10 大根のそぼろあんかけを作ろう!
正月明け、玲奈は有給消化で新潟のひいばあちゃん、ミズに会いに来ていた。雪かき要員として親戚連中が6人ほど集まっている。
祖父と伯父が雪下ろしをして女性陣で屋根から降ろされた雪を川に捨てに行くという連携プレイだ。
「ありーがとうねぇ玲奈。お年玉用意せな」
「ミズばあちゃん私35歳なんだけど。この年でお年玉なんてもらえんよ」
「おれからみりゃ、玲奈はトンボ追っかけてた子どもんときとなんも変わっとらんよぉ」
「何歳のときだと思ってんの」
「光一だって魔王ごっこが大好きな中坊んときとおんなじで……」
防寒着を脱いで2階から降りてきた伯父の光一が悲鳴をあげた。
「やめてくればあちゃん! 玲奈の前で黒歴史掘り起こすなよおおおぉ!」
面白いからあとで従兄に教えてあげよう。
「お年玉いらねんなら、かわりにこれやるすけ、たーんと食えな」
雪を掘り起こして、埋めてあった大根の山をくれた。
関東だとできないが、ミズは昔から冬の間野菜を雪に埋めている。
「わー、うまそー。さすがばあちゃんの育てた大根、葉っぱも含めて太くて立派だわー。ありがたくいただくわ」
財布とスマホだけ持って帰省して大荷物で帰宅することになった。
さすがに六本もくれるとは思わなんだ。
大量の大根を抱える玲奈は新幹線の中で大いに目立った。
帰宅してすぐ隣の部屋のチャイムを鳴らす。
「彩夏ー、いるー?」
「この声は! 栗さーーーん!」ごはーーーーん!」
彩夏が飛び出てきた。
「私はご飯じゃないっての。雪かきの報酬で大根もらったからあげる」
「うわ、お店に出てるのよりでっか!!!!」
一本でも抱えるのが大変な極太特大の大根を見て彩夏が驚く。
「何作ればいいかなぁ……。あたしのレパートリーの中に大根は大根おろししかいないんだけど」
「大根そぼろあんかけするとうまいわよー」
「なにそれ、教えて!」
「最低限材料があれば作れるけど、ひき肉ある?」
「餃子作ろうと思って買った豚ひき肉があるよ」
「いいわね。それ使いましょ。キッチン借りていい?」
「おっけー!」
勝手知ったる彩夏のキッチン。
使うぶん切り落として、包丁でかつらむきする。
「わー! 皮が一枚に繋がってる! すごー!」
「彩夏は慣れるまではピーラー使っときなさい。今の彩夏の腕前だと指落とすわよ」
「うぐう」
彩夏の包丁は、まだ子供向けプラスチック包丁だ。
厚さ二センチほどのイチョウ切りにして、鍋に水を入れて煮込む。
「大根に火が通るまでに餡を作りましょう。醤油とショウガと、片栗粉はあるかしら」
「醤油とチューブショウガあるけど、片栗粉がないや」
「片栗粉だけ私の部屋から取ってくるわ」
隣の部屋に帰還して片栗粉だけ持ってすぐ舞い戻る。
「それじゃ炒めるわよー」
「うっす!」
コショウとショウガで臭み消しをしながら、フライパンでひき肉を炒めていく。一カップ水と醤油、少々の酒を入れて煮立たせる。
最後に水溶き片栗粉を加えて火を止めて、手早くヘラで全体を混ぜる。
ショウガと醤油の香りが部屋にふわりと広がる。
「いい香りぃ!」
「ふっふっふ。このそぼろあんを大根にかけるのよ!」
「やばいね超美味しいね!」
大根もいい感じに火が通った。
器に盛り付けてあんかけとろり。
「白米が進むやつ! 伊藤のご飯カモン!」
「レンジ飯の定番だー」
彩夏はレンジで温めたご飯の蓋を剥がして、そこに直接大根とあんかけをのせた。
「私が言うのはあれだけど、オシャレ女子のすることじゃねぇ」
「でもほら、洗い物減るよ」
「うん。それはそう」
彩夏の部屋にもこたつが導入されているため、こたつの上の雑誌をどけて実食タイムに突入だ。
「いっただきまーす! あんかけうまー! あつあつー!」
彩夏はパックにスプーンを突っ込んでほおばる。リスのように頬を大きくして満足そうだ。
「それじゃあ私もいただきます。うん。いいトロトロかげん」
玲奈も大根とあんをまとめてバクリ。
醤油とショウガはやはり最強タッグだ。食欲そそるこの香り。豚の旨味とショウガ醤油が溶けあってとにかくうまい。大根が淡白だからこそ濃い味のあんが合う。
鍋いっぱいに作ったそぼろあんかけは一食でなくなった。




