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私のファム・ファタール

「王子起きて下さい。」


私はその声に意識が起こされる。


「また机で寝られて。いつもそんな事してますと体を壊してしまいますよ。」


今日も机で書物を捲りながら一夜を越してしまった。

時間は有限だと思うと一睡も無駄に出来ない。


メイドが持って来たお湯の張った桶で顔を洗う。


ふう。目が覚める。

この時代に戻ってからあれから必死に自分の知識を高める事をして気づけば眠っていた。


こうしてはいられない。

次は体を鍛えないと。私は駆け足で城の修練場に向かった。

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朝の修練場には誰もおらず体を鍛えるにはもってこいの場だ。


私はまずは机で寝て凝り固まった体をほぐすようにストレッチをしていく。

ある程度体が温まったと感じたら次はこの丸く大きな修練場の外側を軽くランニングしていく。

ランニングとはいえただダラダラ走っているわけではない時々全力疾走して息が乱れるほど走るこれを繰り返す。

あの時の戦争の時は息つく暇もないほど敵が魔法を使って来た。

余裕がなくなるほど繰り返し走りもうダメだと思うほど自分を追い込む。


「ぜぇーはぁー。」


本当に限界まで来た所で一旦休憩を取る。

まだまだこれからだが一旦息を整える。


「これはこれは殿下ではないですか。」


そう声をかけられた。

その声の方を向くとそこにはこの国の騎士団長を務めるベルトラン・ア・ネクラビィフ侯爵がそこにいた。


「おはようございます。ネクラビィフ卿。今日はお早いですね。」


「ははは!何!最近殿下が人が変わったように頑張っていると聞いて私も少しばかりの手伝いをと。」


「そうか。なら剣での稽古をお願いします。」


「はい。喜んで。」


私達は木剣を構える。


「さぁ、殿下。胸に飛び込んでくるつもりで来なされ。」


「うおおおお!」


そうして私達は打ち合いをしていく。

木剣が打ち合う音が修練場に響き渡る。


「殿下。最近何か悩み事でも?」


木剣を打ち合いながらそうネクラビィフ卿が尋ねてくる。


「なぜそう思う?」


「最近の殿下はまるで何かに焦っていると聞く。」


「何、ただ最近は時間の進みが速く流れてやりこぼしが多いと感じた所だ。」


私は思いっきり木剣で切り掛かる。

それをネクラビィフ卿は難なく木剣で受け止める。


「ふむ?そうですか。確かにまだ殿下はお若い。これから王になるにはまだまだ学ばなければならない事も多々おありである。だが、」


ネクラビィフ卿の一撃に体勢を崩される。


「急ぎすぎて足元を掬われるようでまだまだですぞ。」


体勢を崩され、一撃を受ける。

その一撃を食いしばりこちらも一撃入れようとネクラビィフ卿に打ち込むが容易にかわされ、首の手前で木剣を止められる。


「剣にはその者の心情、考え、様々な者が映ります。今の殿下の剣には焦りが滲み出ています。あまり焦っていますと取りこぼしもございます。一度立ち止まり、休まれる事をオススメします。」


「そうか。忠告ありがとうございます。」


こちらの負けだ。木剣を下ろす。


「それにしても我が愚息と違って殿下はメキメキと成長されております。」


「ははは。フレデリックは元気か?」


フレデリック・ア・ネクラビィフはネクラビィフ卿の息子で私の護衛に着いていた剣が自慢の男だ。


「元気ですよ。この前も稽古を付けたのですがまだまだ私の足元に及ばず徹底的に扱いたのですが私に敵わないのが悔しかったのか何処かに走り出したんですよ。」


「ははは。それはそれは。」


そういえば何か悔しい事があったり嬉しい事あったりその度に許す限り走りに行ってたな。

あいつも変わりなしのようだ。


そう考えてると朝の仕事始めの鐘が鳴る。


「そうだ。行かねばならぬ所がある。この辺で今日は終わりにさせてもらうよ。」


「ええ。それがよろしいですね。」


こうしてネクラビィフ卿とは別れた。

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私は馬車に揺られながら手に持った色鮮やかな薔薇の優雅な香りを楽しむ。


愛しのベアト。あれから元気になったかな。

あれから日程を調整し、ベアトの体調を考慮しようやく会えるようになった。

あぁなんと待ち遠しい。初恋のように胸が張り裂けるほど楽しみだ。


御者にもうそろそろ到着すると言われる。

あぁ、待ち遠しい。

馬車は王都の辺境伯邸の門を潜り、公爵邸に並ぶ庭であるアプローチを楽しみながら玄関口に向かっていく。

馬車はエントランス前で止まり、馬車のドアが開けられ降りる。

そこにはメイドが左右に並んでおり、中央にこの屋敷の最高位の執事が礼をしていた。


「お待ちしておりました。ささこちらへどうぞ。」


「あぁ、よろしくお願いします。」


私は執事の案内され、応接間にいく。


しばらく応接間にてメイドの出す茶を楽しんでいるとノックの音が聞こえる。

扉の方に向くとそこには春の気候に合わせた鮮やかな萌木色のドレスを身に包んだ金色の金糸のような艶やかな長い髪をし、その淡いサファイアのような青い両眼をこちらに向けたベアトがそこにいた。


「ベアト!元気かい!」


僕は自分の発言に失敗してしまったと感じてしまった。

なんかこう久しぶりに会ったのならそれはもうカッコよくて素敵な言葉があっただろう。

そう悶々としてると目の前のソファに座り、出された茶には手を付けずカップを見つめる。

どうしたんだろう。まだ具合は良くないのだろうか?


そう思っていると視線をあげ、私を見つめるとベアトが頭を下げた。


「申し訳ありません。わ、(わたくし)に私の事を教えていただけないでしょうか?」

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