4 シャキシャキもやし餃子を作ろう!
とある月曜の午前中。
玲奈は仕事が休みだからのんびり過ごしていた。
高校のときのジャージに半纏を羽織り、コタツでみかんをいただく。
録りためておいたバラエティ番組を見る。
日本各地の美味しいご当地グルメを紹介する、その名もコクミンショー。良い番組だ。
「おおぉ。とんかつラーメンか……。なんという罪深い食べ物なの。さすがに岡山まで食べに行くのは大変だよなぁ。うちで作ろうかな。いや、しかし冷蔵庫の食材を優先して食べないと」
作れそうなものを手帳にピックアップしていたら、宅配荷物が届いた。
送り主は、新潟に住んでいる父方の祖父だ。
「じいちゃん何を送ってきたんだろ………って、おおおおおおおお、日本酒!! 清酒! じいちゃんサンキュー!」
さっきまで頭が半分寝ていたけれど、完全に目がさめた。
父方の祖父は酒の町・摂田屋の民。酒蔵が多いからあまり都会に出回らないようなローカルな酒を送ってくれる。
冷蔵庫の中身とも相談して最適解のレシピを割り出す。
「熱燗と焼き餃子にするしかないねぇ!」
彩夏にメッセージを送ると、ちょうど休憩中だったのか二分でスタンプが連投される。
ヤッター!
ぜったいおいしい!
たのしみ!
子どもみたいに喜んでいる。
今のうちに足りない材料を買っておこう。
夕方になり、彩夏がスキップでやってきた。
「こんばんはー、栗さん! 今夜は餃子でしょ! 中に入れたら楽しそうなもの買ってきた! ピザチーズと、白菜キムチと、しらすー、高菜漬け!」
「あらいいわねー! さっそく作りましょ」
ボウルに豚ひき肉を入れてビニール手袋でよく捏ねていく。下味は醤油と日本酒と顆粒鶏ガラスープのもと、チューブのすりおろし生姜。
「彩夏。ニラをハサミで切って入れてくれる?」
「はーい! 包丁使わなくていいなんて楽チンだね」
「そそそ。キッチンバサミは一つあると便利よ。あともやしを袋の中で潰して、ここに追加して」
「わー。超楽ー!」
彩夏が袋から出さないままのもやしをパキポキ折って、細かくなったものをボウルに入れる。
「これで捏ねたら、基本のタネの出来上がり。あとは好きな具を添えながら包みましょ。皮ならたくさん買ってあるわ!」
30枚入りの皮を3袋。
「こんなにたくさんいいの!? 食べ放題だ!」
「餃子を包んで、食べきれない分は冷凍してそのうち水餃子にすればいいのよ」
「お弁当に持ってってもいい? にんにく入れてないからそこまで臭くならないと思うし」
「いいわよー」
いくつかの小皿にアレンジ用食材を乗せる。
皮のフチに水を塗って、ティースプーンで一口分すくいとって包んでいく。変な形になるのはご愛嬌だ。
「ほら見て栗さん。キムチチーズ!」
「私はしらす高菜よ!」
「いいねいいねー!」
いろんな具の組み合わせで、あっという間に90個を包んでいた。
「それじゃ焼いていくわよ」
フライパンを熱してに油を引き、熱々になったら餃子を円形に並べて焼くべし!
皮のお尻が焼けてきたら水を餃子の半分の高さに注いでフタをしめ、蒸し焼き。
フタの隙間からシュンシュンともれてくる蒸気がもう、美味しい匂いだ。
「あー、匂いだけで白米いけちゃうね」
「酒もすすむわね、ほら、日本酒! おじいちゃんから届いたの」
「わーー! 名酒!」
餃子を焼く間に日本酒も燗する。
餃子の焼ける香ばしい香りが部屋に充満していく。
「よし焼けた!」
仕上げにごま油を回しかけて、皿に盛り付ける。
「さあ食べましょ!」
「わーい、餃子パーティーだー! いっただきまーす!」
おかずは餃子だけ。でもこんなにたくさんあれば餃子だけでもお腹いっぱいになれる。
タレはポン酢、醤油、ラー油、お好みでつけていただく。
「はふはふ。んー! おいっしーい! もやしのシャキシャキが活きてるね。あたし、しらす入れたやつ好みかも!」
「私はキムチ派。キムチって焼くと美味しいわよねぇ」
いろんな味の餃子で酒もすすむ。
おこたでハンテンを着て酒を飲みつつ焼き立て餃子。幸せだ。庶民的幸せの境地だ。
食べながらコクミンショーの録りため消化も楽しむ。
次は関西お好み焼き特集だ。
彩夏は関西方面出身のようで、テレビを見て色めき立つ。
「あーー! 鶴橋! ここあたしの地元! この店のスジ玉美味しいんだよ」
「すじたま?」
「牛すじとこんにゃく。プリプリで美味しいんだよー」
「へぇー。私の地元だと豚玉とかイカ玉が主流だったなぁ」
「話してたらお好み焼き食べたくなってきたー。明日作ろ! ね!」
「いいわね、お好み焼き。ソースとマヨたっぷりで」
今日の夕食も食べ終わっていないのに、明日の夕食が決定した。