快楽のためだけに。


「俺、次は、クラスメイトを殺そうと思うんだ。」


「!?」


思わず驚いてしまった。全く予想していなかった。確かに松井君の殺人に特に動機はなく思いのまま殺す。クラスメイトが対象外になる訳ではない。クラスメイトに思い入れは全くないが、あまりに身近な犠牲に動揺してしまう。だが、僕と違って松井君は心から何とも思っていないようだ。


「それでさ、リク君に殺す人を決めてもらいたいんだ。」


「え?!、僕が?」


「そう、今回の俺のテーマは驚きの殺人。俺がサプライズを受けながら殺したいんだ。」


「どういうこと?」


「これからこいつを殺すんだーと思いながら殺したいんだよ。分かる?」


全く分からない。要は、殺人のターゲットを直前に聞き、驚いた状態で殺したいということだろう。


「だからさ、数日後の放課後ここにクラスメイトを一人連れて来てよ」


「僕が?でも僕がクラスメイトを連れてくるなんてできるかな・・」


そうだ、クラスに話せる人が一人も居ない僕にとってこのミッションは難易度がとても高い。それに本格的に殺人に加担する抵抗感も拭えない。


「できないなら、大丈夫だから、他の人を使って・・」


「やるよ」


「本当?!やったね」


他の人を松井君が頼るところなど、想像するのでさえ苦痛だ。僕が特別なんだ。友達は僕なんだ。だから僕は松井君のために、殺されるクラスメイトを調達する覚悟を決めた。


Chapter2.3-仲間-


僕は一晩かけて殺されるターゲットを絞り出した。


「絶対あいつがいい。」


だが、僕が一人で声をかけられる訳がない。協力者が必要だ。そこで、僕が選んだのは、


「何だ?星空だっけか」


「はい!」


「それより何のようだ。」


「乙骨って人知ってますか?」


「当たり前だろ!クラスメイトじゃん笑」


「僕、彼と友達になりたくて、でも勇気が出ないんです。手伝ってくれませんか?」


「えー、ちょっとめんどそうだなー」


「クラスで一番人気のある君にしか頼めないんだよ」


「クラスで一番?!、そうさ、クラスで一番の人気を誇る俺に任せとけ!まあ、大船に乗ったつもりでいて良いぜ!」


こうして、クラス一のお調子者道丘大志を協力者として迎え入れることに成功した。チョロかった。


「まずは、あいつのことを知ることから始めないとな」


「知るって例えば?」


「何でも良いんだ。趣味や思考。あいつがどんな道を通ってどこに帰ってるかとかな」


「どうやってそんなこと知るの?」


「もちろん尾行だよ」


「でも、それってストーカーじゃ、」


僕は道丘から拳骨をもらった。本人曰くこれはストーカーではないらしい。それならそうと口で説明して欲しかった。頭にたんこぶができた気がする。まずは学校で乙骨を観察することになった。何故なら僕は隣の席で観察し放題だからだ。乙骨は基本授業中は真面目に授業を受けており、休み時間になると携帯を覗くか、フィギュアにボソッと喋りかける。


「今日体を洗ってあげるからね」


こんな具合だ。普通に気持ち悪かった。とりあえず見たことを道丘君に報告することにした。


「なるほどな、友達はおらず、アニメや漫画にのめり込むタイプだな。」


「それで、どうすれば良いの?」


「そうだな、まずは、これだな。」


放課後道丘と一緒に向かったのはアニメショップだった。男の人が多いのかと思っていたが、意外と女の人も多い印象を受けた。だけど、入り口にアニメキャラクターのパネルが置いてあって、少しアウェーな感じがした。僕は人並みにしかアニメを見ないからコアなのは全く分からない。


「道丘君、ここで何をするの?」


「そりゃ決まってるだろ、乙骨の好きなアニメのことを勉強するんだよ」


「勉強?」


「そうだよ、自分への理解を得たいなら、まずは相手のことを知ること。勝手に相手が自分を好んでくれるなんてそんな甘いことはないぞ」


「そういうものなんだね」


確かに道丘君の言う通りで、乙骨君が今日から突然僕のことを好きになることはない。友達作りには努力が不可欠なようだ。もっと早く教えて欲しかった。


「よし、大体分かったな、なら明日の作戦はこうだ」


僕は道丘君に授かった作戦を胸に次の日、教室で行動を起こした。


「ちょっと、待ってよ、、それは!」


「は?」


「それは魔法少女リリカルリリィのリリィちゃんのフィギュアじゃんか!」


「え?」


「そうだよね?いやーこんなところで見れるなんて、すごいね乙骨君!」


「君も、リリィちゃんのこと知ってるの?!」


乙骨君が食いついた。畳み掛けるのは今しかない。


「もちろんだよ!、良かったら乙骨君が思うリリィの好きなところを教えてよ!」


「そんな、僕の話を聞いても面白くないだろ、、」


「そんなことないよ!乙骨君から聞きたいんだよ」


「じゃ、じゃあ」


乙骨君は話始めた。すごい、道丘君の立てた作戦の通りだ。昨日道丘君に言われたのは、


「良いか、オタクってのはまず自分の好きなものを好きなやつが好きなんだ。だから、まず乙骨の好きなフィギュアを褒めろ、そして次のステップはあっちから喋るように誘導するんだ。オタクは自分の好きなものを誰かに聞いてもらう時、すごく快感を得る。そして、とんでもない早口になる。だから、何を言ってるか聞き逃すだろうから、とにかく相槌を打て」


「オタクにも詳しいなんて道丘君はすごいね」


「まあな!友達作りマスターの俺に任せろって言っただろ?」


昨日そんな会話をしたのだが、完璧に上手くいっている。これが友達作りか。少し心理学的なことにも似ているように感じる。とにかくこのまま上手く乙骨君が話続けてくれたら信頼を得られるらしい。教室の角で様子を伺っている道丘君から指でグッドのサインが出ている。このままいけば、、


「ねえ、ちょっと、あそこの早口のやつキモくない?」


「?!」


乙骨君は喋るのをピタッとやめてしまった。誰だ邪魔をする奴は、


「ああいうオタク?みたいなの嫌なんだよねー」


「ちょっとやめなよ未来ちゃん」


「えー、だってさー」


どうやら教室で話していた桃奈と中山に邪魔をされたらしい。と言うより中山の単独犯と言っても良い。上手くいってたのに、なんてことをしてくれたんだ。


「もう、良いだろ、これぐらいで」


まずい、乙骨君が完全に引っ込んでしまった。どうしたら良いのか分からず黙りこんでしまう。と、そこへ救世主が現れた。


「なあ、乙骨、放課後に俺の家でさっきの話の続きを聞かせてくれよ」


そうヒソヒソ声で言ってきたのは道丘君だ。どうやら助け船を出してくれたようだ。


「君は、道丘だっけ、でもなんで?」


「いや、俺もさっきの乙骨の話を聞いてたら興味が湧いちゃってさ!星空と一緒に放課後来いよ!」


「まあ、ここじゃないなら話しても良いけど」


「よし、決まりだな!」


本当に助かった。流石の起点だ。これで、ピンチは魔逃れた。道丘君の手元を見ると、こっそりグッドのサインをこちらに向けている。


「これは、友達が多い訳だよな」


自分との違いをとても強く感じた。


Chapter2.4-盗難-


「さっきは危なかったなー笑」


「ありがとう、助かったよ!」


「これぐらい朝飯前だよ」


一足先に合流した僕と道丘君は軽く談笑をしていた。


「でも急に家に行っちゃって良いの?」


「まあ、大丈夫だよ」


そう言う道丘君だが、心なしか表情が曇っているように感じた。


「お待たせ」


やって来た乙骨君と共に僕たち三人は道丘君の家へ向かい歩き出した。僕の家とは反対方向にあるようで、僕もあまり見慣れない道を歩いていく。ここらへんの地域は確か盗みが多発しており、大金を持って近づいたら鴨になってしまうので、大鴨通りと呼ばれていたはずだ。そんな警戒の必要な通りだが、道中は道丘君がずっと僕たちに話題を振ってくれたので、比較的早く目的地に着いた感覚がした。


「ここだ、入ってくれ」


「「おじゃましまーす。」」


そこは、豪華な豪邸!、、、とはお世辞にも言えない所謂ボロ屋敷だった。こんなところにあんな明るい道丘君が住んでいたとは意外だった。中に入ると部屋にはほとんど何もない畳だけの部屋に通された。


「おどろいたか?笑うちは金がなくてね、だから、逆に気楽にゆっくりしていってくれ」


それもそうだ、気を取り直して乙骨君の話の続きを聞き始めた。僕も大袈裟めに相槌をついたが、道丘君は相槌を本当に気持ちの良いところで入れており、乗せられた乙骨君は次から次へと話していった。日がくれきるくらいの頃、話を終えた乙骨君は


「こんなに楽しかったのは初めてだよ!二人とも僕とこれからも仲良くしてくれるかい?」


「「もちろん!」」


それを聞いた乙骨君は見たことない笑顔でまた明日とだけ言い残して先に帰っていった。


「上手くいったな」


道丘君がそう言ってくれて安心した。彼から見て成功なら間違いなく成功だろう。本当にありがたい限りだ。


「本当にありがとうね、全部道丘君のおかげさ。」


「そんなことないよ、それに俺は当然のことをしたまでだよ」


かっこいい。これが人気者というやつか。しかも努力している。僕が友達がいなかった理由が本当に身に染みて分かってくる。


「ただいまー」


「?!、なんで、まだなはずだろ!」


急に道丘君がとてつもなく焦り出した。おそらく親御さんが帰ってきたのだと思うのだが、やはり家にあげてはダメだったのだろうか。


「大志いるんだろ?手伝ってくれよ、今日は大量だからよ」


「ああ、待ってて」


どうやら道丘君のお父さんのようだ。これだけお世話になったのだから挨拶に行こうと立ち上がった瞬間、


「ガシッ」


道丘君にすごい形相で睨まれながら手首を掴まれた。


「帰ってくれ」


「え?」


「帰ってくれ、頼むから」


「でも、僕ご両親に挨拶だけでも」


「いいから、帰れよ!」


道丘君は急に大きな声で叫んだ。しかも決死の表情で、さっきまでの優しい道丘君が嘘みたいだ。あまりの出来事に僕があたふたしていると、


「ほらこんだけあるんだ、早く手伝えよ、て、あれ?、誰だそいつ」


「俺の友達だよ」


「ふーん」


道丘君に友達と言われた。僕はまた友達が増えたのだろうか。道丘君のお父さんは手に何か大量に持っている。それをよく見てみると、


「それって、財布?」


「あー、バレちゃったか」


どう言うことなのだろう。明らかに自分のものではない量の財布を手にしている。道丘君のお父さんは何故こんなにも、


「俺、スリのプロなんだよね」


「スリ」


 とんでもなく驚いている。道丘君のお父さんはスリをやっているようだ。もちろん犯罪だ。 道丘君はこのことを知っているんだろうか?道丘君の方を見ると下を向いてしまっている。


「とりあえず、お邪魔しましたー」


とりあえずここは撤退するしかない。嫌な予感がする。そう思って退散しようとしたがもう遅かった。


「いや、待ってよ、君。ちょっと逃すわけにはいかないよ」


「いや、僕、何も見てませんから!」


「な訳ねえだろ!」


思いっきり首元を掴まれた。びくともせず逃げられない。どうしよう。


「やめろよ親父」


「おい、いつからそんなに偉くなったんだ。ああ?」


道丘君が助けに入ってくれたようだが、どうやら恐怖で震えているようだ。その様子を見て普段の二人の接し方が手に取るように分かった。


「お前も痛い目に遭いたいようだな」


このままでは道丘君までやられてしまう。咄嗟にポケットに手を伸ばして携帯を取り出して叫んだ。


「警察を呼ぶぞ!僕を離せよ!」


「何?」


道丘君のお父さんは慌てたようで僕を投げ飛ばした。


「大丈夫か?!」


「うん、僕は大丈夫」


道丘君が心配してくれているが、今はそれどころではない。


「道丘君のお父さん、今後僕や道丘君に危害を加えることがあったら今の録画を警察に持っていくから覚悟してください」


「そんなのハッタリに決まってんだろうが!」


「良いんですか?警察呼びますよ?」


「クソッ、」


そう言って道丘君のお父さんは家の外に飛び出して行った。全て僕のハッタリだったのだが、どうにか上手くいったようだ。


「はー、よかった」


「ごめんな、こんな親で」


「良いよ、うちも、同じようなものだからさ」


苦労する親を持つ気持ちは痛いほど分かる。


「このことは誰にも内緒で頼む」


「もちろんだよ」


深くは聞かない。おそらく道丘君はこれまで犯罪に加担していたのだろう。だから、人の目を気にして生きるうちに人のことを気遣えるようになったのだろう。これが、人気者の秘密だったんだ。


「また、遊びにこいよ!」


「うん、ありがとう!」


僕は道丘君との仲が確かに特別なものになったのを感じながら家へ帰宅した。


Chapter2.5-限界-


この数日、二人ものクラスメイトと仲良くなれた。僕でも友達を作ることができるのだろうか。そんなことを考えていると彼はやって来た。


「リク君、そろそろ誰にするか決まったのかい?」


「松井君、」


「僕もそろそろ我慢の限界なんだけどいけるかな?」


確かに松井君は頬を赤らめて目も地走っている。殺したくて殺したくてたまらないのだろう。


「準備はできたよ」


「やったね!なら今日の放課後この間の廃墟に呼び出してよ」


「分かったよ」


僕は今日本格的に松井君の共犯になる。覚悟は決まっているし必ずやるけど、やはり良い気分ではない。だが、この数日間準備して来たから問題なく呼び出せる筈だ。


「よし、」


放課後のチャイムが鳴った後、先に廃墟の中に着いた。ターゲットには廃墟に直接来てもらうことにした。少し緊張して待っていると。今日殺される彼がやって来た。


「どうした、こんなところに呼び出して」


「まずは、来てくれてありがとう」


「え?」


「いや、僕なんかの呼びかけに応じてくれて嬉しくてさ」


「当たり前だろ、友達なんだから」


「そうだよね、だから、君に死んでもらうことにしたんだ」


「なんだよ死ぬって笑冗談言うなって」


大きな声で笑っている。心の中から警戒しないでいてくれているようだ。殺されに来てくれた道丘大志君には感謝だ。


「本気だよ」


「は?ちょっと待てよ、意味が分からねえって」


「そうだよね、少し説明するね」


「、、、」


「僕は最初誰を殺せば良いか悩んだんだ、そこで一番みんなにとって必要ないのは誰か考えた時に真っ先に君が思いついたんだ。」


「俺がいらないだって!?」


「そう、君はみんなと仲が良いよね。でも、君がいるせいで僕のクラスはみんなバラバラなんだよ。何故なら君と友達の友達ということで繋がってしまうからだ。だから君がいなければ他のみんなはもっと友達になれる筈だよ」


「なんだよ、それ、意味わかんねえよ!」


「それにね、君とここ数日一緒に過ごして分かったんだ。君は誰にでも優しい言葉をかけるよね?それは何故か分かるかい?君が優しい言葉を欲しているからだよ。君は許してほしいのさ、優しい言葉で、犯罪者の子供であり、犯罪者の片棒を担いでいることを。」


「何を、そんなわけねえだろ!」


「つまり君の言葉は全て偽物、君が僕に言ってくれた友達という言葉も本物じゃない、偽物なんだよ!」


「もう、いい、分かった、お前がそんなやつだったとは思わなかったよ、友達だと思ってたのに」


そう言って道丘君は廃墟から出ようと歩き出した。相当心にダメージを負ったみたいだ。だが、ここから逃げることはできない。


「もう、良いかい?リク君。素晴らしいサプライズだったよ。まさか、人気者の道丘君とはね、それに君達のやりとりを聞いていたらもうたまらないよ」


「うん、待ってくれてありがとう。良いよ、始めて」


そう言った途端、混乱して言葉を発せないでいる道丘君の元へ松井君はあっという間に詰め寄りその時は訪れた。


「グサッ」


松井君の愛用のナイフがキレイに道丘君の心臓部に突き刺さる。


「グフッ、松井、お前、なんで、嘘だろ、」


血を吐きながら喋る道丘君に松井君はこう答えた。


「なんでって理由なんかないよ、殺したいんだもん」


それを聞いた道丘君はみるみる力が抜けて言ったが、最後の力を振り絞って僕に言い残した。


「友達だと思ってたのに、本当に特別だと、俺が敵わなかった親父に立ち向かってくれたお前を、本当の俺を知っても軽蔑しなかったお前を、なのに、やっと、出会えた、友達だったのに」


道丘君はそう言い残して、大粒の涙を流して、死んでいった。僕はこの時に抱いた感情は名前の知らない感情で、もう一生感じることがない気がした。


「あー、気持ち良かった、それじゃ分解の方よろしくね」


「もちろん、任せてよ、」


「やっぱ君は最高の友達さ!」


そう松井君に言われただけで頑張れる。どんなことでもできる気がした。勢いに乗ったまま分解を進めていると、道丘君の手が目に入った。この手は覚えている。あの日、あの時、僕に拳骨をくれた手だ。そう思うと、数日前のことなのにこの手が懐かしく感じた。

第三章に続く

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