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5:再会 上

ヒュージ達との壮絶な戦闘があった後、気づけば俺はギルドの救護室に横になっていた。

あの後、武器を持っていなかったあの男は大丈夫だっただろうか。



「いっ…」



いつもの癖で、手を動かそうとする。

本来は痛みを感じないはずの手に、違和感と肩の痛みを覚えた。


「そうだ…俺の右腕は…。」



利き腕だった右腕は消滅しており、右手を動かす信号は痛みへと変化していた。

ズキズキと、動かそうとするたびに痛みが走る。



「ちっ…。不便になったもんだなぁ…。」



「「レイボット!!!」」



右腕の消失に悲壮感を感じていると、部屋のドアが開いたような音が鳴り、

腕を犠牲にしてまで助けた仲間の声が聞こえる。

寝返りがうまくできないので、首を傾けて駆け寄る2人の姿を見た。



「馬鹿野郎!俺らを庇って腕まで失くしやがって…。無事でよかった…。」



コレットは拳を握りしめ、顔を俯かせる。よく見えないが、悔いているようだ。


「うぅ…レイボット、無事でよかった…本当に、本当に…」



サインは声色からは、悔しさで声が震えている。そしてなにより、悲しんでいるのが伝わる。



「たいしたことないよ、お前らが助かってくれただけで、御の字だ。こちらこそ、わがまま言ってすまなかった。」



「謝るなよ!お前は本当によくやったんだ…!俺なんざ、最初にくたばっちまった。情けねぇ…。謝るのは俺のほうだ。」



コレットは自分の非を認め、深々とレイボットとサインに頭を下げた。

サインは涙を流しながらも、コレットの謝罪と同時にレイボットに声をかける。



「あの後、意識を失った私たちに、救援隊が来てくれて…!

レイボットが私たちを必死に守ってくれたおかげで、誰一人失うことなく生還できた…!本当にありがとう、そしてごめんなさい…」



この世界は命あってこそ。魔物との戦いは一攫千金にもなりえるが、常に死と隣り合わせだ。故に、今回のような事態も稀にある。

ただ今回は、青いヒュージに赤いヒュージ…。異常個体に新種のヒュージときた。

ギルドに報告しなければ、とレイボットは無理やり体を起こす。サインはあたふたしながらも、レイボットの背中を支えた。



「…青いヒュージと赤いヒュージが出たんだ…!ギルドに伝えなければ…!」



「青いヒュージに赤いヒュージだと!?お前よく生きてたな…。」



コレットは冷や汗をかきながらも、レイボットの情報に驚愕した。

サインは一部始終を朧げに覚えており、不安そうな顔でレイボットを見る。



「かなり緊急事態だ…。ヒュージ1体でも脅威なのに、青いヒュージは4匹、赤いヒュージは1匹いた…。

受け流すだけでも精いっぱいだった奴が、まだ存在しているんだ!早く伝えなければ…。」



正直、ギルド総出でも討伐には危険を伴う可能性がある。

レイボットは肩の痛みに耐えながらも、自分がもう戦えない喪失感に負けないようにしていた。



「そういえば…あの時助けてくれた、あの…ん?」



「どうしたの?レイボット…?助けてくれた?」



そうだ、助けてくれた…。助けて…くれた…。

なんだ?思い出せない…?誰かが助けに入ってくれたはず…。



(『そ…で待ってて…れ』)



「あの場にもう一人いたはずなんだ…。でも…本気で思い出せない…。」



「ちょっとまて?おかしいな…。救助隊の話では、青いヒュージらしき遺体が1つあったって話だ。それ以外に3匹もいただと!?

俺らよく生きていたな…。」



「うん。確かにおかしいかも…。

救助隊からの連絡では、私たちが倒れていた場所には、他に誰もいなかった、森はいつも通りの光景だったみたいだよ。

私が完全に意識がなくなる前に、レイボットに回復魔法を施した時は…青いヒュージは1体だけだったはず…。」



どういうことだ…?何かがおかしい…。

でも、おかしい部分を何も否定できない…。

極限状態だったからか…?あの時の記憶が混在しているのだろうか…。



「それよりも…。お前は、まだ怪我人だ。ヒュージの件は俺が伝えておく。いったん休んでいてくれ。」



「しかし…!うっ…」


レイボットは無理に体を起こしたせいか、全身の傷が悲鳴をあげる。

彼は腕だけではない、全身重傷を負っている。レイボットが動けていたのは仲間を助けようとする精神力だけだった。



「待ってコレット、私も行く。」



サインはゆっくりレイボットを寝かせると、ゆっくりと部屋から出て行ったコレットの後に続いた。

思えばレイボットの右足は形は戻ってはいるが、一度変な方向に曲がっていた。



(くっ…本当に思い出すたびに、痛みが増えていくな…。)



戦闘時の傷はかなり根強いものとなっていた。

冒険者として、フレア・イントマスに拠点を移し、実力をあげてきた。

しかし、ここにきて冒険者生命の危機に立たされてしまっている。



「ここまでなのか…。」



全身の痛みとともに、これからの未来を考えて、ただ絶望するしかなかった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ギルドのトップが仕事をする場所まで来たコレットとサインは、先ほどレイボットからもらった情報をギルド長へと伝えた。

ギルド長は机をたたき、立ち上がると、困惑した表情でコレットとサインを見る。


「なんだって!?新種のヒュージが…?なんてことだ…。」


ギルドのトップであるドルチンは、常日頃から冷静な判断を下す完璧主義のリーダーと評されており、

薄紫色のロングヘアーで整った顔と戦闘面でも魔法に長けた実力で、女性人気が絶えない男性である。


だがそんな冷静な彼も、今回の事態に、驚愕の意を言葉にする。

レイボットとコレット、サインが討伐した"黒いヒュージ"だけでも複数人での討伐が推奨されている。

それなのに、機動力が強化させた青いヒュージが出現し、さらには新種の赤いヒュージときた。



「それは…確かなのですか?」



「はい…。レイボットがわ、私たちを守る際に対峙したようで…。」



レイボットといえば、冒険者として腕は確かで、話していても信用ができる人間だ。

彼が見たというのであれば、嘘ではないだろう。

それにサインの怯え様も相まって、核心に変わっていく。

ドルチンは、薄紫の長い髪を束ねて結ぶと、冷や汗をかきながらも近くにあった資料を開く。



「むむむ…。この異常事態時に、危険性が高いヒュージの出現…。一体なにが起きようとしているのでしょうか…。」


この異常事態というのは、国境付近に設けられた"壁"のことである。

"壁"のせいで別の国にあるギルドとの連携が取れていない今、戦力もフレア・イントマスにいる冒険者に限られる。

国の近衛兵…ましてや勇者に協力を仰ぎたいところではあるが、立場が弱いギルドでは、情報の少ない状況で動いてくれるとは思えない。



「青いヒュージの最後の出現は、おおよそ2年前…。その頃は討伐隊を組み、近衛兵とともに総勢20名で立ち向かって辛勝…。」



資料を見ながら、ぶつぶつと話し続けるギルド長に対して、コレットは口を開く。



「正直、辛勝っていうのもわからんでもない。実際攻撃を受けたときは、衝撃が黒いヒュージのおおよそ2、3倍ぐらいで、早さもそれぐらいだった。」



「なるほど、確かに資料…報告書の通り、厄介ですね…。サインさんはどうでしたか?当時の様子は…?」



「ごめんなさい…私は出現時を見ていなくて…その…衝撃で気を失ってしまって…。」



サインはあの時の情景と痛みを思い出したのか、体が少し震え始めた。



「そうでしたか、それは失礼しました…。むむむ…ぶつかった衝撃で気絶するレベルと。これは非常に危険な状況ですね…。

赤いヒュージは情報もないので、野放しにしておくのは…。お二人とも情報提供有難うございます。

今はレイボットさんの元にいてあげてください。」



「「はい!(わかった、)」」


ギルド長の声とともに、コレットとサインは急いで部屋を後にした。

仲間が心配なんだろう。動きとして正解だ。



出て行った2人を見送ると、ドルチンは資料と証言をもとに、紙とペンを用意して椅子に座る。

第一王女の誕生、壁の出現、新種のヒュージの出現…。



「すべて同時期…あまりにもタイミングが良すぎる。誰かが裏で糸を引いているとみてもいいかもしれない…。」



ドルチンは、文字の汚さを気にせず、自己の分析の基、今回の1件とともに書状を書き上げる。

勿論、宛先に記しているのは、フレア・イントマス…国に対してである。


「ギルドの戦力だけでは、この事態に対応しきれない…!新種のヒュージがもし国に攻めてきたら危険だ。証拠が無くてダメもとでも送ることに意味がある。

ボイト!いるか!」



ギルド長はボイトと呼ぶと、どたどたと足音が鳴った。



「ドルチンさん、お呼びでしょうか!」



「急ぎ、この書状をフレア・モンパディ女王陛下のもとへ。緊急事態だと念を押して頼む。」



「かしこまりました!今向かいます!」



ボイトは、書状を受け取るとすぐさま届けるために、大急ぎで部屋を後にした。




「頼むぞ…。我々の命が危ぶまれる緊急事態だ。」



ドルチンは額に汗をかきながら、資料…2年前の報告書を凝視する。

"壁"といい、"新種のヒュージ"…もはや国も無視できないだろうと、顔をしかめた。

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