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微速前進勇者6

 うちに住むようになったアキが、仲介者の役割になり、僕とアルトが間接的に、少しずつ会話する。

「アキはあの武器屋で働くことにしたのか。あそこはいいぞ。店員も親切だしな」

「あそこの剣が盗まれてさ、大変だったんだ。アルトが取り返しにいくってきかなくてさ」と僕。

 狂った歯車は、元に戻さなければならない。

「――そうだったんですか。剣は、戻ってきたんですか?」

「アルトが見つけてたんだけど……剣を盗んだ奴に襲われてて、僕が、取り返して……」

「ヒロカズさん、って、必ず助けてくれるんですよね。私も、ある意味二回、救われた身ですし、わかります。ああいう時のヒロカズさんって、本当に凄い、勇者なんです……」

「……」

「まあでも、普段、あんまり行動力がないけどね。生活とかもずっとシスターに頼っていたし、僕の人生を総括すると、やっぱりそういう意味ではほぼ、情けなかったと思う」

「私も、ヒロカズをどこかで……見下していたな」とアルト。「お前は否定するかもしれないけど、やっぱり、あったんだ」

「……」

「すまなかった」

「あの日からずっとおかしかったけど、そんなこと考えてたのか?」

「……」

 いつの間にか、完全にアルトと僕の会話になっていて……僕はこうなるタイミングを常に窺っていた。

「……変に遠慮するな、っていっても今更無理そうだから……どうすりゃいいんだろうな」

 アルトのずけずけとした態度で成り立っていたものが、今度はアルトの勝手な恐怖症のようなもので、成立しなくなってしまっている。

 こうなったら、また……新しい関係を築くしかない気はする。

 この……新生アルトリアと。

「まあ、もう……お前は、遠慮しててもいい。ただ、避けるな。僕を」

「わかった……」

 まるで、死線を越えてきたような顔をしているアルトだったが……おそらく、もう、避けられることはないだろう。

「……話は付きましたか?」

「ごめん。変な話をして……」

「いえ。大切な話だったように思います。聴けてよかったです」

 色々と、思い掛け無いきっかけに助けられることがあって、今回の件もそれに当たる。

 その度に、荒地だった自分の心の中のフィールドが、一転し……美しい景色になっていくのを感じる。

 僕達を引合せるものが何なのかというと……運命という以外にない。

 運命の仕業で、辛いこともあったけど……今は少しずつ、それを許せるように……いつかは、乗り越えられるものだと信じる。

 最初から全部偽りだと思って諦めていたら、アキも今頃、ここで笑ってはいない。

「急で悪いけど、出掛けて来る……」

 アルトに構うのもいいが……自分の使命に忠実過ぎる人間っていうのか……いつまでも帰ってこない彼女のことを捜しに行かなければならない。

 僕の頸動脈に刃物を押し当てて、それから……肩を負傷し、僕に愉しかったといった。

 どこか逸する雰囲気を持っていて、人に心配されることに慣れていない……そんな女性だった。

 声を限りに、彼女の名を呼んで回った。奇異の目で見られることには慣れていた。

 不思議と手遅れだという風に、苛まれることはなかった。

「人の名を――大声で叫んでくれるな」

 そこは静寂が支配する通りで、人の気配が全くない。

 物音はどこかへ吸収されて消える。

 こんな場所が、街の中にあったんだな……。

「君を放置してしまったことへの償いは必要か?」

「いらないよ。報告がないのは進展がないからさ」

「うちに来ればいい。騒がしいが……皆仲良くやってる」

「私は、水底に沈んだような……静かな場所が好きなんだ。合わないよ、今のヒロカズと私は」

「君の殺した城の門番は――」

「知ってる。複製人間だったらしいね」

「誰に聞いた?」

「シスターだよ。たまに教会には行ってるんだ。静かで、善い場所だよ。あそこは」

「シアー」

 もう一度視線を戻した時には、彼女の姿は消えていた。

 まあ……いいか……生きているのなら。

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