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第二十一話『竣工式(セレモニー)』

あれから数ヶ月。 『礎の谷』は、かつての活気を取り戻していた。いや、それ以上だった。 東地区に立ち並ぶのは、統一されたデザインと堅牢な構造を持つ、真新しい工房群。そこから響く槌音や稼働音は、以前よりも力強く、そしてどこか誇らしげだった。災害の爪痕は、もはやどこにも見当たらない。街は、美しく機能的な都市へと「再開発」されていた。




その日、街の広場は、住民たちの笑顔で埋め尽くされていた。復興完了を祝う**「竣工式」**が開かれたのだ。 壇上に立った領主は、感慨深げに街を見渡し、そして隣に立つコウスケに向き直った。




「皆、聞いてほしい! この街が、かくも早く、そして力強く蘇ることができたのは、一人の男と、彼が率いるギルドのおかげに他ならない!」




領主は、高らかに宣言した。




「よって、本日をもって、コウスケ殿のギルドに、新たな名を授ける! 彼らはもはや、単なる冒険者ギルドではない。この街の未来そのものを設計し、築き上げる組織…『礎の谷・都市開発ギルド』である!」




割れんばかりの拍手と歓声が、広場に響き渡る。 レオは照れくさそうに頭をかき、クララは誇らしげに胸を張り、ギムレットは満足げに腕を組んだ。そしてコウスケは、集まった住民たちに、静かに一礼した。




その夜、生まれ変わったギルドハウスのオフィスでは、ささやかな祝宴が開かれていた。 机の上には、領主から授与された真新しいギルドの看板が置かれている。




「『都市開発ギルド』、か。大層な名前になっちまったな!」




レオが豪快にエールを飲み干しながら笑う。




そんな中、一人のギルド職員が、一通の羊皮紙をコウスケに届けた。 差出人は、ヴァレリウスに代わり、新しく再編された商業ギルドの長からだった。その手紙には、これまでの非礼を詫びる丁重な言葉と共に、こう記されていた。




『――つきましては、今後の街の発展のため、貴ギルドと正式な業務提携を結ばせていただきたく、ご検討のほど、お願い申し上げます』




それは、旧時代の終焉と、新しい協力関係の始まりを告げる、正式な通知だった。 クララが、満足げに呟く。




「これで、この街のプロジェクトは、ようやく一段落ね」




コウスケは、窓の外に広がる、復興した街の灯りを静かに見つめていた。 それは、彼がこの世界に来て、初めてゼロから築き上げた「作品」だった。 彼は、机の引き出しから、一枚の古い羊皮紙を取り出す。 そこには、こう書かれていた。




【大陸古代建築群・保全計画:フェーズ1・実現可能性調査(Feasibility Study)】




「いや、まだだ」




コウスケは、仲間たちに向き直った。




「プロジェクトは、まだ始まったばかりだ」

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