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3/10

私は貴方を愛しているが、貴方は私を知らない

...光臨歴157年


「殿下。殿下!どうされましたか?」


ボーとした感じから目が覚めた。


辺りを見回すとそこは家具等が違うが執務室だった。


確か昔はこんな感じの部屋だった気がする。


「殿下!聞いておりますか!」


声の方を見上げるとそこに僕の昔の教師が立っていた。


「あぁ、すまない。疲れからか眠気が来てボーとしてたよ。」


「全く。分かりました。あと少しで昼食の時間ですので今日はここまでにいたしましょう。」


そう言って礼をし、部屋を去った。


僕は彼を椅子に座ったまま見送った。


金色の前髪をいじりながらボーと考える。


昔の教師。


昔の執務室。


どうやら本当に過去に戻ってきたらしい。


そういえば今日はいつなのだろうか?


いきなり誰かに聞くのも不審に思われるだろう。


私室に日記があるから確認しよう。


そう思って私室に向かった。


-----------------------

-----------------------

「あった。」


私室の机から日記を取り出し、最新のページを開く。


日記には昨日の事が書かれていた。


そうか今日はこの日だったのか。


こうしちゃおけない。


「馬を用意しろ!」


叫びながら馬小屋に走る。


すれ違う従者のみなが驚いたような顔で廊下の端によって行く。


「殿下!いきなりどうなさったのですか!」


急がねばならぬ時に家令に捕まってしまった。


「邪魔をしないでくれないか?私は今すぐにでも行かなければいけないんだ!」


「急にどうされたのですか!午後も予定はございますぞ?」


「予定?そんなの後回しだ!」


急がねば!何せ!


「愛しの!ベアトが!熱を出したんだぞ!」


「…..そうでございますが」


「婚約者としてお見舞いに行かなくては!」


「殿下心配になるのもわかりますが何事にも順番というものがありまして、いきなり先方に訪れるのも不躾というもの。

こちらでも伝令を送ってから」


「えーい!話が長い!行くと決めたものは行く!邪魔するのならば無理やり押し通させてもらう!」

-----------

「これから色々ひと悶着ありますが、退屈ですので飛ばしますね」

-----------


馬を彼女の家の門番に任せて彼女の部屋に向かう。


今日は病に伏せていた彼女が目覚める日。


そして−


「ベアト!大丈夫か!」


僕は大勢の者が啜り泣く声が聞こえる彼女の部屋の扉を力まかせに開ける。


部屋の中はこの家の主にして東の国境の守備を預かる辺境伯で

あり、彼女の父親であるパトリス・スー・キヴァルシ氏を始め、彼女の兄を除く家の者のほとんどがベットを囲んでいた。


キヴァルシ家の家令が私を見るとこちらに来ようとするが、それを静止してパトリス氏がこちらに来た。


「お久しぶりです。殿下。」


「久しぶりです。キヴァルシ卿。」


彼が挨拶をしてきたのでこちらも返す。


「大変申し訳ありませんが、ベアトリーチェはその....。病み上がりですのでまた日を改めていただけないでしょうか。」


「まさかそんなに体調が良くないのか!」


「いえ、そうではないのですが。」


「私はベアトの事が心配なのだ。一眼でいい。ベアトに合わせてくれ。」


真摯に頼んでみた。


「分かりました。ではこちらに。」


私はベットに行く。


「やぁ、ベアト。体調は大丈夫かい。」


私は彼女を気遣って問いかける。

だが彼女の身に何が起きたのか私は知っている。


ベットに白い汚れなき肌に金糸のような艶やかな髪をした少女であるベアトが寝巻き姿でいた。


「ベアト?」


知っているが言われる事に辛さを感じるが歯を食いしばって耐えよう。


彼女がゆっくりと私を。

普段はサファイアの輝きを宿していたが今は虚な虚空を写すその双眸をこちらに向け、その可憐な唇を動かして。


「あなたは誰?」

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