自分というものーー散文ーー
自分というものが、いる。
其れは物を書くときに、閉架書庫で物を漁っているときに、よく現れ、発見される。
他の何でもない、他の誰でもないーー確かな自分自身。
全てを忘れ、全てを吸収し、吐き出す前を見据えて唯に真っ直ぐ行動する、頑迷な夢中の化物。
其れは自分の領域を真相ですっかり理解しきり、その領域のなかで一所懸命に息をして、ひた走る。
ーー……書ける。探せる。読めるーー
思考が瑞々しく生まれる。
この時間を識るために私は生まれて、美しいものたちの元へ届いてゆけるのだ。
ーー……私は、こうでしか、ない……ーー
こうする本分と本性とで以て私は運用されている。
淀みなく、言葉を探り当てて涌かせる為の、イキモノなのだ。
物を読み、書くとき、私のなかで全てがピッタリと嵌まって整っていく。
怖いぐらいに、明瞭に世界が見渡せる。
ーー私の世界は、其処に在るーー