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再始動勇者17

 白の会の結成は、母の死から僅か1か月後で、表向きは、世界に奉仕する、いや――世界を白くすることを目的とした集団であり、その理念の中には、もちろん、勇者否定論も堂々と掲げてある。

 白の会の結成に関わった人物の中にダコタの名前もあり、彼が最初期からいたことは判明していて……その時彼は18で、父親の元で技術を学んでいる最中だった。

 あの時、僕は彼と接触したものの、まだ声は聴けていない。が――おそらくダコタは僕に暗示を掛けた人物じゃないだろうと思う。

 正直、声を聴かなくても、ある程度印象でわかった――見た瞬間、こいつじゃないと判明した。どうやら僕はそのことについて、その程度の判別はつくらしかった。

 ダコタは白の会結成以前から勇者否定論を唱えていて――白の会結成時に何者かから声が掛かったのだと予測される。

 残念ながら白の会の前身となる組織については何も記録が残っていなかった。ただ、状況から考え合わせてみて、まず、僕に暗示を掛けた人間が白の会の前身となる組織に居て――それから、あの事件を起こし、それを機に白の会を結成したと考えるのが自然だと思う。

 その何者かは、勇者を黒く塗り潰し、更にその上から、その黒を際だたせるための組織を創った――。

 ダコタを含めそこに集められた初期メンバーは皆、勇者の存在に疑問を抱いていて、やっとそれを知らしめることが出来る機会を与えられた。

 白の会は順調に会員を増やし、事件から何年経っても勇者を否定する空気は変わらないままだった。むしろそれは段々濃くなっていき、勇者という存在は、彼らの望み通り、虫けら以下同然まで成り下がっていた。

 調査の結果――白の会には戦闘能力は無く、彼らにシアーを拘束する力は無いだろうということが判明した。正直なところ、それを聞いて色々な意味で安心した。

 もちろん行方がわからないということには変わりないが、彼らにこちらから武力行使をする理由もなくなったからだ。

 もちろん妙な噂を流されるのは困るけど――それに関しては、もう耐えられる。僕は、アルトに、白の会は放置でいいと伝えた。

 問題は、彼の父、ジョシュア・シアセンだった。

 ジョシュアはもう何年も自宅へは帰っておらず、姿を見たものは誰も居ないという話で……調査は難航した。

 ただ……彼も、白の会の結成に、関わっていた。彼自身が、勇者否定論者だったのだ。

 つまり――その時点で、ジョシュア・シアセンは、僕に暗示をかけた何者かと繋がっていた。

 彼が黒幕に近い人物ということは明らかで――彼は、城の深部で研究を続けている。

 これが何をあらわしているか、いわずとも解るだろうと思う。

 さて……ここからは、ジョシュア・シアセンに迫ってみたいと思う。

 ……ジョシュア・シアセン。年齢、55歳。

 僕の父が生きていれば、今、42だから……前勇者が生まれ、それから世界を救い、そして亡くなるまでの間を、しっかりと目撃した人物といえる。

 ジョシュア・シアセンの経歴は凄まじく……勇者の活躍の陰に隠れていたが、今ある機械魔術の学問は、殆どこの人が一から創り上げて来たといっても過言ではないらしい。

 その中でも、彼がこだわり続けていたのは――複製技術だった。

 彼は、近しい人物たちに、いつか人間を創ると仄めかしていたが……もちろん、そんなことは流石に誰も信じていなかった。

 ただ……彼が人間の死体を集めているという噂は、未だに残っていた。

 それに関しても、本当に信じている人間はいなかったし、彼が天才であることへの、一種のジェラシーから生まれた逸話の一つとして片付けられてしまっていた。

 彼が勇者を否定するに至る情報を探すのは、それよりも更に難航した。

 彼が勇者に対して言及した記録が、ほぼ存在しなかったからだ。

 それに、その時期、勇者を否定する言葉を何かいったところで――そんなものは、世界を救った勇者への賞賛で一瞬のうちにかき消された。

 そもそも、彼が、勇者というものに興味があったのかということさえ、疑問が残る。

 ただ、こんな言葉だけが、見つかった。

 ――勇者が世界を救ったお陰で、人間の死体が減ってしまった。

 ――どこか別のルートから、死体を探し出さなければならない――と……。

 もちろんそれだけで、勇者否定論者になったとは限らない。

 もしかしたら、それを聞きつけた何者かが、彼に死体を提供し――勇者否定論者に、彼を変えてしまったのかもしれない。

 このエピソードからわかるのは、彼が複製人間に関わっているということと――。

 人間の命を――その精神を――何とも思っていないということだった。

 そもそも、父が命を懸けて世界を救わなければ、その研究も、いつかは継続することができなくなる――ということさえ、意識の外だったんだろうな……。

 とにかく、その辺りで、黒幕が彼に接触し、死体を提供し始めたと考えるのが妥当だろうということで一致して――その線で再調査が始まったのが、今ということになる。

「ジョシュア・シアセンが何者かから死体の提供を受けていたという証拠は、まだ見つかってないんだね?」

「まだだ。どこかに死体を保管していたのは確かだろうから、そこが見つかればな……」

「まあ、それはあるとしようよ。実際は、もう城の中に移動しているとして……。以前使われていた場所は、もぬけの空だろうね。あるとしたら、屋敷の地下だけど……」

「そんなところだろう」

「結局、死体を受け渡していた流れを掴んだところで、尻尾はつかめない気はする」

「それは私も思う。だが、調べておいて損は無い」

「結局は全て城の内部にある……」

「状況証拠は出そろい始めてきてるしな……そろそろ行くか?」

「運命に行けといわれている気がする」

「私も一緒に行こう」

「大丈夫なのか?」

「足手まといにはならないさ。しかし、お前こそ大丈夫なんだろうな……受け身の勇者はどこへ行った?」

「今も受け身だよ。アルトに行くべきだといわれて、初めてそう思った」

「お前は私に私と結婚しろといわれたらするのか?」

「するかもしれない」

「じゃあ私がお前と結婚したくなったらそういうよ」

「よろしく」

 僕達は――城攻略の準備を始めた――。

 ついに始まるね――戦いが――。

 だけど僕の心は落ち着き払っていた。

 何だろう、この感覚は。

 恐怖も何もない。

 まるで――やっと、自分の領域フィールドに戻ってきたような――そんな感覚だった。

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