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再始動勇者6

「シスター、メイ。肩を揉んであげよう」

「へ?」

「へ? じゃない。おいで」

 おずおずとやってきて……ソファに腰を下ろすシスター、メイ。その背後で待ち構えている僕……。

「どういう……状況なんでしょう。これは」

「見たままだよ」僕は後ろから耳元に語り掛ける。「おかしいかな」

「おかしい……と思います。なんか変です」

「力を抜いて……」ゆっくりと……肩を触る。「大丈夫だから」

「あ……ん……」

 少しずつ……揉みほぐしてゆく。

 とても繊細に、決して急がず、かといって、じらし過ぎず……。

「どうかな。痛くない?」

「凄く気持ちいいです」

「よかった……」

「でも……何なんですか? これ」

「後ろを見ないで。シスターはただ、座っていればいいから」

「はあ……」

 その後も、念入りに揉みほぐしていく。肩から、少しずつ、首のラインに向かって――。

「あっ――そこは――」

「痛い?」

「くすぐったいです」

「じゃあ、いいね――」

「――ダメなんですけど――」

 構わず、揉んでいく。

 途中、シスターは、くすぐったいのか、変な声を出し始めるが、それでも構わない。

 攻めて攻めて、攻める――シスターの弱い所を探り出すべくして、探り出すように――。

「ヒロカズさん、ちょっと――」

 もう止まらない。

 時にリズミカルに、そして、時に強く――。

「――おわりっと」

「終わったんですね?」

「まだ足りない?」

「いえ……何か凄かったです。お腹いっぱいな感じです」

「そう。なら、いい……」

「でも突然、どうしたんですか?」

「急に揉みたくなって」

「……」

「迷惑だったかな」

「いえ、そんなことはないですけど……」

「ないですけど?」

「何かこう、腑に落ちないというか……いえ、なんでもないです」

 シスターは少し乱れてしまった服装を正しながらそういった。

 僕はシスターの背後から、横へ移動して、すぐ隣に座った。

「今日は……何か、距離が近い気がします」とシスター。「どうかしたんですか?」

「よくわからないんだ」と僕はいって、更にシスターに接近する。「勇者としての力が発動したときに、自分自身の制御を失うみたいにして、今の僕は何らかの制御を失っているのかもしれない」

「本能……ですか?」

「そうかもしれない」

「なら……仕方ないですね。どうぞ」とシスターはいう。

「?」

「揉むなり触るなり、何なりと」

「いいの? 怒らない?」

「怒りません」

「ああ、ありがとう。シスター」といって、僕は腰のあたりに抱き付き、顔を埋める。

 そうすると、とても安らかな気持ちに襲われる。

「凄く……誤解されそうな状況ですね」とシスターはいう。

 僕はすぐに眠くなってくる。

「このまま寝てしまうかもしれない……」

「いいですよ。これもある種の……私に与えられた、務めですから」

 どこまで優しいんだ、と思いつつ……その言葉に甘える。

 シスターの手が……ゆっくりと触れて来る。

 少し、くすぐったい感じに……。

「お返しです」

 でも、眠気の方が勝って……。

 僕は簡単に眠ってしまう。

 目を醒ますと、僕はすっかり素に戻っていた。

「ごめんごめん、シスター。つい、甘え過ぎた」

 さっと起き上がり、今までのことを反射的に反省する。

 何をやってんだよ、本当に。

「いいんです。私も義務を果たせた感じがあるんです。少しでも、ヒロカズさんのストレスを――勇者としての重責を緩和させる必要があるんです。それって、とても重要なことだと思いません?」

「……思う」

 今日の僕ははっきりいって変だったけど、それを受け入れ、なおかつ僕の身を案じてくれるという、どこまでも完全無欠なシスター、メイ……。

「最初、やっちゃった、って思ったけど、でも……とても重要な眠りだった気がするよ。生きていくために必要な……そんな大事な眠り……」

「それがいいわけか」という他の声が聴こえて来る。

「――アルト、居たのか」

「居て悪いのか」

 というか――久しぶりに見かけた気がするのは、気のせいだろうか。

「よーく眠っていたな、シスターの膝の上で。さぞ、寝心地がよかったのだろう」

 何か、つまらないものを見るような目で見られる。

 僕は、寝起きの心地よさがまだ残っていて、何も反応できなかった。

 本当にいい眠りだった。

「寝ぼけてるのが腹立つ」

「まあまあ」

「シスターもシスターだぞ? ヒロカズを甘やかすのはまだ早い。このままではダメ勇者まっしぐらなんだからな」

 そうだろうか。

「そんなに頻繁にってわけじゃありませんし、いいんじゃないでしょうか」

 飴と鞭との戦いが、今、始まろうとしていた。

 僕の目の前で……。

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