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2 お手軽卵焼きサンドイッチを作ろう!

 翌日。

 玲奈が朝食兼お弁当を作っていると、隣から情けない声が聞こえてきた。


(あー。今度は何を焦がしたんだろう)


 数分も待たずに押される我が部屋のチャイム。

 訪問客は、予想に違わず彩夏だった。


 昨日はゆるいルームウェアだったからわからなかったけれど、ファッション雑誌に載っているような流行りの長袖ニットにフレアスカートをはいている。

 オシャレにキメてるのに、持っている皿には飛び散ったたまご。なんとも残念である。


「栗さん助けて! たまごをチンしたら爆発したの!」

「黄身を崩さなかったのね……」

「なんでわかるの? 目玉焼き作るはずだったんだ。レンジ調理のほうがヘルシーって聞くし。それで、レンジに入れたらバーンって」


 玲奈は肩をすくめて笑う。


「たまごの黄身は風船みたいなものだからね。箸で穴を開けるか、崩すかしてからレンジにかけないと爆発するわよ」

「そんなぁ。友だちが簡単だよって言ってたから、あたしにもできると思ったのに。料理上手なシゴデキ女子への道は遠いのね……あたしの目玉焼き……朝食がぁ」


 打ちひしがれ、膝を抱えて座り込んでしまった。


「卵焼きのサンドイッチでよかったら食べる? 今作ってたところなの」


 ちょうど玲奈はサンドイッチ用の卵焼きを作り終えたところだった。挟みやすいように固焼き。皿に移して粗熱が取れるのを待つ。


「卵焼きでサンドイッチつくれるの!?」

「ふふふふふ。ゆでたまごとマヨのたまごサンドとはまた違って美味しいわよ。ちょっと手伝って。彩夏にもできる手順だから」

「やる!」



 玲奈は小さい深皿二つとスプーンを彩夏に渡す。

 小皿の一方には辛子とマヨネーズを混ぜ合わせた辛子マヨが入っている。

 もう一方には常温になったバター。


「ここに10枚切りの食パンがあるから、バターと辛子マヨを塗ってくれる? その間に私はフライパン洗っちゃうから」

「まかせて!」


 値引き品の食パンはほぼ毎日パンコーナーに出るし、サンドイッチにするのにちょうどいい。


「期限内に食べきれないなら、冷凍庫に入れちゃえばいいから食パンは買っておいて損はないのよ」


「あたしも食パン買っとく……ていうか、ついさっき調理しなくても食べられるものがないときついって実感したばかり」


 鍋は昨夜黒焦げになったし、レンジは卵が爆発して汚くなってるし…………悲惨な光景である。

 自分がひとり暮らしを始めたばかりの頃を思い出して、玲奈は笑う。

 洗い終えたフライパンを火にかけて水分を飛ばしたら、完了。


「はい、洗い物終わり。バターの方は終わった?」

「きれいに塗れたわ!」

「じゃあ卵焼きを挟むわよ〜」

「わーい!」


 バターが塗られた上に卵焼きを乗せて、さらに辛子マヨが塗られた面で挟む。ラップでくるんで、重し代わりに、手近に置いていたロトくじ攻略本を乗せる。


「こうやって、馴染むまでちょっと待つの」

「わー、ほんとに簡単だ! これならあたしにもできそう。明日の朝ごはんに作ってみようかな」

「卵焼きを作るとき、卵液に味付けるのを忘れないようにね。顆粒のお出汁と水を入れて、砂糖はひとつまみがちょうどいいかな。あとは好みにあわせて自分で微調整して」

「うんうん!」


 テレビをつけるとちょうど星占いの時間だった。


「やった。おひつじ座は今日1位!

いいことありそう!」

「現金ねぇ。ほら、できたわよ」


 ラップを取れば、しっとり美味しいたまご焼きサンド。


「ありがとう栗さん! いっただきまーす! はむはむはむはむ。ん〜! 甘くて柔らかくておいしぃ! バターがいい香りだし、辛子マヨが効いてて食欲そそるわ!」

「はい、アロエヨーグルトとオレンジジュースもあるわよ」

「ありがと!」


 4個組みカップヨーグルト、朝のサイドメニューにとっても便利である。

 昨夜彩夏が忘れていったキャラクタープラコップに注ぐ。

 かなり気に入っているのか、使い込まれてネズミの絵が薄れてきている。


「栗さんは何座?」

「かに座。占い、あんま気にしたことないけど」

「あたしは毎日見ちゃう。ラッキーカラーも確認するし。シュシュやバッグにぶら下げる小物でラッキーカラーを取り入れるの」

「好きだねぇ」


 玲奈は自分のぶんのサンドイッチを食べる。天気予報を確認しつつ、多めに作ったサンドイッチをタッパーにつめてお弁当完成。


「はっ、その手があったか!」


 彩夏はお昼のことまで頭が回っていなかった。


「今日から行く職場って社食やまかないがないからさ、お弁当を持ってくるか近場のレストランでとるのが基本らしいんだよね」

「毎日外食は高くつきそうね」

「うん、そうなの。たまには銀座で、雑誌に載ってたみたいなオシャレランチやパフェ食べたいけど、引っ越したばかりでお金ないもの。料理してもこんなだし」


 原型を失った目玉焼きもどきを指す。

 自分のしでかしたことだからと、醤油をかけて、スプーンで食べているけど、レンジ調理だからところどころが生。


「まずは簡単な弁当を作れるようにガンバレ。ハムとスライスチーズを挟むだけのサンドイッチなら楽だぞ」

「がんばる!」


 

 こうして、ドタバタ騒がしい朝が過ぎていった。

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― 新着の感想 ―
私も小学生の時に、電子レンジで目玉焼きを作ろうとして見事に失敗した事がありますね。 ラップをしていたのでそこまでの被害にはならなかったのですが、レンジの中が卵臭くなってしまいました。 今は100均でも…
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